--年--月--日 --:--

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『14SOULS』 ART-SCHOOL

2010年02月04日 07:00

14SOULS14SOULS
(2009/08/05)
ART-SCHOOL

商品詳細を見る
1. 14souls
スピッツライクな爽やかギターポップ路線の、それらの中でもとりわけ純度の高い曲。沸き上がってくるようなイントロから、落ち着いた瑞々しさを保ったまま心地良いテンポで疾走していく。幾分フックは弱いがその分流れるようなメロディとギターを味わえる。こういうタイプのポップな曲における木下ギターのアーミングはやっぱり爽やかで魅力的だなあ。展開の穏やかな曲な分、間奏のベタなリズムの鈍化が印象的にもなっている。途中から細かく瑞々しいリフを刻みながら上下する戸高のギターが、音数の割にとても優しげで曲にキュートさを与えている。木下の歌もとても爽やかに聴こえる。ちょっと声高め?アルバムの他の曲が毒々しいものが多い分、このアルバム冒頭の透き通るようなポップさが眩しい。

2. STAY BEAUTIFUL
ハードなギターから、Bloc Party風なシリアスさと攻撃性を持ったサウンドが展開する、ニヒルな狂騒具合の曲。毒々しさはこっちの方があるかもしれない。サビのメロディもシンプルに艶かしげ。しかしこの曲の特徴はやはり間奏からの展開。ビッグビート風、っていうかPrimal Scream『Swastika Eyes』をホーンなどでアレンジしたような、不思議な具合。毒々しさが爆発しないままにゆっくりと膨張していくようで、新しいドラムもその緊張感をうまく煽っている。そして最後のサビでダークに解放されると。

3. ローラーコースター
ポップに旋回するリフを主体にしたどっしり目のオルタナポップ。あっけらかんと突き抜けるような溌剌具合が『Seagull』なんかに通じるものがある。特にBメロの粘り着くようなキュート具合は初期スマパン的なものも感じさせる。タイトルやサビの歌詞的にはジザメリだが。そのBメロから解放感のあるサビに抜けて行く展開が良い。Bメロのコーラスの掛け合いも勢いがあって良い(でもライブでは木下がひとりでやってた気もする)。そして相変わらずブレイクで展開を作るのが上手。

4. マイブルーセバスチャン
マイナー調の耽美なアルペジオから、サザンオールスターズみたいなホーンが高らかに鳴り響く曲。リズムの拍の取り方なども含めて、ともすればダサくもなってしまいそうな毒々しさがあるが、シンプルなメロディでバランスを取っている。シンプルな演奏をバックに歌われるサビのメロディが、そのファルセット具合も含めてアートのマイナー調曲らしい耽美な舞い上がり方をしている。その後にホーンがぐっと入って来るので、なんか不思議。

5. HEAVEN’S SIGN
三連符で幻想的な曲。サビにちゃんと上昇感と勢いのあるメロディとシャウトを持って来る木下も良いが、この曲はともかく戸高。あらゆる手段を駆使して、まどろむようなバッキングから曲展開を激しく牽引するギターソロ、そしてその後のクールダウンの水中な雰囲気までを構築している。特に終盤のディレイ掛かったギターが光の泡みたいに舞うところが良い。木下の同じコードを弾き続けることで発生する不思議なシューゲ感を戸高が上手にコントロールしている感じ。

6. LOST CONTROL
今作で一番Bloc Partyしている曲か。冒頭から硬質なサウンドでダークに疾走。抑制の利いたリフの旋回などは「よくやるなあ」とか思ってしまう。サビ前にそれが更に加速する具合や、二度目のサビで一度急停止してから一気にサウンドが混濁し最後のサビに繋がっていくやや大げさな展開は、The Novembersなどの最近の若手からのフィードバックも感じる。最後のタイトルコールも勢いがあって、ブチッと途切れる無機的な終わりに向かってバンド全体で疾走していく感じが出ている。初期とは違う、NW的疾走感。

7. tonight is the night
キラキラしたシンセのフレーズに導かれた、ハウス・トランス色の明らかな楽曲。ハウスと言ってもサビでは四つ打ちではなく、奇妙につんのめったリズムで轟音に溶け込む。この辺のリズム的なワザは新しいドラムの個性・利点がよく現れている感じがする。細い音を奥行きをもって響かせる静とキラキラした轟音の動との対比はやはりアートスクール。終盤のサウンドのひねりもサビの入り方も、新しいサウンドにも関わらず手慣れた感じがある。ハウス風味の楽曲でも疾走感と切迫感があるのは、もはや業のようなもんか。

8. wish you were here
今作のファンク担当曲か。これまでのアートのファンク楽曲の中でもとりわけ内向的というか、マイナー調のアルペジオが曲の余分なエネルギーのようなものをすべて奪い去って、良い意味で徹底的に陰気な雰囲気を漂わせている。簡素な打ち込みの音もそのチープさが曲の陰気具合に合っている。サビで舞い上がるメロディも最後は間違いなく落ちていって、二回目のサビの後のリフレインで終わるという曲自体の小規模さ、終わり方のあっけなさもあって、ファンク曲なのにアルバム中一番冷めて虚しげで暗いセクションを形成している。ゆえに、『その指で』とは全然異なるベクトルにおいて、凄く耽美だと思う。ベースラインもいつもより色っぽく曲線的。

9. don’t i hold you
ダークに攻撃的に疾走する、このアルバムで頻出のタイプの楽曲。より直線的なフレーズの被せ方はBloc PartyよりもThe Novembersの方が近そう。メインリフもちょっと大げさ。突進するようなサビのメロディ。そして最後のサビ前の溜め方の大げさ具合。この曲だけはどうも好きになれん。『LOST CONTROL』と被っている気がする。

10. CATHOLIC BOY
ふわあっと舞うシンセの音が印象的な穏やかなイントロで始まる普通のギターロック。しかし所々のアレンジが流石に上手で聴かせる。どことなくthe pillowsを思わせるゆったり具合のAメロでも瑞々しい雰囲気を出して、それがサビのマイナー調のパワーコードでまったりと粉砕される具合はやはりアートスクール。シンプルな繰り返しを珍しくしつこく引っ張るサビだがその落ち着いた感じがまったりと聴かせる。二度目のサビ以降のCメロ→間奏で可愛らしく炸裂、な感じが、安心のアートスクールクオリティを感じさせてくれる。戸高のちょっと水っぽいギターが溜めて溜めて、伸び伸びと舞う、それだけで素敵。

11. KILLING ME SOFTLY
二重歌唱で別々の歌詞を同時進行するという、それなんて『バリで死す』と思っちゃうアイディアを、ダークでダンサブルなサウンドに乗せている。ダークにグダグダなAメロから急にサビでメロディが跳ね上がるのがキャッチー。そして二度目のサビが終わるとブレイクして、ドラムのフィルから急に全く別の曲みたいなのが始まる。つんのめり気味のリズムで疾走、そしてまたサビへ。個人的にはアート史上最も字の詰まった歌詞カードがなんか、笑える。三分半の曲なんだが、二人分の歌詞となると流石に凄い。変に圧倒される。

12. 君は天使だった
かえって前曲以上にびっくりな、軽快なツービートに乗った北国風ギターポップ。それこそthe pillowsの『レッサーハムスターの憂鬱』を思い起こさずにはいられない、幼げな内向性と敬虔さを感じさせる曲調に、こっそりとアートの新境地を垣間見たような気がする。木下の歌との相性も抜群に良い。「昔の映画のように」が「昔の演歌のように」と聴こえるのは笑った。サビのシンプルな高揚もとても切なくも可愛らしい。そしてこの曲も二度目のサビの後、また全然別の曲みたいにして演奏が再会、寂れた街の風景を切り取ったような哀愁の三拍子サウンドに驚くも、こういうのも凄くいい、と思った。それこそ本当に絵本みたいで、愛しくも切なくて、個人的には、堪らない。こういう路線の続編を激しく希望。

13. Grace note
前作に引き続き戸高曲で締め。前曲の幻想的な感じを受け継いで、儚げで冬な曲になっている。戸高曲の中でもアレンジの細かさ、展開の多さなどなど、最も作り込まれている印象を受ける。四拍子の拍子足らずに聴こえる三拍子のリズムや繊細なギターサウンドの配置など、どことなくデスキャブ的なものを感じる。やはり冬の寂しい景色が思い浮かぶ曲調は終盤、新たな展開を見せ、そしてドラムが複雑にロールし始めると戸高も新しいメロディを繰り出し、アルバム全体のコーダ部を美しくも寂しげに作り上げる。手数の多いドラムと淡々とした演奏の対比がとても寂しげな印象を作り上げる。最後の音など、さっきまでのダークな狂騒はどこ行ったん、めっちゃ寂しいやん、って気持ちになる。


ART-SCHOOLの五枚目のフルアルバム。バンド九年目にして五枚目というペースは不思議だけど、こいつらミニアルバムばっかり出すからその辺よく分からんと、ライナーノーツで宇野維正氏も述べている。
『ILLMATIC BABY』制作後櫻井氏の脱退が決まり、予定していた分のライブをやり遂げて惜別、でもその裏で既に次のドラム・鈴木浩之氏とレコーディングに向けてのセッションをしていたんだから、流石に木下、伊達に長年バンドはやってない。その新ドラムが全面的に参加して作られたこのアルバムも、ぎこちないところは特に見当たらない。
『ILLMATIC~』で見せたNW志向は、この新しいドラムに支えられて、このアルバムでも多方向に現れている。引き締まった直線的なビートからハウスな曲調のリズムを不思議に解体するまで、様々に活躍。
器用らしい新ドラムの加入によって演奏出来る曲調の幅も広がったのか、木下も様々なタイプの楽曲に挑戦している。アルバム一枚を通しての曲調の幅は過去最大だろう。穏やかなギターポップで始まり、ダークに狂乱したりオルタナしたりシューゲしたり、そしてラスト二曲でギターポップ路線的にも新しい方向性を立ててみたりと、何気に手広くやっている。しかし、筆者が信者であることを差し引いても、それほど散漫な感じもしない。暖かみのある冒頭と寒々しい最後が好対照で、どっちもしっかりとアートスクールしているからか。
もうここまで来ると、本当に何でも出来るバンドになったんだなあと感心する。それでもアートっぽさ、木下っぽさが完全に損なわれる場面は見当たらず、「アートスクールの木下」としてのソングライティングの鉄壁っぷりが大いに感じられる。もうどんなことをしても、木下が曲書いて歌えば、それで戸高が色々手を尽くしてギター弾けば、アートっぽくなると。偉大なるマンネリズムに、完全に突入か。次作がどういう方向性でいくか気になってくるレベル。
個人的にはハードでダンスな楽曲よりも、ギターポップな楽曲の洗練が気になった。とりわけ最後二曲はバンドの80'sUKギターポップの咀嚼がまたひとつ前進した感じがある。

今年はバンド結成十周年だそうです。そういえばイギリスのバンドで、結成十年目で世界観抜群の最高のアルバムを出した、The Cureとかいうバンドがおりますね。いつか木下が冗談っぽく、「十周年なったら、物凄く暗いアルバムを作るのも面白そう」とか言ってたので、筆者は、アートスクールに『Disintegration』みたいな作品を求めたいです。期待、期待。



『ローラーコースター』PV。しかしまたえらく獣的な女優だなあ。
櫻井さんがいなくなったからネタに走れないのか、その辺がちょっと不満。


『14souls』。「この曲のPVを募集します」みたいな企画があったけれど、集まった作品が四つくらいだったらしい。そしてその受賞作がネット上に見つからん。どういうことだ?なかったことになったのか!?曲自体はこのように爽やかです。
スポンサーサイト


コメント

  1. yamamoto | URL | A9UWYJHs

    こんにちわ。
    14soulsのPVグランプリ動画ありましたよー。
    http://vids.myspace.com/index.cfm?fuseaction=vids.individual&videoid=60918801

    アルバムについては、僕もアートの素朴でポップな側面に魅力を感じました。
    大仰なNW世界観やホーンの音がアートにあまりしっくりこなくて、シンセで言えば前作の益子さんの瑞々しい音作りには敵わないな~という印象です。

    でもなんだかんだでアート大好きです(笑)

  2. よしとも | URL | -

    おお、ありがとうございます。でも正直、この動画もしょぼいよなあーとか思ったりして。なんかもっとこう、全力疾走じゃない感じというか、車とかバイクとか自転車とか、まだそういったイメージの方が合うよなあとは、思うけど、まあ個人で作るなら、やっぱりこんなもんなんですかねえ。いっそ可愛らしい曲なんだから、欧風アニメ調とかでもいい感じになったと思うんですけど。ああ、自分に動画作る能力があったらなあ。

    まあ、今回のアートはサウンドも歌詞もかなり露悪的だったから、そういう方向性としては、好き嫌いを捨象したらそれなりによく出来ているとは思います。この路線だと地味に『マイブルー~』が一番好き。本人たちも自分のメロウな路線がそこそこのファンに人気があるのは分かってるみたいだから、木下もMUSICAのlostageの新作のレビューでアルバム中一番軽快でポップな曲を凄く好きって言ってたから、多分そういう路線の曲はこれからもずっと安泰だと思います。ますますスピッツみたいだ、いい意味で。

  3. たびけん | URL | 0hxr4hYM

    このアルバムはだいぶBloc Partyだったなと。ローラーコースターいいなあと思ってたらPV曲で、(まあ好きだから良いんですが)ARTの新しさを売り出すならそれじゃないだろ!とか思ってました。STAY BEAUTIFULとかで撮りゃよかったのにと僕は思ってました。

    というか、リアルラブ~とイルマはアルバムに入るもんだと思ってて。全部新曲なのは当時かなり意外でした。櫻井さんが叩いた曲は入れない、って決めてたんですかね。

    ホーン入ってたのは僕は賛成ですが確かに意外だったなあ。新鮮じゃなかったのは歌詞くらいで、「錠剤」「羊水」という新たな語が増えたwって感じですかね。

  4. よしとも | URL | -

    確かに「何故あえてそれ!?」感ありますよねあのPV。でも溌剌系USオルタナ感全開の曲のPVは何気に初ですよ。案外、『LOST CONTROL』のロボゲイシャPVがその役だったりして(笑)あれ、めっちゃ酷い(笑)ちょっと映画も見たくなりました。

    >櫻井さんが叩いた曲は入れない
    ああ、なるほど。僕もなんで今回既出曲からの選曲が無いんだろうと思ってたんですが、その理屈が一番綺麗ですね。歌詞はまあ、デジタルでドラッギーな感じを今作のカラーにしているんだろうなとは、歌詞カード読んでて思うのですけど、何故か目新しさはあんまり無いですね(笑)まあ相変わらずリアルな駄目男のスタンスを維持しようとしていて好きですけど。

コメントの投稿

(コメント編集・削除に必要)
(管理者にだけ表示を許可する)

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://okazaki5.blog95.fc2.com/tb.php/543-d2fa8d65
この記事へのトラックバック



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。