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『名前をつけてやる』 スピッツ

2010年02月07日 16:07

有名な歪みネコジャケじゃあ!ラブリー。
名前をつけてやる名前をつけてやる
(2002/10/16)
スピッツ

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1. ウサギのバイク
冒頭から延々と続くアコギの繊細で幻惑的なアルペジオが、まるで落ち葉の溜まった森の奥深くへ聴き手を誘うかのように響く。非常に柔らかくて弱々しくて綺麗な世界。他の演奏もその雰囲気を壊さないように鳴る。シンバルやパーカッション、またはタムなどを演劇みたいに鳴らしたりするドラムは可愛らしくもある。少し遠目に鳴るギターソロがちょっと壮大さも感じさせたりしてとても良い。一回目の繰り返しを全部スキャットで歌う草野からして、幻惑する気満々。女性コーラスの重なり方も良い。「ウサギのバイクで逃げ出そう」という歌詞の出だしからもう、初期スピッツ全開。「氷の丘」という初期らしい単語も飛び出す。「脈拍のおかしなリズム」に、この可愛らしさの、しかし同時に魂も抜かれてしまいそうな雰囲気が出ている。草野氏も自讃する、スピッツの良いところがとても可憐に表現された名曲!

2. 日曜日
力強いギターストロークで進行するどっしりロック気味な曲。でも、戦車的なサウンドに乗る草野のポップでダレ気味のメロディのバランスがスピッツ的で「戦車は二人を乗せて」というフレーズの重厚さと柔らかさのバランスを曲の雰囲気で成している。一回だけ登場するブリッジ部のちょっと演劇がかった展開もロマンチックさを感じさせる、けどその後の笑い声は何?「昨日の夢で手に入れた魔法で 蜂になろうよ このまま淡い記憶の花を探しながら」と、普通に聴いてると自然な言葉の数々が、実はこのようにどうしようもなく繋がって妄想していて笑える。

3. 名前をつけてやる
ちょっとハネた、けどかなりまったりな曲のリズムが、確かにジャケットのダレた猫を思わせる。トレモロやワウなどのエフェクトのギターのカッティングがサビでシューゲイズ風になるところに組み合わせの妙を感じる。ギターソロをシューゲにしないのも良い。ハスキーな調子のAメロととぼけて舞い上がるサビの対比も上手い。サビも最後だらしなくメロディが落っこちて、トホホ可愛い。そんな可愛らしい曲調の中に「むき出しの出っ張り」だの「ふくらんだシャツのボタンを ひきちぎるスキなど探しながら」とのうのうとエッチなフレーズを突っ込むセンス、しかもそれをとても可愛らしくやってしまうところが流石。そんなエロの癖に、終盤の急にスカスカに各楽器が響く中を草野のコーラスが響くところはやはり幻想的。このアルバムは毒とエロが可愛らしい幻想性に包まれているのがとても良い。

4. 鈴虫を飼う
三輪作曲の穏やかな曲。草野的なトロンとした感じは希薄で、その分シンプルでスタンダードなメロディがアルバム内でいい意味で「普通」という個性を有している。アクセント的存在。くっきりのどかなサウンド(特にハネたベース)の中で、しかしギターだけはリバーブ気味に鳴らされシューゲ的・宇宙的なスケール感を有していて、両者が合わさると夜空な感じになる。サビのマンドリンが特徴的。所々の妙に現実的に毒々しいフレーズがサビの孤独感・夜空の下の寂しさに繋がっていく。

5. ミーコとギター
ワウなギターがマッドチェスターなどを感じさせる、ポップだが元気一杯な曲。ベースがもう、動きが多くて可愛くて堪らない。SE的でSF的なギターとこの意地悪でポップな歌うベースの組み合わせがとても良い。ミドルエイトでボーカルに加工が入るところもノリがあって良い。そこから入るギターソロの開け方も宇宙的だがまたすぐに歌に着陸する。シンプルに歌を構築するソングライティングが好き。しかしそんな快活さの裏で歌詞は混迷を極めている。単語の突飛な並びが衝撃的な『テレビ』に対して、こちらはフレーズ自体はシンプルながら、その意味合い、「ミーコ」なる女の子の状況が酷くこんがらがってしまった(「そしてミーコの彼はミーコの彼じゃない」!文学的状況想像が膨らむ)、が、それでも切なくて可愛いミーコの姿が浮かんでくるから、流石草野氏と思わずにはいられない。ああくそう、可愛いなあミーコ。三分無い曲だが、とてもおいしい。

6. プール
最初に響く澄んだギターの音だけで皆殺しな、後々まで一貫して持つ彼等の透明感が端的に現れた名曲。シューゲイザーサウンドの本当に澄んだ部分を取り出して夏の気怠さに転化してしまう手法はもう、見事としか言えない。寂しげなテンポで響くギターの音。ギターソロもホント、キラキラして切ない。何気に良く動くベースが可愛い。AメロとBメロだけのシンプルなソングライティングもそれぞれのメロディのささやかな美しさを活かしているし、何よりも二回目のBメロ後の展開を特別なものにしている。この、自分だけ時が止まって周りがゆっくり流れていくような感覚の展開、初期スピッツ流シューゲイザーサウンドの最も強力な武器だと思う。歌詞だって凄い。気怠げな爽やかさ、キラキラ眩しい表現、慎ましやかでかえってエロい表現、そして夏蜘蛛という単語。蜘蛛の足八本→重なり合う二人の手足、だなんて、凄過ぎる……。シンプルにして完璧という、その理想型のひとつ。

7. 胸に咲いた黄色い花
アルバム中でも最も分かり易くポップな楽曲か。イントロの可愛くてポップでちょっと捻くれたギターフレーズ(三輪曰くXTCのイメージらしい。なんか分かる。特に最後のサビで増えるギターはネタバラし的)が印象的。Aメロのリズムはスタンダードポップス的、バラライカの音まで飛び出す。サビのメロディもはっきりと朗らかな感じで安心出来る。ミドルエイトで一回溜めてからメインリフに戻る展開も効果的で、草野が何気に良質なミドルエイトメーカーであることが分かる。逆再生ギターやタム回しなど、宇宙的スケール感の維持も忘れない演奏も良い。「このまま僕のそばにいてずっと もう消えないでね」と可愛いメロディで懇願するが、「明日になればこの幻も終わる」。可愛いくせに徹底的に冷めた部分がチラチラ見える辺りやはり初期スピッツ、気が抜けない。

8. 待ち合わせ
不穏なフィードバックギターから派手なギターリフが響き、パンクなリズムで疾走するロック曲。ブリッジでどっしりと展開するのはお約束とはいえ、それをスピッツで聴くと何故かとても新鮮で素敵だからズルい。歌のメロディに前作的なフニャフニャした部分が無い分こちらの方が分かり易い。ギターのテンションの高さがアルバムのアクセントに。しかし歌詞はもう「何言ってんのこの人?大丈夫?」感全開で笑えるもとい切ない。「だけど君は来ない待ち合わせの星へ 約束した場所へ」で「百万年前に約束した場所」だそうだ。しかも焦燥感に満ちた「待ちわびた僕の涙」。まいったねこりゃ。

9. あわ
前曲から一転、仄かにボサノバやジャズの香りのするアルバム中最も穏やかのんびりな曲。しかし草野の珍妙な歌詞や歌い方のお陰で鼻につくようなお洒落さは周到に取り除かれている。慎み深いと言うか剽軽というかシャイと言うか、その辺まさにスピッツ。のんびりと逆三角形的にランニングするベースなどもなんかシュールに聴こえて笑える。サビの頼り無いメロディはまさに「あわになって溶け出」すよう。二回し歌ったらもうサビに帰って来ずにのんびりと演奏が続いていくのも、とぼけているような切ないような。「本当は逆さまだってよ」「優しいひとやっぱりやだよ」なんてパンク風味なフレーズをこののんびりした曲に入れちゃうセンスがもう、愛くるしい。

10. 恋のうた
いきなり歌から始まる、このアルバムでは珍しくはっきりしたサウンドが特徴の可愛い小曲。カントリーライクで非UKギタポ的な素朴なアコギの響きや彼岸的なメロディの無い明朗な歌など、のんびりとピースフルな感じ。歌詞もシンプル。「おさえきれぬ僕の気持ち おかしな夢ばかり見てさ」はまるで初期スピッツの異常さを自己言及しているかのよう。「君と出会えたことを僕 ずっと大事にしたいから 僕がこの世に生まれてきた訳にしたいから」なんて、普通にとても可愛らしいのに、それを草野が歌う!ずるい!インディ時代のパンクなスピッツの方向転換になった曲。

11. 魔女旅に出る
豪華なオーケストラやコーラスを配した、壮大なストーリーの予感を感じさせる曲でアルバムは終わる。でも、旅に出るのはあくまで「君」なところが何とも情け無い。サビのメロディのささやか具合も、初期スピッツの地に足着いてない感じが上手く出ているように思える。壮大なオーケストラはまさに劇のエンディングみたいな具合で、まるで騙されたかのような不思議な幸福感と「あれ?」に包まれる。妄想メルヘンなアルバムの締めが最高にメルヘンなオーケストラ曲というのが、よく出来てるなあと。出だしから「ほら苺の味に似てるよ」なんて、絶妙なメルヘン具合。「泣かないで 行かなくちゃ」と出発を促すのは、「こんなところにいたらダメだよ!ほら、もっとまともな世界へ!でも帰って来たくなったら「いつでもここにいるからね」」と言っているようで、やはり最後まで情け無くて滑稽。『ウサギのバイク』で誘っておいて、この曲で「さあ、お帰り」と言っているような気もする。あと、何気にベースが凄く歌っているのに最近気付いてびっくり。


  スピッツの2ndアルバム。卑怯なほど可愛いジャケット、スピッツの可愛さと妄想具合がしとやかに表現されたアルバム、そして日本語ロックの重要な名盤などと呼ばれる。このような名盤が当時、前作から僅か8ヶ月でリリースされたんだから、メンバーも「作った時のことを良く覚えてないけど、スムーズに行ったみたい」などと回想するほどなんだから、分からないもんである。
  前作から8ヶ月後のリリースというのもあって、基本的には前作とサウンド的な志向は同じ。80'sUKギタポ~シューゲイザー、もっと言うと「クリエイションレーベル」で換言出来そうなジャンルの音楽を自分たちのユーモア込みで取り入れたサウンドは、確かに要素は同じものな筈なのにしかし、前作とは響きが随分違うように思われる。ぼんやりとした気持ち悪さ・残酷さが感じられた前作に対し、こちらもぼんやりとはしているが、どこか大人しく、おだやかのんびりで、そして可愛い、聴き易い感じがするのは、まるでジャケット通りに、前作のサウンドが上手に「猫を被った」ような感じさえする。
  個人的にはこの「猫を被った」感じの要素が前作と今作の大きな違いであり、またこのアルバムが一枚の「名盤」として高く評価される所以だと思う。高速で制作されたアルバムはサウンド的な大転換などはあまり見られず、その分曲のクオリティアップや細かいギミックの工夫、また高速で制作した故の全体のトータルな雰囲気などが、収録時間40分弱という収まりの良い一枚に結実している。前作で非常に苦労したらしい録音の行程も今作ではとてもスムーズに行われたらしく、各サウンドはユーモアセンスも十分に含みながら伸び伸びと鳴っている感じがする。何故か草野のソングライティングもぱりっとしたポップさや可愛らしさの成分が増加し、そこに巧妙に性と死、空虚などの毒を混入するから、ある意味かえってタチが悪いのかもしれない。この猫、毒持ちにつき、である。
  何気にスピッツ流のシューゲイザーサウンドは進化し、輪郭のはっきりした曲やサウンドにシューゲ要素を取り込むなど、前作以上により「スピッツサウンド」化している。『プール』はもしかしたらスピッツの『Vapour Trail』かもしれない(この時期メンバーは自ら「歌謡ライド」と名乗っていたらしい)。スピッツが持つノスタルジックで頭がぼんやりしながらも胸を痛めるような側面は、後のロック要素も地に足着いたポップ要素も薄いこのアルバムにこそはっきりと出てきているのかもしれない。幻想的な雰囲気ではスピッツでも最高の部類だと思われ。『ウサギのバイク』でしっとり誘われて、『魔女旅に出る』で壮大に送り出される、そういう素敵でポップで時々危なっかしくて切ない、そんな小さくて美しく纏まった40分弱のメルヘンな絵本の世界、というのがこのアルバムの個人的な見方。



『ウサギのバイク』曲だけ。シューゲイザーともサイケとも言えない、スピッツらしい夢見心地。


『恋のうた』ライブ。草野さんギター持たずに歌うこともあるんだな。


『魔女旅に出る』ライブ、というかコンサートって感じだなあ。スタジオ版以上に豪華なオーケストレーションが凄いが、曲もなかなか負けていない様子。っていうかこの曲ここまでできちゃうんだ。切なさの代わりにこみ上げてくるもんがあるなあとか思ったり。
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