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『Revolver』The Beatles

2008年07月14日 03:40

ながらくやってなかったですが、全曲レビュー再開します。
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(1990/10/25)
The Beatles

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1.Taxman
ジョージ曲が一曲目という、異色中の異色。しかも曲自体もこれ以前のジョージポップとも、後の穏やかポップでもなく、またサイケというには余りにソリッドで、ロックンロールというには余りに曲の温度が低い。鋭いギターの音、後に色々と引用されることの多い印象的なベースライン、タイトでシャープなドラム、この三つが非常に尖った「リズム」を形成し、その上にジョンとはまた違ったジョージのクールさが光るボーカルと、ひねくれたコーラスが乗っかる。そして間奏でそんなクールさを蹂躙するかのようなノイズ風インド風ギターソロ(ポール作(笑))。
完璧な一曲である。そして、あまりに時代から浮いた曲でもある。その各楽器が一体となってリズムを成す様は後のTelevisionから始まりポストパンクやらSonic Youthとかやらに向かうソリッドなインディロック的で、サイケにしては攻撃的過ぎる。そもそも歌詞自体が、「イギリス人のジョージ」が書いた最高級な皮肉。「君が風邪をひいたら、風邪にも課税しよう」だなんて、凄く参考にしたいユーモアセンスが飛び交う。そんな熱がすっぽり抜け落ちたユーモア表現を一曲目に持って来て、ここにアイドル・ビートルズは完全に消滅した。だっていきなり「1,2,3,4」カウントのフェイクだもん。彼らの一枚目が元気よく「1!2!3!4!」から始まることを考えたら、これはどういうことだろうな、と。
一般的にはロックンロールなのは初期のビートルズだと言われる。しかし私はこの時期のこういう、サイケ要素も入ってるけど独特のソリッド感のある、そして醒めきったロックンロールみたいなのが大好きだ。『Rain』とか、ちょっと時期が違うけど『Hey Bulldog』とか。ひょっとして鋭いロックンロールの元祖ではないか。ああ、The Kinksが先か。でも、この曲は物凄い。
2.Eleanor Rigby
そんな、当時の人からしてみたら気持ち悪い道のロックンロールに引き続く二曲目では、そもそもロックンロールですらないこの曲が流れ始める。ここにはドラムもベースも、『Yesterday』ではまだ曲の中心となっていたアコギすら存在しない。完全な弦楽ポップ。もちろん美しいメロディを書き、それに全面的にストリングスだけを重ねようと考えたポールも凄いが、それをいきなりこのレベルでやり遂げてしまうジョージ・マーティンが凄すぎる。
まあ、飽きる曲ではあるけど。
3.I'm Only Sleeping
ジョンの、前作でも見せたようなダルダルな曲。それにサイケ風味な音やだっるいブレイクなどが挿入されて、非常にだるい。野暮ったいリズム、妙にシャキシャキしたアコギ、妙にポップなコーラス、随所に挿入される逆回転ギター。またもや情熱からかけ離れ過ぎた曲で、ジョンの当時のしんどい状況を表すついでに、後のサイケブームメントに安易に回収されないローファイさを有している。偉いのは、そもそもの曲自体がしっかりとメロディアスで、こんなにだるいのにポップソングとして成り立っていることである。随所に後のUSインディポップ的要素が垣間見られる。USじゃないけど、The Vinesもカバーしてますし。そちらもぜひ。ちなみにグランジ化はしてない、素直なカバーです。
4.Love You To
イントロから明らかに異質な、ジョージのインド曲。はっきり言ってこれはもうポップソングじゃないだろ。ジョージのあからさまなインド曲が後世の評価がそんなに高くないのは、ソングライティングよりも「インド風」という手法にあまりに特化し過ぎたからだと思う。非常に曖昧な感じでシタールの海の中をジョージの歌が彷徨う。でも後半のリズムが加速するところはかっこいいし、民族音楽チックなポコポコいうリズムも結構良い。尺的に考えても、ジョージのインド曲三曲の中では一番聴きやすいか。
5.Here, There And Everywhere
ポールお得意のミドルテンポの甘いポップソング。しかし今回はこれまでよりもより優しく脆いメロディを用意し、演奏を薄めにしてコーラスを主体にする(プラス印象的なエレキギターのフレーズ)ことで、この曲を個性的なものにしている。まあ正直これもちょっと飽きが来るのだが、それでもこのちょこんとしたバラードはよく出来てると思う。小さな部屋で愛をささやくような、ちょっとつつけば壊れてしまいそうな雰囲気が好きだ。
6.Yellow Submarine
効果音たっぷりの一大お遊びポップ。リンゴのダルダルなボーカルがこの可愛らしいゆるポップに程よく合っている。サビの合唱もテンションは低く、なんか笑える。ちゃんとタイトルや歌詞に合わせて効果音を選び挿入するのは、遊んでるなあと思いながらもなかなかよく出来ている。まあ曲自体は大したことないんだけど。でもこの曲だって、『後のBeckのサンプリングポップの先駆』とかいうこともできる訳で、やはりこの頃のビートルズはオルタナ的だなとよく思う。一番おかしいのはこんなふざけた曲にストーンズのメンバーが参加してコーラスしたり効果音ったりしているところだ。レコーディングの風景を想像すると凄く楽しそう。後の両バンドの歩みを考慮すると、先鋭性と無邪気な楽しさが同居した、いい時代だったんだろうかと考えてしまう。
7.She Said She Said
不思議なうねりを持つジョンのミドルテンポ曲。歪んだギターのフレーズがうねうねしていて、独特のサイケ感、ディレイやリバーブとかを書けるタイプのサイケさとはまた違うサイケさを感じさせる。そしてメロディがポップ、所々奥田民生がパクってるのが分かるくらいポップ。そしてこんなポップだから気がつかないのがBメロの微妙なリズムチェンジ。この4拍子から3拍子への変化がポップに機能しているのが凄いところ。このリズムチェンジやアウトロの加速も含めて、意外とリズムが面白い曲。この時期のリンゴのドラムは本当に小気味よい感じで、僕が考える素晴らしいドラムを体現していらっしゃいます。アウトロの加速してドラッギーに(またはカルト宗教的に)舞い上がっていくのが馬鹿サイケしてて好き。
8.Good Day Sunshine
ポールの小気味よい感じな、イギリス臭全開のポップソング。また曲中からギターが消え、ピアノ主体のメロディにポールの「イギリスなまり」なひねくれメロディが乗る。サビはタイトル連呼だから、非常にシンプルな曲構成である。ドラムは何故かフィルインをわざわざダビングしてたり。まあ好きなタイプの曲ではないけどでも、流石というか、よく出来ていると思う。特に、アウトロではこんな健全なオシャレポップもサイケになって行くんか?っていうエコーな収束の仕方をするところにポールの意地を感じる。まあ前曲と被っている気もするけど。
9.And Your Bird Can Sing
BPMの割に非常に勢いのよさ・疾走感を感じさせる、ひょっとしたら狭義のギターポップの元祖かもしれない可愛らしい曲。ツインギターによるリフが曲の中核だが、これがひねくれながらも非常にポップでかっこいい。ジョンの書くメロディも極力無駄なメロディは歌わないぜって感じのすっきり加減で、シンプルに良い曲を書いてるなって印象。Bメロのアルペジオなんか本当にUKギタポって感じプンプンで凄く興味深い。こんな曲を「殴り書きだ」とか言っちゃうジョンスゲー。アウトロの上昇感も良い。このアルバム、アウトロが美味しい曲が多い。最後にサイケに上り詰めて行くパターンっていう。
10.For No One
素晴らしい。ポールのこのアルバム中の最良のポップソングであり、同時にポールのこういった「イングランド的小作品」の長いキャリアの中でも最上級に位置する曲。勿論ピアノとホルンとリズム楽器によるシンプルで上品なポップさも凄くポイント高いけれど、この曲はまさにポールのソングライティングにおける一番おいしい部分を体現している。クラシカルに上昇していくメロディは枯れた感じの優しさが内在し、いい具合に力の抜けたポールの声は少し野暮ったいところが非常に魅力的。コーラスは入っていないが、この曲にコーラスは要らない。このスケールの小さいポップソングがポールの最も輝くフィールドだと僕は思うし、そのことはポール自身が近年の自分の傑作『Chaos and~』制作の際に、この曲をはじめとする自分の小作の再評価をしている(そしてそれをナイジェル・ゴドリッジが採用した)ことからも明らかである。
11.Doctor Robert
如何にもロンドンかニューヨークの街中かなにかって感じの、くだけた感じのロックから一気にサイケな浮遊空間へと飛翔するのを繰り返すジョンの曲。ディストーションなギターによるジャンク感漂うロック部と、奇麗なメロディとオルガンか何かがドラッギーなヤバさを演出するサイケ部のギャップが聴きどころ。こういう展開のギャップでサイケ感を演出するのは67年のジョンのサイケデリックソングの基本方針となる。
12.I Want To Tell You
何故かフェードインから始まるブギー調のジョージ曲。同じ音を弾き続ける、ちょっと不協和音感なピアノが特徴的なダルい曲。コーラスもなんか変な抜け方をしていて、それが非常にジョージ曲っぽい。そもそものメロディがいい具合に60年代サイケしているなと。アウトロはまたもやサイケに上昇していくパターン。今回はインド風に「あーあーああーあー」。
13.Got To Get You Into My Life
軽快なリズムとホーンの楽しげな旋律をバックに、ポールがファンキーに崩したメロディーを歌う。これもやはり、上手く説明できない強烈なイギリス臭がする。聴きどころは何と言っても二回目のサビ以降の展開。ポールが歌のメロディを粉砕してファンキーに、勢いに乗って歌う。こういうの、ファンクとかとはまた違う黒人っぽさというか、そんなものを感じる。
14.Tomorrow Never Knows
最後に位置するこの曲を、彼らはこのアルバム制作の最初に録った。その癖にこの曲が一番ぶっ飛んでいるのはどういうことか。
ジョンによる、あまりに早過ぎた、最高のトリップポップ。反復する妙に突っかかるようなリズムや、逆回転やテープの切り貼りによって、最早それが元々何の楽器で鳴らされた音なのかすら分からない「音」の海、そもそもワンコード(ずっとC)の上にメロディを乗せるという、ソングライティングの定義に当てはまらないソングライティングの手法など、当時としては実験的すぎる、今日ですら先鋭的な要素を片っぱしから突っ込んだ、まさに怪曲。イントロのシタールからドラムが入って来て最後までずっとそのリズムをキープ(リズムも切り貼りなのかそれとも実際に叩き続けたのか)、そして本当に何の音だろう、音のカモメが曲の上の方で暴れまわる。怪しいキーボードっぽいようなシンセっぽいような(当時まだシンセなんて無い)音、音、音。そしてワンコードだからどこにも向かいようの無い歌のメロディは妙な高揚と停滞を繰り返す。逆回転のギターソロ、遠くから聞こえてくる後半のジョンの声、消えてはまた出てくるオルガン「風」の音、全てがこの「混沌とした音像」を作るという目的のために有効に活動する。こんなの行き当たりばったりで作ってしまったのだから凄い。今ならエフェクターやDAWで手軽に行える逆再生や音の切り貼りも、当時の技術なら相当の苦労をするだろうに、そのくせそんな技術状況で、今日の技術を駆使したサイケデリックにも全く引けを取らない音のカオスを作り出している。ホントこんな曲当時の技術力で作れるのかよ!?
やはり優秀なスタッフと、制作につぎ込めるたくさんのお金がこの曲を作るのに大きな役割を果たしたことは否定できまい。ただ、別に何の確信も無く、無邪気さとドラッギーな気分の中でこんな怪物を作り上げてしまった当時の彼らは、やっぱりどこかおかしい。存在自体が理不尽。ダンスミュージックやらプログレやらオルタナやらの人たちがかなり分析しまくってるのに、未だに「過去のもの」にならない。この曲を「レトロスペクティブ」の枠の中に入れることが躊躇われてしまう。
こんなに奇形的で不可思議な音なのに、結構ポップでキャッチーなのがさらに意味不明。


ビートルズの多分7枚目のアルバム。
うん、ジョージ・マーティンはじめ、スタッフはマジで頑張ったよ。今でも全然問題無く有効で刺激的なサウンドアプローチをやりすぎ。訳が分からねえ。
あと、そんなサウンド面の進歩に隠れがちだけど、何気にこのアルバムでメンバーのソングライティング力が一つの高みに達した感がある。変幻自在のポップ職人ポールはサウンドの充実に見合うだけのメロディの引き出しをどんどん開け放ち、怠惰なサイケデリックロッカージョンも結局最後までメロディを忘れ去ってしまうことなく、変態的な楽曲をポップソングに仕上げてしまう(逆に、ポップソングをサイケにしている部分もあるだろう。相互作用ですね)。ジョージも遂に完全にひねくれ返り、それがメンバーにも好意的に受け入れられたのか、アルバムに三曲提供、これはビートルズのキャリア中では最大。リンゴは曲を書いていないが、このような実験性とソングライティングを無理無く繋ぐ、非常にバランスのとれた、かゆい所に手の届くドラムをしている。
このアルバムをして「ビートルズがバンドであることを辞めた」とか言っちゃう人がたくさんいるけど、それは違う。いわばこの作品はレディへの『OK Computer』みたいな作品で、バンドが「求めた」結果としてこうなったのだと思う。リンゴのドラムやソリッドな今作のギターを聴いていると、むしろバンドとしての急激な成熟すら感じさせる。そこには今日バンドをやっていく上でのヒントが山ほど含まれているのだ。
あと、実験的だけど全体を通してゆるゆるな雰囲気もいい。その辺凄くオルタナしていると思う。安易に60年代サイケというタームに回収されない徹底した作曲・サウンドメイクは見事としか言えない。ビートルズはここでゆるポップについて極め過ぎている。それは後の彼らのキャリアが霞んでしまいかねないほどだ。
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