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『Flora』 ART-SCHOOL

2010年01月30日 08:06

Flora(初回限定盤)(DVD付)Flora(初回限定盤)(DVD付)
(2007/02/28)
ART-SCHOOL

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1. Beautiful Monster
典型的に朗らかなベースラインに導かれて、キラキラとした高揚感に満ちたポップソングでアルバムが始まる。過去最高にポップな幕開けに賛否両論だけど、個人的には賛。ヴァースのメロディも『SWAN SONG』の流用っぽくもあるけど、サビの歌詞に「白鳥」て出てくるから、案外自覚的なのでは。そしてそのサビのメロディの舞い上がり方がとても晴れやかで痛快。突き抜けていくような。Cメロで溜めに溜めて大サビに向かっていくところなど「行け行け~!」とか思ってしまう。歌詞についても「噓ぶいて」「錠剤」といった単語は出て来るものの、開き直ったような明るさ・突き抜け方をしている。「new sunset」(あくまで日の出ではないんだな)という言葉のイメージがぴったり来る、爽やかな幕開け。

2. テュペロ・ハニー(Album Mix)
折角爽やかに幕開けたのに、この曲で「フォーリンダーン」しちゃうのが、らしい。それでも「手を繋いで」みたいな言葉は含まれていて、微妙なバランス。レビューはシングル『テュペロ・ハニー』を参照。

3. Nowhere land
ライトの明滅のようなシンセにいつものなんちゃってファンクギターが絡む、このアルバムにおけるファンク担当曲。この曲も『その指で』と同じような落ち着いた感じがあるが、あちらがエロなのに対しこっちはもっとロマン重視。大味なサビのメロディ(英語の発音は、もうこういうもんだから!と言わざるを得ない(笑))がイメージを飛翔させる。抑制の利いたヴァースとのギャップの淡さが切ない。最後にサビの伴奏のままヴァースを歌い、そして急に落とすあっけなさ。

4. 影待ち
籠ったようなアルペジオにリードされて落ち着いたリズムと憂鬱なメロディで溜めて、珍しくBメロまで用いて溜めて、そしてサビでぐっと耽美に浮き上がるミドルテンポの楽曲。AメロBメロの重さ・停滞を引き継いだままの浮上は、浮いているのか沈んでいるのか曖昧な、彼等特有の混濁模様(『アパシーズ~』とかと近い具合)。水の中を静動するかのような。ギターのミュート気味なトーンと優雅なフレーズの対比が良い。

5. アダージョ
子供の遊ぶ声が轟音に切り替わるが、とても豊かで牧歌的な音なのが印象的なゆったりとした曲。リズムも程よい抑制具合。初期の『フラジャイル』の音を芳醇にしてポップにしたような。穏やかな水のようなトーンの音の壁に、間奏などでバンジョーまで入ってきて、とても和やかな中にサビの自然でキャッチーな高揚が光る。この曲も痛みや苦しみがあってもむしろそれを肯定するようなスタンスが見られる。

6. Close your eyes
淡々と進行するミドルテンポの楽曲。落ち着いた曲調はサビや間奏でも割と一定していて、正直地味な曲だと思う。平坦な具合に冬の乾きを見出すかどうか。サビのイエーイ!もどこか伸びきらない具合で、計算だろうか?それでも音の重ね方は流石で、二度目のサビの後の平坦な轟音、歩きながら響くような轟音が聴き所と思われ。三回目のサビが無いのが意外。

7. LUNA
しっとりと深みに落ちていくようなスローナンバー。アート的なだらしないスタンスの出た鬱曲。最初の繰り返しの歌詞の駄目っぷりは益子さんが「凄いね!」と言うくらい酷くて、むしろ笑える。夜の海辺のような寂しくも幻想的な広がりを持った音色が美しく、益子さんのシンセが特に素晴らしい。サビメロの後ろで鳴る微妙な音など。機械的なドラムも安定感があって良い。サビメロディが『イノセンス』の流用っぽいのも気にならない。二回のサビ回しであっさり三分程度に終わるのがアルバム的にバランスが良い、が正直4,5,6が少々タルいので、ダレる人はこの曲で余計にダレるかも。いわゆるエレクトロニカ風味な世界観。

8. Mary Barker
前曲のまどろみから脱するような軽やかなカッティングとリズムで可愛らしく転げ回る、戸高のペンによる爽やかな楽曲。戸高曲が木下的な生々しさを持たないのがここでは非常に効果的。可愛らしいベルの音みたいなギターサウンドがとても和やかで平和で心地良い。うきうきするような2ビートがアートにとって非常に珍しい。シンプルでキュートな戸高のソングライティングも良い。アルバム後半へ向けてのいい具合のアクセントになっている。

9. SWAN DIVE
木下ソロの同楽曲のリメイク。輪郭のぼやけた陶酔感が売りのソロバージョンに対して、こちらは瑞々しいアルペジオやシンセのエフェクトが水中の光の揺らぎのように煌めくアレンジとなっている。ひたすら繊細な音の重なりが美しく、そこにドラムがそっと入るだけでぐっと惹き付けられる。ソロ時に比べ輪郭がはっきりし音も低くなったボーカルは穏やかで耽美な音像の中でぐっと生々しさを増し、初期アート的な美しい逃避の世界観もその幻想性の持つ意味合いが大きく変化しているように思える。童話的ながら沈んでいくような、そしてそれがとても幸せであるような感じ。アルバム中でも最も危うい柔らかさを持った曲。

10. SAD SONG
前曲の静謐を破り、マイナー調のアルペジオを纏って疾走する。かつてお得意だった切迫感全開の勢いがサビの、特にドラムの疾走具合に垣間見える。繊細なパンク。シンプルなメロディ回しも前曲からの展開の移り変わりにうってつけ。サウンドは繊細だが、曲自体に初期アートの香り。しかしそこに乗る歌詞が歳を取ることに対する焦燥だったりする。歌の内容は『Close~』と被っている気もするが、切迫感はこっちの方が上。「「苦しんだ分だけ強くなる」そうじゃねえ 弱くなったんだ」ってフレーズが特に良い。そうかあこのとき28歳かあ。

11. Piano
軽快な三拍子で耽美な世界を描くワルツナンバー。前作の『Waltz』以上にワルツ。タイトル通りのピアノのリフやバイオリン的なシンセの音、そして踊るようなギターフレーズが西洋的な哀愁(+エレクトロニカ風味)を漂わせていて、それが意外と木下節と相性が良くてとても美しい。こんな木下もアリなのか!という驚き。サビの沈んでいくようなリフレインも儚く、虚ろに上下するファルセットも非常に映える。Elliott SmithとThom Yorkの折衷と言うのは褒めすぎか。益子プロデュースがアートにおいて最も綺麗にハマった名曲。しかし前曲とこの曲のタイトル、どことなく「仮題そのまま」臭がする。

12. IN THE BLUE
凄い。散々陶酔感を漂わせたアルバムの、その頂点がこの曲。まさに水中の光の揺らぎのようなサウンドが、しばし途切れ、そして怒濤の轟音、壮大な轟音にシンプルな歌のフレーズが飲み込まれていく。民族音楽テイストなドラミングの不穏さ、ギターの音の澄み渡り具合、シンセの反響の仕方、ボーカルに掛かった深めのエコー、そして轟音の轟音たる無表情の広がり具合。轟音は理屈ではないのです。アート式シューゲイザーの方法論の、これはひとつの完成系。情景描写に富んだ歌詞も、その意味合いが全てサビの轟音の中の「I miss the girl」の執拗なリフレインに吸い込まれていく。切なくも強烈な引力。っていうか歌ってない歌詞とかあるんだ(これは別に無くても……)。第二期アートの陶酔・幻想趣味の到達点。この音源もいいが、ライブDVDにおけるこの楽曲の強烈ぶりは異常。そりゃあ木下もシューゲイザーを名乗りたくもなる。

13. THIS IS YOUR MUSIC
フィードバックノイズから急にポップなフレーズで疾走し始める。Rideで言うところの『Taste』のような曲。疾走ギターポップ/シューゲイザー。一曲目以来のこういうスケール感がアルバムの最終局面へ向けての加速を思わせる。滑空するようにドライブする演奏と歌がサビの「パッパッパラパパー」というインディロックテイスト全開のコーラスに収束していくのがひたすら痛快。デスキャブ!などとガッツポーズ。「何処までも飛べるような」と、やはりアルバムのスタンスと関連するフレーズが溌剌と舞い上がっていく。着陸するようにブリッジに戻り余韻を残す後奏も良い。

14. 光と身体(Album Mix)
前曲の飛翔がこの曲に着陸する。アルバムのここまで13曲を経て鳴らされるこの曲のイントロのスケール感は格別である。GRAPEVINEの『Here』におけるタイトル曲と肩を並べる壮大模様。そしてこれまでの楽曲を束ねるようなサビのメロディと歌詞。「空には青 君には痛みと孤独を」が卑怯なくらい説得力を増す。レビューはシングル『フリージア』参照。

15. Low heaven
前曲がフェードアウトして、最後は戸高による穏やかで小粋で優しげなポップソングで締める。戸高がアートに加入する前から存在したらしい、somerhyme時代の曲のリメイクだとか。ラジオフィルターが説かれた瞬間に広がる音像の穏やかさ・柔らかさ。メロトロンの音やら何やらを駆使してソフトロック-エレクトロニカ風味な幻惑感を出しながら、シンプルで可愛らしい戸高の歌が夢見心地に響く。童話のエンディングみたいな世界観。パッパッパーとキュートなコーラスも飛び出し、まろやかで幸福で切なげな後味を残す。


ART-SCHOOLの四枚目のフルアルバム。第二期になってからは二枚目。収録曲数15はベスト盤・ライブ盤を除けば最多。それでも収録時間は53分くらい。意外と三分台の曲が多い。相変わらずのバランス感覚の良さを感じる。
ほぼ全面益子樹プロデュースによって作られたこのアルバム、サウンドの充実具合は前作『PARADISE LOST』と双璧だが、あちらの音が殺伐さ・虚無的な雰囲気を多分に含んだ北欧的質感だったのに対し、こちらはもっと丸みを帯び、光が差し込む穏やかな都市の水辺のような、そんな雰囲気がする。そう、かなり陶酔的なサウンドをアルバム中に展開しながら、どこか現実の都市の情景が浮かぶ音作りにもなっているように、個人的には思う。
あるいは、そう筆者が思うのは木下の作風の変化によるものかもしれない。吐き捨てるような自嘲や後悔から、絶望の後の明るさ・絶望を下敷きにした「それでも生きていく」という風に歌詞のスタンスがシフトしたのは、あるいは媚なのかもしれないし、ある程度は木下自身の成長かもしれない。中期の太宰作品のような、地に足着いた余裕というか軽みというか、流石に言いすぎか。
そういうポップなスタンスは楽曲においても所々に現れている。が、旧来のファンの一部が嫌うほどにポップ一色でもないとは思う。というかコード進行のパターンなどは初期から大して変わっていない。変わったのはそれらの組み合わせ方やアレンジ。サビ前のBメロやサビ後のCメロなどを用いた楽曲は、なるほど旧来のアートの愚直な曲構成とは異なる部分もある。戸高の楽曲などはもはや旧来のアートからは考えられない程軽やかだし、グランジ臭どころか、ディストーションライクなオルタナ臭がほぼ完全に消滅したアレンジをポップに堕したと見る向きもあるだろう。
しかしそのポップさも、いわゆる一般的J-pop的なそれとは全く異なる、というか一般的なロッキンオンジャパン系列のバンドとも、大いに異なると思う。ここまで徹底的に80's以降のUKギターポップやUSインディをリスペクトし、それらの音楽の諸要素を半ばモザイク的に活用するサウンドは、そういない。しかもこのアルバムではサウンドの奥行きも増し、そういったサウンドが何気に広大なスケール感でもって鳴らされている。このようなスケール感でもって、しかもこんな相変わらず情け無い歌ばかり歌うバンド、海外にだってそれほど多くありませんよっていう。本人たちも強く意識しているだろうが、キュアー→スマパン・レディヘ→デスキャブみたいな、そういった開けた系譜に対する激しい慕情を、このアルバムからは感じるのです。インディロックの王道になろうと、あるいは木下もふと思ったのかもしれない。それだけに、後にドーパンのスターとの対談で「(このアルバムが)売れなかった」とぼやいていた木下は、幾らか可哀想。
ともかく、これほどインディロックの王道的なサウンドを「卑屈かつ堂々と」鳴らせるのは、日本では今やアートとバイン、あとHiGEくらいではなかろうか。それくらいこのアルバムでアートが手にしたサウンド的振り幅と、そしてその振り幅の中でもある程度安定したソングライティングが行える能力は、堂々としたものがあるんじゃないかと、信者である筆者は過剰評価気味に考えている。いやホント素晴らしいアルバムだと思うけどなあ。確かに前半弱いし、それに何故か歌がキャリア通してもとりわけ下手だけど。最近のライブではひたすらこのアルバムの曲はスルーされがちだけどさあ。
『SWAN DIVE』から最後までの流れは、アート史上でも一番ドラマチックなものだと思うけどなあ。そう、ドラマチックなんだ、このアルバムは。そして少なくとも個人的には、『LOVE / HATE』と並ぶ大名盤だと、思うのですが。


『SWAN DIVE』PV。耽美。死と性。水と憧憬。女優はAVの方の人だとか。
まさかのオ○ニーシーンもやたら痛々しい。


『Beautiful Monster』ライブ。音源と比べると流石にちょっと音数不足か。
今の戸高の方がきっともっと派手にキラキラやるはず。彼も進化している。

『IN THE BLUE』ライブ。直接貼れなかったのでリンクだけ。映像も乱れていますが。
ちゃんとしたもんを見たけりゃDVD買えよ、と。でも、これ観たら欲しくなる。
この曲は圧倒的にこのライブバージョンが凄い。終盤とかもう訳分からん。
戸高のシャウトもとてもいい感じ。仕方ない、あれは。轟音は、理屈じゃない。

インタビュー。最後の「これで聴かれなかったら、本当に何をすればいいのか分からなくなっちゃうから……」が、なんか重たい。このアルバムが賛否両論だったり売れなかったりした(実際の所どうなんだろう)のも含めて、この後の方向性の転換にも関わってくる部分だと思う。
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コメント

  1. たびけん | URL | 0hxr4hYM

    あれ、もしやフローラって人気無いんですかね?いいんですけどねえ。歌下手やけど。戸高曲の牧歌的なところがすごく好きです。リンクのインタビュー読んだんですが90sのキラキラさって、どういうイメージなんでしょうねえ、なんとなくわかるんですけど。ローゼスとか?

  2. よしとも | URL | -

    自分の周りではなんか、いまひとつ。歌下手だからですかね(笑)戸高の牧歌カラーが本当にいいアクセントになってますよね。

    確かに、その90年代キラキラ感ってのがよく分かんないですよね。ブリットポップとか言ってるけど、別にそんな感じでもないですよねえ、このアルバム。やっぱりローゼスやらシューゲイザーやらその辺、あとはまあ、レディへとかスマパンとかエリオット・スミスとか、その辺ですかねえ。このアルバムからオアシスやブラーは、多分出て来ないですよねえ。

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