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『東京ガールズブラボー』

2008年05月27日 22:37

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この作品が書かれたのは90年の年末から92年の年末、彼女にしては中々の長期連載で、実際上巻と下巻に分かれている。時期としては『PINK』などを書き過渡期を迎え、そしてこの連載のいくつか後に来る長期連載がリバーズエッジである(間に二作品長編がある。私はそのうち片方しか持っていない)。私がここ最近の岡崎京子関連記事を書く際に参考にしたサイト(http://page.freett.com/tach/okazaki.htmlポップアップがややウザイですが)の方に言わせると『もし仮にだが、岡崎が「リバーズ・エッジ」を書いていなかったとしたら、この作品が最高傑作となっていただろう、と私は思う。それほど好きだ。「リバーズ・エッジ」前における最良の岡崎がここにある。』とのことだが、確かに『PINK』以降の彼女はいよいよ自分の強烈な個性とそれを表現する能力が飛躍的にアップし、そしてその一つの素晴らしく突き抜けた結晶としてこの作品が存在する。



話の大筋は、作者がリアルタイムで青春を送った80年代カルチャー、特に所謂主流に対するサブカルチャー的なものを、作者が以前に書いた『くちびるから散弾銃』という漫画のキャラクターの番外編に託して描きまくったものである。文化的センスに関してはやたらこだわりがあるらしい作者なので、その書き込みや尋常じゃない。『くちびるから~』でもバブル期のオシャレ文化を総ざらいした作者が、今度は80年代ニューウェーブの頃を書き出したというわけだ。『くちびるから~』は、三人の女の子が、特に本筋となるストーリーも無く、ずーっとおしゃれとか乙女とか何とかの話をするだけの、一種のバカ漫画(全然悪い意味ではありません。面白いです。キャラが飛んでるからなあ)ですが、『東京ガールズブラボー』はその三人、もしくはその三人に似た三人の女の子が、やっぱりオシャレとか音楽とかクラブとかそういうのの話をしている漫画な訳です。しかし、こっちはそれなりにストーリー性はあります。まあ、前に紹介した三作品よりもずっとずっと『軽い』話であることは間違いありませんが。いやでも、『軽い』って言うのも陳腐なわけではなく、むしろキラキラした青春の疾走が非常に軽やかに暴走している(でもイービルな感じはそんなにしないよ)のを見て楽しむ漫画です。いや、本当に面白いんですよ。



まず主人公。もしかしたら岡崎京子漫画の中で最も狂ってて、最も爽やかな主人公かもしれません。名前は金田サカエ。『くちびるから~』の三人の一人で、「金のボディとトーフののーみそを持つ少女」です。彼女が高校生の時に彼女の母親が父親と別居する事になり、札幌から母子で実家のある東京に向かうところから話が始まります。オシャレでクールで先進的(そして安易な「流行」に乗っかっていない)なものが大好きな彼女は、正に文化の中心地東京に目を輝かせていた。そこで『くちびるから~』の三人のうちのほかの二人と出会って、色々幻滅したりもするけど(東京は『流行』の街ですからね)、色んな体験をして、ちょっぴり成長したのかどうか分かりませんが大切な時を過ごすというストーリーです。彼女は非常に自分の欲望に忠実です。それが凄く笑えますが、時々それが素晴らしい風に見えますのは本当に青春のきらめき。『PINK』のあとがきで作者はこう書いてます。

現在の東京では「普通に」幸福に暮らす事の困難さを誰もがかかえています。

でも私は「幸福」を恐れません。だって私は根っからの東京ガール、ですもん。

金田サカエという女の子は、まさにこの「幸福を恐れない」を地で行く女の子です。普通の人なら、ある幸福を追い求める事によってもたらされるリスクとかをしばしば気にしてしまうものです。でも彼女はそんなの全然気にしない。そして妄想全開!カッコいい服やカッコいい音楽や素敵な出来事に出会うと、彼女はいっつも素敵でオシャレな自分のことを想像して盛り上がります。他の二人もそのケはあって、だから三人は凄く仲良しになって、傍からみれば本当に色々と甘酸っぱい思い出を作っていくわけです。以下金田サカエのバカ名言集。

・待ちを歩いたらサカモトキョージュやハジメちゃんに逢えるかも――でもキョージュに逢ったらぬけがけして愛人になっちゃお!

・(クラスの自己紹介で)金田サカエ16才!――しょーらいのユメは外人になることです!

・トーキョーの人ってトーキョーの人なのにYMOの「増殖」みたくテクノでサイバーじゃないのお!!

          (本当にほんの少しだけ抜粋)


彼女はともかくバカで、自分の欲望やユメ(ぶっ飛んだユメばっかり)に正直で、非常にパワフルな女の子です。でも、援交とかは全然しません。それどころか彼女は『くちびるから~』の時期、もう年的には大人なんですけど、その頃でも純潔を保ってるんです。まあ彼女の周りでは色々あってるみたいですが、彼女自身はなんとも健康的ですがすがしくぶっ飛んだバカ、愛すべき大バカ者なんです。きっと多くの人が初めは笑いながらも、そのうち彼女のバカさにちょっとした憧れさえ抱くんではないかと思うほどです。まあ、実際に回りにこういう女の子がいるとどう思うかは分かりませんが。



凄くバカなのに、彼女は時々非常に的を得たようなことを言います。それは時代が変わっても変化しない、若者のテーゼみたいなものです。

・明日の事はわかんないけどさあ、とりあえず今夜はパァーと行こうよう。

・今こうしてる間にも新しいこと面白いことが起こってるのに何も出来ないなんて、すごくじりじりする。

・なんかもっと夢見るようなうつくしくて正しくて別の世界ってないもんかにゃあ。

・それはとてもワクワクしてドキドキして新鮮で胃が痛いくらい、頭痛がするくらいカッコ良くて楽しいことよ。それはすっげえカッコイイ音楽を聞いたときのような感じ、そういうことがやりたいの。でもむつかしいのは……それが具体的にどういうことで、どうしたら自分で出来るかがかいもくわかんないことだわ


そして繰り返されるアホな暴走行為。夜を忘れて遊ぶのはしょっちゅう、親の指輪盗んでその金でホテル泊まって遊びまくったり、怪しいエロ雑誌の対談に出演したり、賞金が欲しくて突如マンガを書き出したり。最後には親が復縁して札幌に帰ることになるんですけど、それがイヤで飛行機を飛び出してみたり。ともかく、非常に活発な彼女たちの様子を見てると、本当に退屈しません。そうだよなあ青春って……。くそうオカザキめなんてものを書くんだ。その素晴らしさに思わずミクシィネームとかを借用させてもらった私はこれを読んでは何度も憧れの気持ちが溢れかえって頭の中がぐるぐるする。そうなんだ、バカで突き抜けることこそが青春の重要なトコロなんだ(それを無意識にやってのける事もかな)!!!



岡崎京子がここまで素晴らしい青春壇を書いているとはと、リバーズエッジその他における冷徹でクールな彼女に対するイメージを私はこの作品で一気に覆されてしまった。そうはいってもまあ、確かにこれ以前の作品よりも視点のクールさは上なんだけど、この作品に関してはそのクールさでは隠し切れない、作者の青春に対する、80年代に対する、若者に対する、幸せに対する思いが爆発している。岡崎京子らしいぶっ飛んだ演出もところどころにあって、でもそれらは爽やかさを阻害するほどではなくて、一気に読み終えると本当にフレッシュで、そしてちょっと切ない気持ちになる。ハードな岡崎作品以外にも触れてみたい人にはもう本当にオススメする、文化的、青春思想的一大スペクタクル!ああ、言い回しが陳腐だ!!!!!!要約します。超面白い、読め!!!!!




流石にこのレビューは読み返すとちょっと恥ずかしい。でもなんだろう、凄く懐かしくなるし、凄く切なくなる。
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