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『LOVE / HATE』 ART-SCHOOL

2009年12月26日 16:03

LOVE/HATE(初回)LOVE/HATE(初回)
(2003/11/12)
ART-SCHOOL

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1. 水の中のナイフ
1stフルアルバムが冒頭『BOY MEETS GIRL』で突き抜けるように始まったのと比べると余りに痛々しい、鈍重なリフからのスタート。グランジ色全開、というかリフがかなりNIRVANAっぽい、シンプルかつシリアスな曲。ヴァースの張りつめながらもどこか凛とした雰囲気から、一気にグチャグチャに潰れたまま叫ぶ!所々に入るブレイクもまた重い。間奏のキラキラ加減(しかしこれも陽性ではない)がアルバムの繊細さも表しながら、結局また重いパワーコードに沈んでいく。自嘲と絶望。激しい攻撃性を全て自分に向けるのが、サウンドの軋みを生んでいる、なんて言ってみたりして。

2. EVIL
前曲の雰囲気をそのまま受け継ぎ、更に鈍化。感情否定の急先鋒。前曲とこの曲の二連続は間違いなくアートスクールというバンドが最もグランジど真ん中であった時期。サウンドだけでなく、その精神的質感も含めて。曲自体のレビューはシングル『EVIL』を。

3. モザイク
前曲の打ち切り感を受け継いで一発一発の強いドラムが響き、荒涼とした風景を思わせて、そしてまたグランジ!この一曲目からここまでの流れというものがこのアルバムの陽性の無さ、シリアスに参ってる具合を非常に良く表しているかと。曲のレビューはシングル『EVIL』参照。

4. BUTTERFLY KISS
豊かなエフェクトがせり上がって、軽快なリズムとアコギの優しいフレーズが導く、柔らかいポップなメロディを持つ曲。サビの穏やかな浮遊感がとても心地良い。そしてこのディストーションの無いサウンドの中で、太いベースが低いところで曲の骨組みや浮遊力に非常に貢献している。可憐に舞う木下のメロディも、歌うのは喪失ばかり。シューゲイザー的な包容感が、冬の冷たい水の中に沈む「彼女」とやらの光景の美しさを描く。シューゲイザー的な寂しい場所の表現力。終盤に少しだけ力強くなってまたもとの軽快さに戻るドラムもいい。

5. イノセント
前曲と被るようにこの曲の背景エフェクト(この時期はこういうのを使う曲多いな)に導かれて、陽性なメロディを抑制の利いた演奏の中で響かせ、そしてサビで一気に飛翔する。タム多様のドラムの抑制と爆発が心地良い。そしてサビのギターのフレーズはなんか元ネタがあるようだけど、突き抜けていくような爽やかさがある。このヤケクソ気味などっしりとした前のめり感はスマパンっぽくもある。珍しくフェードアウト。

6. アパシーズ・ラスト・ナイト
一音目からまた重たい。House Of Love『Shine On』のフレーズを借用したメインフレーズの煮え切らなさ・耽美さと重いベースの対比。ひりひりと憂鬱なメロディがサビでそのやるせなさや重さを保ったまま舞い上がるのがなんとも。サビから連続する音の混雑具合、シューゲイザー的なうねりに満ちた混乱状態。ニューウェーブとシューゲイザーを陰鬱に往復する感じ。カットアップ的な歌詞も絶望とそれを導くための回想ばかり。メインフレーズがずっと残り続けるのがなんとも虚しい。

7. LOVE/HATE
zwん曲のノイズが引いていくのと入れ替わりに静かに始まる、『LILY』以上に虚無感に満ちた、スローナンバー。シンプル過ぎるアルペジオと出入りするエフェクトの造り出す奥行きがひたすら寂しい。サビメロディも高揚と言うほどには上りきらず、しかも二回目以降は鈍いギターの音によって潰される仕組み。諦めを叫び、ギターノイズが飛び交う演奏の混乱の中をファルセットが舞うのがとても切なげ。沈んだまま嵐みたいに激化する演奏の妙。歌詞はまあ、この年の彼はきつかったんだなあと(「25歳で花が死んだ」)。このアルバムの一番底な箇所だと思われ。
最近ライブで見た。ファルセットは省略されたがその代わり演奏が激化。『汚れた血』『IN THE BLUE』なんかと同系統の曲になっててびっくりした。

8. ジェニファー’88
仕切り直し。アルバム中でも貴重な文句無しの陽性ポップさが前曲との強烈なギャップを振り切って駆け抜けていく。曲のレビュー自体はシングル『EVIL』の方で。

9. BELLS
今度は嵐のようにうねり続けるフランジャー的サウンドをバックに陰鬱に進行するミドルテンポ曲。叩き付け続けるドラムの詰まった感じが不思議な浮遊感を出していると思われ。間奏の部分がちょっと『LOVE / HATE』と被っている気もするし、そもそもヴァースのメロディが『TEENAGE LAST』の使い回しだったりはするが、やはり良い絶望的な混沌を表現している。微かに聴こえるピアノも綺麗。

10. SKIRT
嵐のようなサウンドが引いて、すっとこの曲のアコギのカッティングが入って来るのはすごくはっとする。渇いた感じから最後のサビへ向けて淡々と盛り上がっていくのが流れとして良い。最後のどしようも無く漏れ出したようなシャウトもアルバムの流れとして美しい。曲自体のレビューは『SWAN SONG』にて。

11. UNDER MY SKIN
前曲の残響とすれ違いに入ってくるフィードバックノイズ、そして例の重いベースライン、そこから一気に疾走するっていう流れが、アルバム後半のハイライトを形作っている。この辺の勢いは『Requiem~』前半の疾走ともまた違う、なんともやるせない感じがして良い。曲自体のレビューはシングル『UNDER MY SKIN』にて。

12. プールサイド
前曲がノイズ混じりに終わった直後に、この曲の水のようなアルペジオが鳴らされる。重いベースが曲の輪郭をつくり、とぎれとぎれの木下のフレーズが穏やかに響くかと思ったら、サビでは美メロのまま混沌とした轟音に突き進んでいく。この轟音がアルバム中で最も好きだ。水中から一気に浮上するような、それか沈み込むような、そしてやっぱり突き抜けるのとは違うような、そんな混乱に満ちた轟音。『シャーロット』などと同タイプの、木下独自のシューゲイザー志向が非常に良く出たタイプの曲。鉛を打ち込むがごときドラムも強烈。

13. しとやかな獣
前曲までの出口の見えない混乱具合が、この曲が始まると一気に晴れる感じがする。穏やかで陽性なコード進行とささやかに明るいギターの響き、R&Bテイストの入った抑制の効いたリズムが、サビでキラキラしながらも力強く舞い上がる様は『The Bends』の頃のレディへのよう。散々グチャグチャな現状をそのまま受け入れながら、どうにか歩いていこうという祈りのような歌詞は訴える力も強いが、案外この時期のどうしようもない状況にいる木下の本心なんだろうなとも思う。「光はここには降らないさ」と言いながらも、淡い星空のようなサウンドはこれまでのアルバムの困惑と虚無をしっかりと受け止める。

14. SONNET
アコギと後ろの柔らかいフレーズが奏でる、ドラムの無いフォークソングみたいなこの曲がこのアルバムのエンドロール。ささやかな陽性具合は虚無感と隣り合わせな感じで、バックには映画の引用らしいサンプリングの声が響き続ける。優しいサウンドに乗って危なげに歌われる純粋性とその失われることの絶望やら何やら。最後に残る「Girls back teen!」っていうのがなんとも切なげで、よい締め。

(ボーナストラック). SEAGULL
初回限定版(と言いながら、アマゾンで普通に買える)は、『SONNET』の後に四分ほどの空白があり、それを経て、力強いドラムが響き、そこからオルタナ全開なギターが鳴り響く。『Siamese~』の頃のスマパンを思い起こさずにはいられないどっしりと力強い痛快なナンバーで、メロディも皮肉っぽくはあるけれど陽性。突き抜けた具合のボーカルが気持ち良い。自嘲と開き直りが並列される辺りタチが悪いが、その辺木下らしい。確かに明るく力強くてアルバム中に入れることが出来なかったのも頷けるが、よく出来た良曲。


ART-SCHOOLのメジャー2ndフルアルバム。三枚のシングルを経て満を持して発表されたこのアルバムは、それらの雰囲気を踏襲し、彼等のサウンドの破壊的な面とメロウな面とをはっきり分離させ、その対比を歌詞と共に強力に響かせるサウンドに溢れている。これはサウンド的にはニューウェーブ・ギターポップ的なメロウさとオルタナ・グランジ的攻撃性の対比とも言える。暴力的な曲と虚無的な曲の振り分け、また一曲の中でもその静と動のはっきりとした感じが現れて、キャリア中でもとりわけ単調なソングライティングなのに、むしろそれもどこか欲求的に渇いた感じを思わせて、テーマをストイックに鳴らそうという気迫に満ちている。バンド仲最低に悪かったはずなのに、この辺のプロダクションの成功っぷりは不思議。音も『Requiem For~』の頃よりもずっとクリアで効果的に響くようになっている。
前作『Requiem For~』に溢れていた、爽やかに破滅へ向けて突き抜けていくカタルシスは殆ど取り除かれ、その代わりにどうしようもない、行き詰まってしまった感じ、前作が「破滅しに行こうぜイエーイ!」てな感じだったのが、もっとどうしようもなく、死ぬこともろくに出来ず、ひたすら虚無のふもとで自嘲と絶望ばかりしている。このアルバム周辺の時期はそれまでの詩情を香る程度残しながら、出口の無い激しい困惑に落ちてしまったような感じがある。その困惑を、中二にしてもやり過ぎな感のある歌詞やら(中二を気取ってメンヘラになってしまっては仕方が無いけど、そういう感じ一直線な危うさがある)虚無と無情な激しさ、そして時折嵐のように渦巻くサウンドによってちゃんと曲として形にしたことが、本当に凄いと思う。
バンド崩壊してたのに!木下が酒飲みながらじゃないとレコーディング出来なかったとか言ってたのに!四人の意地だったんかな。作品を聴くと、そういう切迫感も本当にそのまま素晴らしい形に表現されていて、凄いなと、壮絶だなと思うばかり。自身の状況が酷くなればなるほど作品のエッヂが増すアートスクール。もう完全に業ですね。その業が一番そのまま表現されているのが、このアルバム。アマゾンのレビューで「こういう精神状態の作品をもう一度アーティストに望むのは流石に酷過ぎる」という意見があったけど、本当にそう思う。この時期の苦難を、本当によくここまで音に出来たなあと。感謝、感謝。

ライブの『水の中のナイフ』。第一期のライブ。緊張感と破綻。
こんな可愛らしいひとが、よくこれだけのもんを作ったもんだと。立ち姿が格好良いのが羨ましい。

アコースティックな『SKIRT』。単純に、単純なコードで「良い歌」を作ることが出来るのが木下の強み。
サビの節回しやフレーズは本当に良く出来ているなあと。
http://www.youtube.com/watch?v=e2RaZF4YXPs&feature=related
埋め込み無効だったのでアドレスだけ。ライブ『プールサイド』。
サウンドの透明感。轟音でも透き通っているような。
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コメント

  1. たかぼー | URL | -

    「Love/Hate」は2期になった後に聴きだしたんですけど
    ギターの音が血の臭いがしてて良いですね。
    今まで聴かなかったのが今でも後悔してます 笑。

    今思うと2003年は良作が多かった気がする。
    この作品とシロップの「HELL-SHE」、Mewの「フレンジャーズ」、デスキャブのカラス・・・。
    ホワイトストライプスの「エレファント」、MUSEの「アブソリューション」もこの年でしたね。

    あと酷いバンド(青春パンクとか言うブルーハーツ、ハイスタの2番煎じ等)が出ては消えてたりしましたね

  2. よしとも | URL | -

    この時期はサウンドが歌詞に引っ張られてる感じがして、それがいいですよね。

    2003年といえば、確かスヌーザーがディスクガイドをこの年に出していて、2003年のアルバムを幾つか取り上げて関連する作品について言及するっていうのをやってましたが、やはりそこに挙げられた2003年作品も良いものが多かったので、やはり当たり年だったのかもしれません。

    青春パンクとかそういう攻撃対象がいた頃の方が、その裏側でオルタナ系のバンドが頑張っていた気はしますね。アジカン的な中庸さ(アジカン自体は好きなのですが)がシーンを席巻してからの邦楽は、どうも刺激性がちょっと不足しているような(その中でも志村はかなりいい線行ってたのに……)。

  3. makiron201 | URL | -

    ネットである曲の探し物のしていてこの記事まで辿りつきました。過去のブログに今更のコメント汚し、すみません。はじめまして。
    この「LOVE/HATE」を発表した2003年のArt-schoolの木下氏は、よしともさんが書いたようにまさに「青春パンク」に対してのカウンターカルチャーのようなアルバムだとテレビや雑誌等、よく発言していたのを記憶しています。

    前作でも確かスヌーザーのインタビューでもよく言ってた気が笑

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