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『HIGHVISION』 SUPERCAR

2009年10月06日 14:33

HIGHVISIONHIGHVISION
(2002/04/24)
スーパーカー

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1. STARLINE
意外と鈍目の打ち込みイントロからギター、そしてシンセが入ってくると一気に浮遊感が増す。更に弦楽隊が入って歌も一音一音をやたら伸ばすので、曲全体が悠然と舞い上がっていく。終盤のリフレインでは壁のような歪んだギターが後ろで鳴り、ポストマイブラな雰囲気も。そして歌が終わると同時に曲もあっけなく崩壊して、終わってしまう。歌詞カードに記された二行の歌詞は遂に主語を失い、超然的な愛のメッセージ、もしくは体のいい語呂合わせ(深読みしてくれたら儲けもんっていう)と化し、ここにもう初期の憎たらしい「世代」アピールのスーパーカーはいないことを示す。

2. WARNING BELL
ふにゃーんとしたフレーズのフェードインからアコギが流れて、そして様々な伸びる電子音が入っていく、そのまま淡々と浮遊感を維持したまま進行し、それほど高揚することも無く収束する不思議な曲。アルバム中で一番レディへっぽいか、タイトルもアレだし。「ポン、ポン」と鳴る効果音が可愛くて好きだけど、曲自体は曖昧さと煌めきだけがずっと続いていくようで、未来空間に突入したような雰囲気を撒き散らしたまま終わる。バンドっぽい要素は皆無で、「こんな曲どうやってライブでやるんだろう?」と思ってたら、ラストライブでは幻想的なアルペジオと美しいツインコーラスが軸のアレンジで演奏されていた。実はそのバージョンの方が好きだったりして。

3. STORYWRITER
ジュンジ曰く「こういうのが一曲くらいあった方がいいかなと思って」な曲。ぼんやりした霧のようなSEから断続的にリズムが入って、ちょっと演奏が入ったかと思ったら細切れになり、そして一気に疾走する爽快な轟音に突入。ごめんやっぱり気持ちいいです。ただコードを半音ずつ下げていくだけの曲にとても高揚感のあるメロディーが乗っている。未来的なメインリフの煌めき具合、各種エフェクトもこの曲の雰囲気をキラキラ輝かせるべくうねり、そしてメロディの終わりのナカコーの伸びる裏声が突き抜けて美しい。理想的なポストシューゲイザーソング。タイトルや歌詞から、ジュンジの面目躍如といった雰囲気も感じる。どうやって気持ちのいい語感を作りながら上手いこと言ってやろうかニヤニヤしていそうで。何より、アルバム中で最も元気な姿を見せて跳ねるドラムが聴いてて妙な憂鬱を感じさせないところが凄く良い。アルバム中随一の「安心して気持ちよくなれるポイント」。バンドしてるからね。

4. AOHARU YOUTH
不思議な反復メロディと変則的なリズムの反復にエコーの聞いたボーカルがぼんやりと絡む、期待感を溜めさせる曲調。そしてタイトルフレーズの連呼の後ゆっくりと膨れ上がり、そして一気に弾ける。黄金の海原の上を舞うような、神々しく伸びるボーカルライン。幾重にも重なった声がうねるシーケンサーとともに一気に伸び上がっていくのは凄くキラキラしていてしかし虚無的で美しい。「果てには」という言葉が意図するところのサウンドが、まさにそのままそっくり鳴っているような感じ。意思を越えた、忘却の彼方みたいな雰囲気の曲。

5. OTOGI NATION
びにょんとした音で始まる、淡々としたリズムと淡々としたギターで進行し、サビでそのままのリズムで歪んだギターと反復するフレーズを投げかける曲。同じメロディの繰り返しを避け新しいメロディを出して来るところが意外、それでもリズムは一定なので変な安定感と平熱感がある。そして男女混成のタイトルコールの無表情具合、完全に音と化しているようで虚しくも美しい感じで良い。ギターの歪みもキメが細かく、まるで砂嵐のよう。ずっと同じ音を鳴らし続けリズム化したシンセが地味に特徴的。

6. STROBOLIGHTS
結局この曲がSUPERCARのひとつの到達点であることは確かだろうシングル曲。アルバムバージョンで追加された壮大さを喚起させる穏やかなイントロから後ろで弦を鳴らしながらも、あのピコピコした反復フレーズが迫り、そしてフルカワミキの、熱も意味も全く失ったボーカルが反復する呪文のようなフレーズで寒気がする。ギターはどこにも見当たらず、ただひたすら非現実的な、やたら煌めく幻想的な世界が広がっていく。心地良く鳴り響く歌は超越的な愛を歌っているような、限りなく無意味なような。ともかく全てを「愛」という言葉のイメージに託して心を空っぽにして浮遊しているような感じ。前半の反復と後半の反復も強烈な対比になっていて、単調な曲なのにどこかスリリングでさえある。均一なビートに声が重なっていく終盤、特にナカコーの声が重なった瞬間凄くドキリとする。そして終点に到着してはエコーとなった声のフェードアウトと残った小さなリズムが妙なあっけなさをもって余韻を作りだす。うーん、悔しいほどに完璧。SUPERCARのある意味薄っぺらいようなある意味深遠なような、そういうスタンスを端的に表現している。

7. I
遂に声まで妙なエフェクトが掛かり、バンドとしてのSUPERCARだった要素は完全に消滅。打ち込みのリズムに出たり入ったりするシーケンサー、振動のような反復フレーズ、エイフェックスとかその辺りっぽい可愛らしさと幻想具合。途中でこっそりと隠し味的にギターのアルペジオが入って来るのが不思議。そして普通の声コーラスとアコギが入ってから急に曲の輪郭がはっきりと浮かび上がってくる。最後一分くらいかけて余韻。煌めかしい穏やかな音の中に全て消えていくような寂しさ。

8. YUMEGIWA LAST BOY
『STROBOLIGHTS』と並んで代表曲だろう。しかしこれまでの穏やかキラキラ感とは少し趣を異にしていて、こちらはどこか緊張感に満ちた、そしてリズムの強いものになっている。前半の漆黒の曖昧調からリズムが入って一気に盛り上がる、アルバム中で最もダンサブルなナンバー。シリアスなシーケンサーとやっぱりぷにゃぷにゃ鳴っている可愛らしいフレーズの対比が良い。そして何よりもミキのコーラスが入って以降の後半の繰り返しが聴き所。二種類のミキの声をバックに単調にクールに歌うナカコーの歌がしかし何故か非常に良い。やはりどんなにサウンドが充実しても歌があると何かこう、そういう効果が生まれるんだなというものを強く感じる。

9. NIJIIRO DARKNESS
コントラバスによる導入が重々しく、それに乗るナカコーの声もエコーが深くて怪しい。緊張感を保ったまま進行し、加工されまくったミキの声を舞い上げながら不敵にナカコーが囁く。アルバム終盤らしい重々しさのある、なんか破滅的な曲。神経質なリズムと穏やかな弦の対比がそう思わせるのか。途中から入ってくる左右の無茶苦茶なリズムとか、そもそもの不穏な主旋律とか、なんとなく次作を予感させる壮大な緊張具合。弦の余韻を引きずったアウトロもなんとも怪しくも切ないし。

10. SILENT YARITORI
泡のように沸き出すモコモコした音に包まれて始まる、アルバムの最後に相応しい穏やかで優しい曲。男女ボーカルで曖昧に始まったところから、硬めのリズムが侵入して一気に曲がロールし始める。タイトルコールのナカコーとコラースのミキの対比が淡く美しい。一旦ブレイクを挟んでまたリズムが入って以降はまさにアルバムのエンドロールといった趣。フルカワミキ自体のポテンシャルは正直それほど高いとは思えないのに、本当になんでこうまで強い包容力と幻惑性を有してしまっているのだろう。最終的にはリズムが引っ込む代わりにどんどんコーラスは分厚くなり、その穏やかな高まりがピークを迎え、そして穏やかに消えていく。歌詞カードのみに書かれている歌われていないフレーズがジュンジの「どや!いいシメやろ?」感を醸し出していてちょっと鼻につくこと(笑)を除けば、まさに完璧なアルバムの終わらせ方だと思う。完璧すぎてちょっと息苦しくもあるけれど、でもとりあえずSUPERCARはこれでひとつ極端をやり通した。


SUPERCARの(もうこの辺まで来ると片仮名でスーパーカーって感じじゃないな)2002年発表の4thアルバム。四枚目にして遂に行くところまで行ってしまった感がある。このアルバムと同じ方向で更に良いものを作ろうとしたらそれは一応のバンド性をも放棄せざるを得ず、レディオヘッドが『KID A 2』を作らなかったように、彼等もこの後バンドサウンドに回帰し、ニューウェーブな感触の強いアルバムを一枚残してあっけなく散った。まあそのあっけなさも含めてSUPERCARなんだろうけど。

益子樹をプロデューサーに迎えた本作、アマゾンの商品説明には「ギター・バンドとしての面影がほとんどなくなった今でもその本質はデビュー時と違えていない」と書かれているが筆者にはそうは思えない。彼等は間違いなく変質した。スノッブさの質が違う。「生意気で無関心な僕らの世代」を歌うスーパーカーはもうここには存在していない。ここにあるのは、ひたすら本質的な愛を追求しているのか、それともただの語呂合わせのついでにそれっぽい言葉を唱えているだけか、そんな歌の数々。「生意気で無関心」から「虚無的で美学信仰的」に大きく変化した。ある意味過剰とも言える音の装飾は徹底的に積極的な意思を埋没させ、ひたすら曖昧然とした美しさを引き出すために機能する。

仮に彼等が「KID Aフォローワー」の一組だったとしても、彼等はかなり意志薄弱的であるという意味でレディへとは大きく異なっていると言える。彼等のスノッブさは遂にひとつの虚無的な「果て」に到達してしまった感じがある。こうなってしまったバンドが長続きするのは確かにかえって不自然ではあるし、解散は仕方が無かったのかもしれないと思える。しかしこのアルバムにはそういう、バンドの維持などを全く考慮に入れないことにより生み出されたひとつの掛け替えのない美学がある。それは他者が簡単には真似出来ない、「この時期の彼等だけの」特別なものであるように思える。つまり、このアルバムのフォローワーはそういう原理的に、よほど身投げをしない限りは決してこのアルバムの目指した精神的方向性において、このアルバムには勝てないと筆者は思うのですがどうか。

ラストライブの『WARNING BELL』。アレンジ的には『ANSWER』的であるがそれにしても良いなあ。センスの大勝利って感じ。緊張感に満ちている。『HIGHVISION』の欠点を挙げるとすれば、サウンドの構造的にこの動画のような緊張感が生まれ得ないところか。だからこそその補完の意味合いも込めて彼等はもう一枚アルバムを作らなければならなかったというか、ねえ。
先に書いた『THE WORLD IS MINE』のレビューでも書いたように、2002年は特に「97年世代」がある程度行くところまで行ってしまった感じのある年だったように思えてしまう。それはくるりのあのアルバムがあって、ナンバガの『NUM-HEAVYMETALLIC』があり、そしてSUPERCARのこのアルバムがあるからに他ならない(中村一義はむしろこの年安定し始めたもんなあ。どん詰まりから抜け出した印象がある)。そういえばGRAPEVINEの一番虚無的なアルバム『another sky』もこの年だったな。こりゃあ偶然か、ただのこじつけか。ともかく、外見上はひとつの大きな転機に見えても仕方が無いと思う年だったと思う。

くるりが果てまで行き着いた若者のどうしようもなさを歌っているとき、SUPERCARは意思を半ば失ってただ愛、愛、と繰り返し呟いていたっていうのがなんとも。同じ虚無っぽさでもくるりとSUPERCARはその質が大きく違うし、この違いこそがこれら二者を対比する時の面白さだと筆者は思う。で、同じ時期にナンバガもナンバガで「季節と季節の間に 恋をする少女だった時もあった」なんていうやるせなさを、冷凍都市に呑まれた最後の最後に放つ訳で、色んな「行き着いてしまった」虚無感があるんだなあと。97年世代の「世代集団」としての到達点は虚無だったのかなあと。ますます中村一義には関係の薄い話だなあ(笑)彼の場合むしろ圧倒的な虚無・絶望から始まってるしなあ。


このアルバム以降のSUPERCARのスタンスというのは真似出来るもんなのだろうか。解散インタビューでジュンジがぶちまけていたように、ここら辺まで来るとSUPERCARは、外見は妙につるっとしていて、そのくせ内訳はかなりギリギリのところで有機性を保っていたところが少しグロテスクですらある。しかしとりあえずはその不健全状態がこのようなギリギリの素晴らしさを有した作品を作り上げた訳で、ファンとしてはそりゃあバンド解散は悲しいし酷いバンドの内実も悲しくはあるけれど、作品や彼等自身のスタンスを考えれば、確かにそれもしょうがない、むしろそうでなければこのような美しさを有することは出来なかったように思える。ああ、そういう意味では彼等は表現の為の犠牲者であろうし、「老いて平和なんて望んでないんだった」を地で行ってしまった感じがある。

表現者としてのナカコーやそれについていったミキはいい。悲惨なのはインタビューで散々不満をぶちまけたジュンジと、そして翻弄され続けたコーダイだよなあ。ジュンジはまだ曲芸的に食って行くことが出来るけど、コーダイは……。ああ、バンドスタンス的に絶対再結成出来ないしなあ。こういうむごたらしさも含めて「SUPERCAR」という物語だったのかなあと。なかなかに酷い話だけど、でもそれは確かに美しかったし、今での一定の価値がある。彼等の身を削るような活動を忘れてはならないし、何より残した作品が忘れさせてくれないだろうと思う。「全ての表現者は表現の為なら己の身を省みることを放棄すべき」と断言までは出来ないが、でも強くそう思わせるものがSUPERCARにはあると思うのです。


コメント

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  2. よしとも | URL | -

    言葉もありません。謙虚に精進します。

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