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『Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band』The Beatles

2008年07月14日 19:33

Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club BandSgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
(1990/10/25)
The Beatles

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1.Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band
アルバムコンセプト「架空のバンドがどこかの広場でライブをしている」に則った、楽しげなポップロック。観客のざわめき・大ウケ・驚きなどの声が「非常にわざとらしく」挿入され、所々入るホーンもなんだか大袈裟でユニーク。しかし曲自体はファニーなポップさをたたえながらも以外にどっしりと展開する。ポールのソウルフルなシャウトよりもジョンのゆるゆるな歌の方が印象的なのは僕がジョンびいきだから?ギターの音も以外とハードだったりで、なかなか充実した一曲目。最後に次の曲の主役を紹介してそのまま次の曲に繋がっていく。
2.With A Little Help From My Friends
前曲で紹介された『ビリー・シアーズ』の役をリンゴが演じて歌う、可愛らしいポップソング。「友達が助けてくれる」という歌詞の後本当にコーラスが入ってフラフラな歌を「助けて」くれるのがなんとも微笑ましい。何気によく動くベースや最後のいかにも「ビートルズ」ってイメージな終わり方がツボを抑えていて良い。
3.Lucy In The Sky With Diamonds
明るかった冒頭2曲からこの曲に移ると、急になんだか不思議な、ちょっと怖い童話の世界に迷い込んだ気分になる。ジョンのサイケデリックものがたりって感じの曲。テープスピードを早めたりでジョンの声を高くしたり、ジョンの声が遠くから聞こえたかと思ったら急に接近してきたり、オルガンを録ったテープを逆回転させてみたりインドしてみたり。色々な工夫が憎い。そして強引にして爽快なコーラスの転調がいい。不思議な感じのヴァースから歌もベースラインもポップに上昇していく。まあ、もろドラッグって感じの曲ですが。
4.Getting Better
再びポール色全開の陽性ポップへ。ずっと同じ音を刻むギターが曲を特徴づける。コーラスはいかにもビートルズって感じだが、その陽性なポップさの合間に、前曲に引き続きインドな楽器タンブーラを導入して、変な浮遊感を挿入することは忘れない。曲自体はまあ普通なポールポップなのに、細かいアレンジが利いていて面白い。最後のコーラスで入ってくる神経質なピアノとかボンゴとか。
5.Fixing A Hole
前曲に引き続き、ポールのポップソング。ハープシコード主体のだるいポップソング。しかしポールポップの悪いところというか、緊張感に欠ける感じがする。捻った、というか、捻り出した感じのするメロディがこの曲を中途半端にしてしまってる。まあこのだるさをサイケといえないことも無いが。
6.She's Leaving Home
ストリングス主体のポール作品。『Yesterday』や『Eleanor Rigby』と同系統の曲だが、この曲のストリングスはジョージ・マーティンの仕事ではない。あくまで室内楽的なジョージ・マーティンのストリングスに比べこっちはもっとオーソドックスというか、ディズニーのサウンドトラックとかに入ってそうな感じ。その辺のせいかそれとも元のソングライティングの時点からか、ポールにしては珍しくビートルズらしさがやや希薄な曲。例によってビートルズのメンバーは楽器を演奏していない。
7.Being For The Benefit Of Mr. Kite!
またいかがわしい雰囲気が漂ってくる。今作のジョンの大事な役割。これはサーカスをモチーフにした、大変いかがわしいポップソング。いきなりどんくさい感じのする音から入り、加工されたジョンの声がふらふらしたメロディを歌う。そして突然の変調からはまさに訳分からんSEの嵐。作った工程を知ると「えっ、そんなんでこんな音作れるん?」って気持ちになる。恐るべしこの時代のエンジニア。で、また歌に戻ったかと思ったらそっから今度はするりとSE地獄に向かい、そのまま訳の分からないSEが舞い上がってお終い。なんじゃこりゃ。やはりドラッグか。
8.Within You Without You
ジョージのインドソングの一番長いやつ。なんと5分もある。B面の一曲目がこれというのは、普通売れ線の曲を一発目に持って来るはずの当時のレコード状況に真っ向から挑戦しているというか。民族音楽丸出しなリズム・伴奏に、やはり地に足の着いていないジョージのメロディが乗る。怪しく各楽器がうごめく感想を経て一回タンブーラの音が収束し、「終わるか?」と思ったらまた始まる。うーん長いかな。そしてメロディがかなりポップじゃないため、ポップソングとしての機能性はかなり低い。実験性は評価できるけど、まあしんどい曲か。
9.When I'm Sixty-Four
前曲の狂気っぽい宗教臭から急にのんびりしたこの歌が始まる。ポールがずっと昔から温めていた曲。牧羊的なムードが前曲から受けた混乱を取り払ってくれる。しっかし本当にのんびりしている。クラリネットやら可愛いピアノやら、小粋な感じが漂う。でもしっかりちょっとした不安とオチをもたらすミドル部分のメロディは流石。ただ、何となくこの曲は次のアルバムに収録してほしかった気もする。そっちの方がこの曲が際立ちそう。
10.Lovely Rita
再びポールの陽性ポップ。いやーしかしこれはおバカだなあ。食傷気味のポール式ポップでもここまで下らなく楽しげだとなんだか気持ちいい。間奏のピアノはもうかなりオシャレ。いかにも60’sって感じ。ひねくれているくせに適度に伸びを持ったメロディも楽しいし、それに上手く乗っかるコーラスも心地よい。そしてアウトロのおバカで変態チックな声のダビングがかなり笑える。歌詞の内容もポールにしてはやたらと下らなくて良い。このアルバムの「なんか無駄にごっちゃりしているのにオシャレな感じ」を一番体現しているかもしれない。
11.Good Morning Good Morning
ジョン曲だけどこれは割と陽性な感じ。でもやっぱり随所で変な部分が見受けられる。まず訳の分からない拍子の頻繁な変化と、それが以外と意識しなければ気にならないこと。そして冗談みたいに鳴らされるホーン。アウトロでは数々の動物の鳴き声が響くが、これはだんだんと強い動物になって行って笑える。最後は小鳥の声からタイトに次の曲に入る。なんか楽しげだが、凄く空っぽな感じがする楽曲。
12.Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band (Reprise)
アルバムのコンセプト「架空のライブ」の終わり、そして最後のアンコール曲へと繋がっていく、一曲目のリプライズ。スケジュールの関係で一曲目よりもタイトな録音になっているが、それが功を奏してシンプルに良いギターフレーズが響き渡る。そしてショーは終わり、「客」の拍手と歓声に導かれて、最後に一曲アンコールへ。世界最強のアンコール……。
13.A Day In The Life
最強。その尺の長さに見合った不安定で荘厳で大げさな展開といい、ふらふらと繊細な視点でメロディを紡ぎ、突然それを持ちあげるジョンと、お洒落なポールのミニポップスを強引かつ強烈に繋ぎ合わせる、無駄に大袈裟で怖いストリングスの妙。そしてまたふらふらしたジョンに戻って、また迫りくるストリングスの壁、そして感動のクライマックスへ。
まず、ジョンのパートだが、ジョンの歌が非常に良い。別に叫びもしないし、ただ淡々と歌っているのだけど、その弱々しさ・視点の合ってなさがうすら寒いのに、妙に透き通った声をしている。適度なリバーブ感がここでのジョンを常に所在の無い感じにしている。そして、そんな不安定な音像の下で、小気味よく転がっていくドラムがかなり素敵だ。リンゴらしいちょっと変なフィルインを多用し、浮遊感とドライブ感の両立を見事にこなす。アコギとピアノの絡みもなんだか切ないような儚いような危ないような、不思議な「所在の無さ」を表現する。そして弱々しく舞い上がったジョンの歌がストリングスの侵略の中に消えていく。
続くポールのパート。それまでのジョンが夢の中であったかのように目覚まし時計が鳴り響き(これは本当に偶然らしい。偶然すら味方につけるなんて)、しゃきしゃきしたリズムの中をこじゃれたピアノとこじゃれたボーカルが転がって、朝の光景を歌う。なのに、それは突如舞い上がり、足は地から離れ、またジョンの「夢見心地」な世界に落ちていく。
そしてふらふら舞い上がるジョンの歌がまた、さっきよりも強烈なストリングスの波にかき消される。遠くで謎のカウントが聞こえ、ドラムはずっと忙しく転がり回り、そして限界までストリングスが高揚して……弾ける。
まず、二つのパートを組み合わせようと思ったことが凄く、そしてその強引な接合にストーリーをもたらす発想が恐ろしい。そして、こういう大げさな実験でもちゃんとポップに聞こえる歌を書いている二人が上手く合わさっている。この後ジョンとポールが仲違していくことを考えると、少し切なくなる。アイデアの海にのみ込まれて疲弊しまくったビートルズが精一杯頑張って作り上げた、世界最高の空虚な夢またはハリボテ。そんな曲。


サイケ時代の本格的な到来を告げる、ビートルズ八枚目のアルバム。ジャケットやら何やらを統一して「コンセプトアルバム」として打ち出したが、曲自体はそのコンセプトの曲二曲で、他の特にコンセプトの無い曲を挟みこんで辻褄合わせて、強引に後付けでコンセプト化したような感じはする。もちろん当時は「コンセプトアルバムである」という発想自体が大胆なものではあったが。
前作『Revolver』同様に様々な楽器を駆使し、実験的なサウンドを作り出したこのアルバムだが、善作との大きな違いは、こっちの方が「脳内お花畑全開!」な感じであること。『Revolver』は妙に乾ききった場所でニヒルにユーモアを発揮している印象だが、こっちは音の遊園地とばかりに、楽しげに、楽しげに音が配置されている。それは、このアルバムがポール主体でつくられたことに起因する。
しかしポールの曲自体は、そんなにサイケでもないし不思議な感じの少ない、普通のポップソングだった。ジョンや初期ピンクフロイドなんかのサイケ曲と比べたら圧倒的に幸せ感全開である。……これこそが、このアルバムが『60’sサイケ』のタームにすっかりのみ込まれ、今日ではその価値を下げてしまった要因である。
っていうか、そもそものソングライティングのレベルが、前作よりも低下している。細かい部分で気の利いたメロディはつけられても、キャッチーな大味さが薄れてしまっている。これはポールに限らず、この時期サイケデリックにのめり込み過ぎてスランプに陥っていたとされるジョンにも当てはまる。ジョンの場合、「どうやって奇を衒うか」が優先され、その結果ソングライティング面での後退が発生してしまっている。
そして、一番残念なのは、ある意味一番サイケでアシッドだったジョージ(ハリスンの方)のこのアルバムにおける冷遇である。無駄打ちし過ぎたポールのポップソングよりも優れた『Only A Northern Song』や『It's All Too Much』(これはもうちょっと時期はあとか?ビートルズサイケの最高峰の一つなのに)がこのアルバムに収録されていれば、アルバムの評価は現在でもそう低くはなっていなかったかもしれない。シングルになったせいで『Strawberry Fields Forever』や『Penny Lane』といった名曲がアルバムから外されたのも痛い。
また全体を包む「お花畑ポップ」な感覚のせいで、サウンドの緊張感が薄いのも弱点。ジョンのいくつかの曲と『A Day In The Life』がその点では頑張ってはいるが。
このように、最近では著しく評価が下がり続けている「時代の名盤」ではあるが、それでも色々と見るべきところがあることに変わりは無いし、そして何よりもこのアルバムは『A Day In The Life』が収録されているだけで十分な価値がある。歴史的・史料的側面を排除しても十分に視聴に堪えうる作品であることは間違いない。
あと、ブックレットのサイケなメンバーのコスプレはなんか微笑ましい。訳の分からんジャケットもいい。でもこれ、外じゃなくて普通にどこかのスタジオで青シート使って撮ってるんだよな。そう考えるとなんか侘しい。

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