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『PARADISE LOST』 ART-SCHOOL

2010年01月12日 02:44

PARADISE LOSTPARADISE LOST
(2005/10/19)
ART-SCHOOLACO

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1.Waltz
逆再生のギターやキーボード、柔らかいアルペジオなどによって構築されるモロにモグワイな世界観に木下の歌が乗る、ゆったりとした三拍子の曲。壮大な冬の光景を思わせるサウンドは、アンサンブルのダイナミズムによって一気にその世界観を広げる。コーラスなども入って、これまでに無く豊かなサウンドを聴かせる。グラスゴー録音!キーボはモグワイの人だし。このアルバムにおける「美しい世界の果て」は、とても寒いところなんだなと、提示するサウンド。ヘタレな木下の歌もなんか切ない。

2.BLACK SUNSHNE
前曲のエフェクトと入れ替わりでノイズ、そしてハイハットを利かせたタイトなリズムが入り、シンプルなリフとともに曲を構成する。アート的な切迫感と高揚感がとてもシンプルな形で現れる。シンプル過ぎてそれほど言うことも無いが(笑)、しかしコーラスやら間奏のノイズやら微かに鳴るアコギやらに、アルバムの「北欧的」なイメージに合わせた細やかなサウンドの工夫が伺える。

3.ダニー・ボーイ
穏やかで柔らかなアコギのアルペジオが中心となってオーガニックな雰囲気を造り出す。だけどやっぱ寒そう。そしてサビの高揚も、コーラスやキーボードの装飾が幻想的で、木下の悲痛なメロディも淡く響く。コーラスの利いたギターのカッティングやらミュートギターやら、細かい部分の気遣いがより曲の雰囲気を引き出している。終盤のリフレインとそこから入って来るギターフレーズも感動的。曲の透明で幻想的な感じの割には、また随分と「猿」な歌詞で、皮肉なもんだなあと。木下の北欧系ギターポップへの拘りがよく分かる曲。

4.Forget the swan
一気に疾走!揺れるギターと疾走するベースライン、そして一気にタテノリ全開なドラムが入ってからはもう、勢い全開な演奏で突っ走る。ザラザラした雰囲気がサビの非常に溌剌としたメロディに向かって突進していく様は何とも爽快。ザラザラしたギターの音もパワーポップ感全開で可愛らしい。そして終盤、タムの連打やボーカルのラジオフィルター加工などから段々演奏がせり上がってくる具合がもう雰囲気全開で良い。櫻井さんの勢い全開ドラムの魅力がこれでもかと発揮されていると思う。しかしこれ、凄く溌剌とした曲なのに、歌詞はこれまでの「猿」な路線を極めたようで、非常にヒドい(笑)この凶悪なギャップが、もはやジョークのようでさえあって気持ちいい。

5.クロエ
前曲の疾走からこの曲のエフェクトがせり上がり、そしてへなちょこファンクが始まる、という一連の流れに美学を感じる。「猿」な世界観も連続しているし。
レビュー自体はミニアルバム『スカーレット』を参照。

6.あと10秒で
『クロエ』のエフェクトがこの曲のエフェクトとクロスフェードして、そしてアルバムがまた勢いづく。アルバムの真ん中が「何もねえ!」なんて、ホントに悪い冗談。シューゲなサウンドがアルバムにもそこそこマッチしている。やっぱ「猿」だし。
レビューはミニアルバム『あと10秒で』にて。

7.欲望
前曲の勢いを強制的に掻き消すようなノイズ、そして重いリフが印象的。しかしリフが消えると、アコギや微かなサウンドが広がる荒涼寂寞な世界観が広がる。そういう意味では『LOVE / HATE』期の楽曲の香りもする。所々にこのアルバム的なサウンドの工夫(逆再生エフェクトなど)は見られるけど。サビのメロディは木下ソロ『RIVERS EDGE』の流用だが、重いリフをバックに響くそれは殆ど別もの。タイトルに違わず、なんともどうしようもない世界観。最後も強制終了的で寂しげ。

8.刺青
前曲の強制終了後に聴こえてくるこの曲のギターが随分冷たく響く。曲順の妙かしら。前曲も絶望的だけど、こっちはそれ以上に絶望的で凄い。しかし漢字二文字のタイトルが連続して、字面はちょっと悪い(笑)これと『クロエ』はアルバムレコーディングとは時期が違う曲だからか、北欧色が薄めな気もする。
レビューはミニアルバム『LOST IN THE AIR』にて。

9.LOVE LETTER BOX
前曲までずっと続いていた緊張感(とそれに伴う疲れ)が、この曲の可愛らしいイントロで溶ける。痛快溌剌なパワーポップ。サウンドの解放のさせ方が何とも陽性で、しかもそれでいて冬っぽさもよく出ている。こう、「雪の降る西洋のクリスマス」的なポップで神々しい感じが、特にサビのギターフレーズや間奏の幻想的なサウンドによく出ている。歌詞的にもこれまでの「猿」な世界観から、「人非人でもいいじゃない、生きていきさえすれば」的な、ギリギリな前向き故に優しい訴えかけを持ったものに変わる。木下の可愛らしさがよく出た曲だと思われ。

10.PERFECT KISS
コンガのリズム、そしてワウギターなど、『クロエ』以上にモロにファンクな曲。ちょこちょこギターにワウがそれっぽく絡む。そしてファルセットを交えた二重歌唱やサビの掛け合いなどもなかなかにいやらしくて良い。サビの舞い上がり具合も切迫感とはまた違う不思議な余裕が感じられる。こうなってくると、「猿」な歌詞もなんだかノリノリで、生き生きとした感じに聴こえてくるから不思議。これもちょっと「猿」で生きていくことに前向きだし。ドラムの様々な工夫、お疲れさまです。

11.PARADISE LOST
いきなり切迫感のあるギターが入り、そしてまさに緊張感そのものな詰まり方をしたドラムとともに荒涼とした世界観が広がる。サビでは一転、緊張感から解放されて一気に神々しい「果て」まで行ってしまったかのようなサウンドが展開、しかしサビが終わればまた緊張状態の無情な感じへ。この切り替わりがこのアルバム中でも最もクールだと思う。特に終盤の転調して絶望的に寒そうなサウンドから、突如ドラムと歌とカッティングだけになるところは、アートには珍しい感じの緊張感があって非常に良い。ハイハットやスネアがバシバシと決まる感じがとても気持ち良い。ギリギリまで突き放したようで、ふと笑顔に救いを感じる歌詞も、木下ロマンチスト。

12.僕が君だったら
淡いキーボードの音に導かれて始まる、穏やかな哀愁漂う曲。サビの悲痛な高揚も幻想的なキーボードに囲まれて神々しい、というか「ねえ、こんなに寒いのに寝ちゃうの?天使さん降りてきちゃうよ!」的な雰囲気があってやっぱグラスゴー的。冬の寂しさを強烈に思い起こさせる。羨望のタイトルコールはそれこそ「窓の外で、和やかな家の中の人達の情景を眺めている」かのよう。終盤のファルセットのリフレインもとても美しい。締め曲っぽい雰囲気もするがアルバムはまだもうちょっと続く。

13.影
うっすらしたシンセとギターフレーズに導かれて、少し壮大さを感じさせるリズムで転がる力強いパワーポップ。ちょっと『LOVE LETTER BOX』と被っている感じもあるけれど、間奏の壮大さから奥行きのある静寂に落ち着く感じは、アルバムの「果て」を感じさせる。そこからアルバム最後の高揚。北国のドリーミーな感じが気持ちよく出ている。……ラスト前としてはやはり、ちょっと弱い感じがしちゃうけど。「雨の日」と言うけど、やっぱりこのアルバムだと「雪」っぽい感じはするんだよなあ。

14.天使が見た夢
アルバムのラストは音数少なめぼんやり系の子守唄ソングで締め。残酷な童謡っぽくもある第三者的な歌詞も含めて、絵本を閉じるような寂しくも綺麗な穏やかさが広がる。「こんな風に笑えるなんて」という、微かな救い。……しかし曲調やアルバムの流れからするとこれ、どう考えても「こんなに寒いのに寝ちゃった、死んじゃった」的な、ねえ?『天使が見た夢』って、そういう意味かよ!っていう。映画の最後、穏やかな死、って感じ。


新メンバーになってからのART-SCHOOLの、ひとつの到達点。前作から二年後の、3rdフルアルバム。
インディーでの過渡期的な二枚のミニアルバムと、そして再メジャーデビュー後のUKロック趣味全開の『あと10秒で』に続いて制作されたこれは、しかし個人的には、あまりこの三枚の雰囲気を受け継いでないと思う(笑)いや、歌詞的にはあの三枚で散々歌った「猿」的な露悪的スタイルを更に追求して、一応のけりもつけているとは思うのですが。
サウンド面、これがやはりこのアルバムの特性を凄く左右している。何と言ってもグラスゴー録音。モグワイやベルセバをプロデュースするトニー・ドゥーガンの指揮の下制作されたサウンドは、この時期の木下のサウンド志向もあってか、非常に「グラスゴー」していると思う。圧倒的な北国サウンドというか、その凍死してしまいそうな類の幻想的サウンドの広がりはやはり、グラスゴー録音によって引き出された部分が大きいと思うし、それまでやこれより後の楽曲と比べても遥かに「グラスゴー」していると思う。
何と言っても、キーボード類のサウンド的貢献が大きいと思われ。モグワイのバリーによるそれが、「グラスゴー」っていうかぶっちゃけモグワイな雰囲気を全開に出していて、サウンドだけなら本当に日本じゃないみたいな、不思議な雰囲気がある。おそらくそれは木下も望んだことだろうと思う。
ただ、個人的にはこの「あまりにグラスゴー過ぎる」サウンドが、個人的にはちょっと引っかかるところがあるのです。というのも、アートは本来下北沢な世界観の中で生きているバンドな訳で、まあもちろん初期から外国的な情景を求めているバンドではあったので、サウンド的に北国の光景を引き出すのは悪いことではありません。問題は、このアルバムの歌詞がとりわけ、木下の生活に基づいた生々しい部分が多く現れていることで、彼の「猿」な生活はどうしても下北沢なものであって(幾ら彼がそこに北欧的幻想を詰め込もうとも、いちいちセックスするためにグラスゴーに行く訳でもないし)、そこに北国な美しいサウンドが乗るのは、それはそれで皮肉っぽくて素敵ではあるのですが、反面「グラスゴー?でも歌詞からしたら下北沢だよなあ」と思っちゃう部分もあるのです。この辺の微妙な食い違い。サウンド的には本当に北国的美しさが追求されていて素敵だとは思うんですけど。なので終盤のどこか童話的な雰囲気の方が、歌詞的にはアルバムの雰囲気に合っているような気はします。ただ後半はちょっと穏やか過ぎるかなあ、とも思ったり。っていうか『君が僕だったら』の前にもうひとつ山場を作って、『君が~』で終わらせるのもアリかも。まあ『天使が~』の死亡エンドも面白いですけど。
(なお、このアルバムの初回版にはおまけディスクとして、デイヴ・フリッドマンミックスの『Waltz』(微妙なアレンジ違いがまた味わいあります)とともに、トニーがおそらくアルバム用にミックスし直した『LOST IN THE AIR』が収録されていますが、これがアルバムから外されたのもまた、アルバムのグラスゴーな雰囲気に対してこの曲の「新宿で天使が~」の下りが齟齬を起こしたためではないかな、などと、勝手に推測しています)
曲に関しては、もう全然グランジな曲が無い(強いて言うなら『欲望』くらい)ことがはっきりと分かり、バンドが別の方向にはっきりと舵を切っていたのが、アルバムを通してもはっきりと現れている。グラスゴーなサウンドに引っ張られた訳でもないだろうけれど、ギターポップ・パワーポップ(この二つの定義もまた曖昧でアレですけど)なサウンドが多く見られ、「猿」で「結局凍死」な世界観を時にポップに、時に残酷に表現している。


(なんか長くなっちゃった。二年ちかく前に書いたレビューと比べると、随分と違ったものになったなあと。そのため色々言い訳がましく見苦しくなってもしまいましたが、そういうのもアートっぽさということで、どうかご勘弁を。二年前に比べると、ずっとこのアルバムの良さが分かった気がします。それだけに「ああ、惜しいな」と思う部分もなんとなく感じられたのですが。何にせよ、その辺のアルバムなんかよりもずっと真摯に作られた、素敵なレコードの一枚だなと、今ならはっきりとそう思います)


『BLACK SUNSHNE』PV。イギリスといえば妖精、とはいえ妖精ウゼえ(笑)
櫻井さんのバナナネタも面白いけど、ひたすら木下のギターの弾き方が気になる。そうはならねえだろ(笑)


『Waltz』ライブ。結構SEに頼らず再現しようとして、なかなか微妙なところ。
戸高とかコーラスすればいいのに。木下声枯れてるし。でもギターのちょっとしたアレンジはいい具合。
結局、これはこれで好き。


『Forget the swan』ライブ。このアルバム中でもライブでやって欲しい度個人的にナンバー1。
生き生きとした戸高の動きは見ていて単純に気持ちいい。サビのギターアレンジも好き。
絶対ライブ映えするし、演奏もオーソドックスだし、もっと演ってくれないかなあと、願うことしきり。

やはりインタビューが読めます。ネットはいいもんだ。雑誌は困るなこれ。
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コメント

  1. たびけん | URL | 0hxr4hYM

    ええと、ハンドルネームが違いますが「二年前近くの記事」にコメントを書いたのは僕です笑


    当時は最高傑作だと思ってたんですが、やっぱり曲順というか、仰るとおりLost~入れたりしたほうが纏まったのかな、と思います。「影」自体は嫌いでないけれど、後ろから二番目っていうのがなあ。
    「僕が君だったら」→「天子が見た夢」でもよかった気もするし、間にLost~か、それに準ずる曲を挟むとか。

    音は好きだし、猿全開な世界も音とマッチしてて、よく聴きました(今でも聴きますけど)。

    サウンド的には、完全にターニングポイントになった作品だと思います。ほんと。

  2. よしとも | URL | -

    いやあ、こんなブログを二年も見て頂いて、本当に嬉しいです。

    私も『影』好きなんですけどねえ。あと人によっては後半の穏やかさが良い、という人もいるみたいで。大体今の私は『Lost~』無しでも良かったかなあなんて言ってるので(笑)もう何がなんだか、って。
    そういう、色んな意見が出るって意味でも、やっぱり懐の深いアルバムなのかなとは思いますね、良くも悪くも。

    「猿」に関しては、あまり私の書いたこと気にしないで下さい(笑)普段聴くときはあんなこと全然考えず、もっと気楽にしているので。どうもこう、改まってしまうと頭が固くなって、いけないですね。

    今では本当に、好きなアルバムです。今のこの時期がとても似合うなと。まあ『LOVE / HATE』や『Flora』の方がより好きなんですけど、このアルバム特有の「良さ」が分かってきたなあとは、思います。遅過ぎるか(笑)

  3. たかぼー | URL | -

    個人的に「PARADISE LOST」の頃のARTが一番好きですね。
    聴き始めたのがこの頃だったからという意味でもあったりしますけど。
    SNOOZERに載ってた時期でもありましたね。

    クリスマスの日に聴いたときははまりましたね。
    福岡の街の風景にぴったしでしたよ。

    でも「あと10秒で」はEPに入ってるバージョンの方が好きですね。

  4. よしとも | URL | -

    この頃ってそれ以降よりもプッシュ利いてましたよね。ブリティッシュなんちゃらに出たのもこの時期だったかしら。

    アートは基本秋冬て感じですけど、これなんかは特に冬ですよね。自分も寒い日に割と良く聴いてます。最後の曲が終わるとなんか寂しくなってアレですけど。

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