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『Abbey Road』 The Beatles

2008年12月14日 21:42

一個前の日記でビートルズに触れたので、その勢いでレビュー再開。
Abbey RoadAbbey Road
(1991/07/20)
The Beatles

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1. Come Together
ラストアルバムの一曲目としては何とも不穏なこの曲でこのアルバムは始まる。実はビートルズが最強のリズム隊を有していたことを高々に宣言する名演。やたら分離のいい録音が豊穣な音の隙間を作り、そこをリンゴとポールが妙技といった趣で絡む。そして細く鋭いジョンの声とジョージのギターが空間を裂く。バンドとしての一体感がここに来て強調される。自分を含むメンバーを散々揶揄しながら「さあ一緒にやろうぜ」と歌うジョン。その声はホワイトアルバムから続いた吹っ切れ状態を維持したまま、ギリギリまで鋭くなっている(この後にプライマルスクリーム療法が必要なくらいに)。曲そのものもいいがそれよりも、その絶妙の緊張感をたっぷり楽しめるタイプの曲。この緊張感は後のジョンによるセルフカバーでも再現できていない貴重なものだ。
2. Something
前曲の緊張感から急に雰囲気が緩む。このアルバムにてジョージの逃避的傾向が二つの美しい曲に昇華されるが、その片割れがこれ。何かを諦めたが故の穏やかで繊細なメロディのなんとも弱々しいこと。そこから少しばかり高揚するも(しかしなんと見事な高揚感だろう)、歌っていることは「I don't konw, I don't know」。そして透明な色気に満ちたギターソロの後、また穏やかに収束していく様は、ソロ以降のジョージ節の完成の過程でもある。そして、やはり最後までジョージ曲でやたら頑張るポール。この曲におけるベースラインはこのような曲におけるベースの一つの極北であろう。ジョージから嫌がられるほどに饒舌なベース。ギリギリのところで曲もギターも邪魔しない。素晴らしい音のバランス。
3. Maxwell's Silver Hammer
ポールの割としょうもないコミカルナンバー。このアルバムにおいてポールはビートルズの「ユーモアとコミカルさ」をえらく大事にしているようだが、この曲も曲調はそんなどこか間抜けな感じ。でも歌詞は連続殺人鬼の歌。いかにも後期ビートルズの平均点って感じの曲。流石にこれをシングルにしようとしたポールはどうかと思うが。
4. Oh! Darling
前曲がしょうもないのに対し、こっちは割と本気な真摯な気持ちを歌う。去ってしまった人を求める、ソウルフルな歌。ブリッジへの移行の盛り上げ方がいかにもポールっぽい。シンプルなピアノとささくれたギターの不思議な絡みがキモ。ポールの歌も精一杯頑張っていて暑苦しいが、この曲はそれがそんなに気にならない。
5. Octopus's Garden
リンゴのビートルズにおける自作曲第二弾にして最後の曲。しかし、一曲目の『Don't Pass Me By』よりもこちらの方が遥かに完成度が高い。『Yellow Submarine』のイメージを念頭に置いたコミカルな作りなんだろうが、ピアノの入りやコーラスの入れ方、そして何よりこのアルバム中で最も可愛らしいジョージのギターが、リンゴが持ってきたコミカルで、ちょっといじけた感じのイメージを大切にパッケージングしている。冷えきってしまったバンドの曲が続く中で、少しだけぬくもりを感じることが出来る曲。
6. I Want You (She's So Heavy)
この曲も一曲目と同じく、『White Album』の緊張感を引き継いだような、非常に重厚なジョンナンバー。前半の濃厚なブルース、後半に行くにつれてテンポチェンジやノイズコラージュによって楽曲は引き裂かれまくるが、そんな中全編を通してヨーコへの愛とその重さを歌うジョン。そしてそのある種退屈な決定的破綻を強制終了させるカットアウト。ジョージを筆頭に穏やかさとある種の予定調和に満ちたこのアルバムにおいて、ジョンは極端なまでに緊張感を供給、結果アルバムのバランスを整えることに成功している。
7. Here Comes the Sun
私はジョージ最高傑作にはこちらを推す。ビートルズ全楽曲中でも最高に繊細で暖かく、そして何故か悲しく感じる曲。太陽の温もり、その尊さ、それだけを表すためにビートルズ史上最高のアレンジが施されている。乾いた優しさに満ちたアコギに、さらに優しいシンセと、そして淡い詩情だけしか残っていないジョージの歌が寄り添う。そして淡々と進む楽曲に一度だけ訪れるブレイクスルー。不思議な拍子とシンプルで美しいリフレイン、少しずつ厚みを増して高揚するシンセによって「少しだけ」浮かび上がり、そしてまた優しさの中に消えていく。最小の展開で最大限のメロディを引き出している。そして何より「It's alright!」とささやくジョージの声のなんと細く弱く、そして優しく悲しいことか。牧歌的世界観から世界の果てに通じるような、そんな美しさと空虚さを持った最強の楽曲。
8. Because
ジョンが『月光』にインスパイアされて出来た曲。クラシカルなマイナー調のメロディをフロントマン三人のコーラスが美しく流れる。シンセの間奏が微妙にいかがわしいが、それが却って無機質さを出していて良い。この後の圧倒的な流れの前に置くには最適な小曲。
9. You Never Give Me Your Money
この曲からこのアルバムの目玉「B面メドレー」が始まる訳だが、この曲自体がなんかまるでメドレーみたいに次々に曲調が変化する。ピアノに導かれたマイナー調の曲かと思えば、急にコミカルでブリティッシュな感じに展開し、間奏を経てどんどん上昇し、そしてゆっくり降りていくエンディングを迎える。ポップながらなかなか夢の無い歌詞が良い。
「行く当てはなくとも甘い夢だけはあるぜ / バッグ持ってリムジンに乗り込んで
 もうすぐこことはオサラバさ(中略)今となってはもうお前(リンダ?)しかいない」
ポールさん絶好調。
10. Sun King
前曲の虫の音から続けてこの曲へ。まったりとした、輪郭の薄い曲で、後のヨラテンゴとかそんな感じ的サイケ感とアンニュイさに溢れる。なんとなく無常観も感じられる。何もすること無い夏休み……。スペイン語かなんかで呟いて、スネアが入って次へ移行。
11. Mean Mr. Mustard
ジョン作の、特に見所のないクズ曲。しかし、その何とも言いがたいどっしり加減が次の暴走気味なノリへの助走として見事に機能、鎮静と暴走のつなぎとしての役割を見事に完遂。
12. Polythene Pam
これ、最早曲になってるかどうかも怪しいが、しかしこの展開で聴くと非常にかっこいい。訳の分からないガムシャラ感、むちゃくちゃな感じでいて意外と安定しているドラム、疾走するアコギ、突っ掛かったりしながら進むギターソロ、そしてその勢いが上昇して……。
13. She Came in Through the Bathroom Window
この曲に収束。タイトかつシンプルなロックンロール。さっきの疾走から一気に横ノリに移行するスリル感が良い。そしてそんなビートを強烈にブーストするポールのベース。ここでメドレー前半は終了。
14. Golden Slumbers
メドレー後半はポールとジョージ・マーティンによる、まさに「意地でも感動させてやる」という気持ちの結晶。まず穏やかな童謡からマッチョなボーカルで盛り上げの第一段階。そしてまた穏やかな曲調に戻り、ストリングスが入って、そしてスネアが入って……。
15. Carry That Weight
大合唱(実はポールによる多重録音らしいが)。「重みを背負っていかなきゃならないよ」。再び登場する『You Never~』のフレーズ。やはり精一杯頑張るベース。舞い上がるストリングス、そして……。
16. End
やっぱり最後までコミカルにおどけて見せるビートルズ、というかポール。貴重なドラムソロのあとに三人のギタリストがギターバトルと言うには大人しいが個性あるプレイで盛り上げ(というかジョン適当すぎだろでもオルタナな感じでかっこいい)、そしてエンディングへ。
「結局、きみが持っていく愛はきみが作る愛と同じさ」
最後まできっちりビートルズという仕事をこなすポールに敬礼。
17. Her Majesty
で、数秒開けた後にこの僅か23秒の小曲で締め。要するにおまけ的な。しかもその内容が「イギリス女王を口説いてみせるさ」といったブリティッシュジョークだというのがまたなんとも。この辺り本当にポールはビートルズがどういうキャラであるべきか完璧に把握していたようだ。

ビートルズ、堂々の(本当は超苦し紛れの)完結、のはずだったアルバム。様々な思惑やその対立が解散寸前まで高まっていたにも関わらず、なんとかして形を成し、それがその努力もあって大変素晴らしかったという、バンドヒストリー的にとても美しい経緯を持つアルバム。

そんな経緯があるからか、このアルバムはビートルズの全アルバムの中でもとりわけ深読みされることが多い、要はみんなこれについて色々蘊蓄を語ったり邪推したくなるようなアルバムであるらしい。ジャケットだけでも、歩いていくメンバーの向きからポールの裸足や車のナンバーにおけるポール死亡説まで、その語られっぷりは枚挙に暇が無い。まあ世界的にも超絶に有名なジャケットでもあるし、私もこれは非常に素晴らしいと思う。深読みしたくなる情報が、しかし非常に整然と一枚の絵に収まっている。

曲的には、前半と後半(いわゆるAsideとBside)に分けて考察されることが一般的である。前半はまるでホワイトアルバムを良くも悪くも昇華したような、それぞれのメンバーの個性が煌めく名曲が連発されちょっとしたお祭り状態になっている。しかし、そのどれもがあまりに「完全」すぎるアレンジであることが、これらの曲の、このバンドにおける続きが無いことを予感させる。
そして後半は、というか『You Never Give Me Your Money』からの一連の流れは、まさにポールとジョージ・マーティンの「ビートルズとしての」意地の結晶である。何のことは無い。一曲一曲をアンソロジーでバラバラに聴くと、何ともたわいもない曲が並んでいたりするが、それをもアルバム作りに使わざるを得なかった二人が編み出した最後の、必殺のアイディアがこのメドレーなのだ。多少商品的に作り込まれ過ぎであろうと、お涙頂戴的であろうと、この執念の閃きの前ではそんな批判意味ない。まあこの箇所はその日の状況で聴きたい時と聴けない時があるけど。

私はこのアルバムについてのレビューをそれこそ100か200は読んだ。アマゾンには私情をひけらかす想い出おじさんや、後の「大人化」していく70'sロックの文脈で語ろうとする語り部や、ひたすら「ビートルズは最後まで凄かった」とべた褒めしかしない人や、「むしろポールウゼえよなあ」と言うアンチポールや、「これぞロックの最終地点」と排他的評価を下してしまう批評家などなど、非常に多くの人、それも幅広い層の人々がこのアルバムについて語りたがってる(『Revolver』とかはもっと偏ってるイメージ)。そんな私があえてここで個人的なこのアルバムの感想を書くとすれば以下のようになる。

「『あまりに出来過ぎな大作』の重みがあるから気楽には聴けないが、聴くたびに楽曲やアレンジの満足感と、前進することが出来なくなってしまったバンドの世界の果てでの寂しさとを強く感じる、冬から春にかけて聴きたいアルバム。」

要するに、総てはジョージのなんとも頼りのない「It's alright!」の中に消えていくんです。

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