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『Rubber Soul』

2008年05月25日 01:47

やっと書けたよ。
Rubber SoulRubber Soul
(1990/10/25)
The Beatles

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1. Drive My Car
いきなりのひねくれたファンキーなギターが、これまでのアルバムの始まりとこのアルバムとをはっきりと区別する。モータウン(私はちゃんと聴いてないのだが)調の、装飾の薄い曲に、クールなジョンの声と暑苦しいが抑制の利いたポールの声が乗る。そして車のエンジンを模したコーラス。都会的なナンバー。
2. Norwegian Wood (This Bird Has Flown)
一転してアコースティックなジョンの曲。旋律は内向きに、非ポップソング的に発展し、ジョンの声にはかつての熱はもう無い。比喩を用いた分りにくい詞。ジョージが苦労してダビングしたシタールが部分的に曲の輪郭をなぞるが、それ以外はほぼ装飾が無いにも拘らず、妙な空間の広がりを感じさせる曲。
3. You Won't See Me
一転してポールのポップナンバーだけど、これも抑制が利いていて良い。転がるようなピアノと突っかかるギターの対比。頑張り過ぎず自然に響くメロディ。吉井和也がロビンソンソロ2nd最終曲でパクッたCメロのメロディは確かに適度に憂鬱で適度にポップだ。中村一義が『ピーナッツ』なんかで見せる感じの可愛らしいコーラスも良い。
4. Nowhere Man
引き続き落ち着いた、しかし素晴らしい重なり方をしたコーラスが響く落ち着いた曲。孤独を歌った歌詞とコーラスの対比がなんとも切ない。ジョンのメロディはポップながらも少しサイケっぽい曖昧なキラキラした感じが見られる。曲調は明るいのに空虚な感じがする。
5. Think for Yourself
ファズベースが印象的なジョージ曲。ここにきて独特のメロディのひねくれ具合を見せつける。ラテンチックな解釈でポップソングのメロディを崩す。ドラムのシェイカーの音が気持ちいい。歌詞もジョージの性格の悪さが伝わってくる感じ。遂に曲の中でひねくれ始めた。
6. Word
M1的なピアノとギターの絡みの曲だが、ジョンのパートで一気に曲が崩れていくような感じになるのがかっこよい。拍子が怪しくなる具合のメロディによるもの。コーラスの重ね方もマイナーチック。
7. Michelle
ポールの「ロックンロールいち抜けた」シリーズの第二段階。シャンソン的なフレンチポップスをけだるく演奏する。楽器の演奏もいいスカスカ具合で、酒場でバンドが演奏している姿が浮かぶ。フランス語まで駆使しだすポールはやはり形式に拘る派だと思う。
8. What Goes On
のんきなリンゴ曲。初めてリンゴの名前が作曲クレジットに乗ったが、どれほど曲作りに参加したかは怪しい。歌のあるところはポップだが演奏は妙にひねくれた感じがする。これもそこはかとなく酒場チック。
9. Girl
M2はジョンの空虚が現れ始めた作品だが、これはジョンのドラッギーな側面が表れ始めた一曲。ふらふらとしたメロディが空虚なコーラスとブレス音と表紙の怪しいメロディに吸い込まれていく。この怪しいマイナー調はどこかジプシー的なものを思わせなくもない。
10. I'm Looking Through You
これは前作にあった「軽快で上質なポップスすぎて引っかからない」パターンの曲。でも前作よりも抑揚の利いたメロディと、素朴さと激しさの対比がこの曲にフックを付けている。アルバム中ではやや薄味ながら、ポールのソウルポップ趣味もうかがえるそれなりの曲。
11. In My Life
ジョンのビートルズ時代のバラードの中では一番まともなんじゃないかこの曲。良くも悪くも。非常に落ち着いたメロディは、間奏のバロック調のピアノとも相まってクラシカルな響きがする。そして故郷の思い出を歌うその詩作もジョンレノン史では以外と異色。これと『Straeberry~』くらい?
12. Wait
前作からのアウトテイク。しかしポップ全開な前作にこれを収録していたら浮いていただろうってくらいに地味。その抑制され方は意外と『Rubber Soul』的。ブレイクしてからシェイカーでドラムが入るパターンは意外とこれが初出?
13. If I Needed Someone
一番前作に近いポップな作風。そんなポップな曲がジョージ作だというのもおかしな話。三人によるコーラスがポップで、また12弦ギターの音色がキラキラしていてThe Byrds的で(これは順番が逆なのだが)、メロディも素直で、アルバム中もっとも「らしい」ポップソングとして聴ける。
14. Run for Your Life
最後に持ってきたのはジョンのダルダルロックンロール。これまでのアルバムならジョンがシャウトしていたのだろうが、そのシャウトはもう聞けない。その代わりだるそうに歌うジョンと、妙な言葉の詰め込み方をしたメロディが流れてアルバムが終わる。正直、締めとしては弱い気もするが、そのあっけなさが『Rubber Soul』的だったりして。


遂にビートルズが変化した。ジャケットを見るだけでこれまでとコンセプトが全然違うことは一目瞭然。歪んだ写真に歪んだタイトル、タイトルも妙に意味深なものとなっており、初めてビートルズが(というか「ロックバンド」が主語になるべきなのかここは)「一枚のアルバム」として完成度を求めたことが窺えるようになっている。

大事な中身だが、一聴して多くの人が思うことは「地味」さではなかろうか。ともかく落ち着いた趣のアルバムである。前作までのアイドル的ポップさはかなり薄まり、かと言って次作以降の強烈な実験性・アヴァンギャルドさもまだこのアルバムではあまり表には出ていない。ジョンは叫ばずにだるそうに歌うし、ポールもロックンロールな暑苦しさを避け、素朴なメロディか、またはシャンソンなんかに手を伸ばしている。これぞ大名曲!みたいな曲も存在しない。大名曲とされる『In My Life』の地味さ・あっけなさに、期待を持って初めて聴いた人は拍子を抜かすことだろう。

しかし、その「地味さ」はしっかりとアルバム全体を覆っている。これが単なる偶然か計算なのかは知らないが、アルバムジャケットとも相まって、意外と他のアルバムでは見られない雰囲気を作っている。「地味」というのをもっと詳しく説明すれば、それはメロディの美しさを残したまま、メジャーなポップさを排除する作業だったり、音の隙間を上手く使って聴かせるべきパートを前面に出す「引き算の美学」だったり、内面的になっていく歌詞だったりする。こういった表現をするバンドは、アンダーグラウンドならいざ知らず、当時のメジャーなロックンロールシーンには間違いなく存在していなかった。

まあ、そういう歴史的なことを考えずとも、このアルバムは現代でもかなり聴く価値のあるアルバムと言える。それは、所々に捻ったアイディアが見られ、各曲ごとにしっかりとした「この曲の聴きどころはここです」的なフック・特徴が添えられ、そしていろいろと細かいアイディアを詰め込んだ佳曲が一曲3分以内で連発される。それでいて曲の総体からはジャケットのような寂しい風景が浮かんでくる。これはもはや「アーティスティックなポップアルバム」の教科書みたいな存在だ(その教科書を誰よりも早く参考にし、誰も到達できないところまで行ってしまったのが『Pet Sounds』ってわけ)。

まあ、「地味」なのは本当です……。だがそこがいい。

あと、ジョンがかなり絶好調。「ロックンロール」ジョンが好きな人はちょっと向いてないけど、アーティスティックなジョンが好きな人は、自然とこのアルバムがスタート地点となる。

まあなんか、結構薄味なのに色々深読みしたくなる、妙な魅力のあるアルバムです。
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