『A Hard Day’s Night』
- アーティスト: The Beatles
- 出版社/メーカー: Toshiba EMI
- 発売日: 1990/10/25
- メディア: CD
1.Hard Days Night
初期ビートルズ風と言えば、狭義的にはとりあえずこの曲か『Help!』のどちらかを指すと言っていい。正に代表曲。イントロの12弦ギターでジャーンと鳴らすコードが印象的。これを聴いただけで、前作から急に音が良くなったことが分かる。この時期に録音可能なトラック数が2つから4つに増えたらしいが、それを反映したきらびやかなサウンドは堂々としたものである。ブリッジはキーが高くてジョンからポールへ歌い手が変わるが、これがバンド感があって非常にかっこいい。サビで鳴るカウベルも印象的。ゆったりと、だるそうに、しかし力強く進む曲調はまさに初期ビートルズ。
2.I Should Have Known Better
前曲のまったり具合を引き継ぎ、牧羊チックなハーモニカなどを吹きながらもゆったりと進む。アコースティックなギターの響きと、時折入るエレキの音が良い感じ。ジョンのボーカルもいい具合に枯れている。
3.If I Tell
またジョン曲。絶好調すぎる。バラード曲だが、コーラスではなく、ジョンとポールのハモリで終始曲が進んでいく。12弦ギターの繊細な響きが曲に合ってる。以前のバラードよりもシンプルに、奇麗な感じになった。
4.I'm Happy Just to Dance
ジョンの曲をジョージが歌っている。メロディが完全にジョンなのでちょっと不思議な感じがする。これは結構古臭い感じがするかも。60年代のバーでそこのバンドが演奏してそうな雰囲気。掻き毟るギターが可愛らしい。
5.And I Love Her
ポールの甘い甘いバラード。しかし、ドラムを省き、ベースもシンプルに、極力アコースティックな演奏が試みられている。その瑞々しいギターの音がなんとも甘い。メロディもグドすぎない程度の憂鬱さを漂わせる。後の『Michelle』なんかに繋がっていく系統の曲。
6.Tell Me Why
所謂60年代のダンスホールでかかってそうなノリノリな曲。時代を強く感じる。コーラスワークが聴きどころか。楽しそうに踊る60年代の男女の絵が浮かぶ。
7.Can't Buy My Love
なんかバカ売れしたらしいポール曲で先行シングル。ちょっとひねりの利いた歌メロからサビで突き抜けるメロディ。ベースは少しばかりスイングした感じを出しており、ただ突っ走る曲でないことをアピール。コーラスは無く、ポールの歌を多重録音してある。
8.Any Time at All
いきなりジョン(とポール)のシャウトから入るパターンの曲。ジョンは余裕たっぷりのちょっとけだるげな甘い歌メロといい具合に歪んだシャウトを繰り返す。こういうどっしりしたリズムこそ「初期ビートルズ」らしさだと思う。
9.I'll Cry Instead
ちょっとカントリーチックなギターが愉快なジョンの曲。本当に良い枯れ方をしているジョンの歌。まあ古臭い感じがするが、このなんだかメロディ自体は明るいのにどこかくすんだ感じはまあ、才能かねえ。
10.Things We Said Today
まったりとしたポールの歌。歌い方が冷めている感じで、ポールとしてはちょっと珍しい(ちょっとジョージっぽい歌い方)。上手い具合に転調するもんだなあとメロディを辿りながら思う。変化の少ない曲にいいアクセントを付けている。
11.When I Get Home
やはりジョンのシャウトから始まるけだるげポップナンバー。M8と似てる気はする。どたどたしたドラムがいい。サビのジョンのシャウトの突き抜け具合が聴きどころ。
12.You Can't Do That
いい具合のけだるいイントロ、そして吐き出すようなジョンの歌、『Twist and Shout』みたいにアホっぽく歌メロを追いかけるコーラス、のんびりしたカウベルの音。強引な感じが味なギターソロ。このだらだらとしたポップさの中でジョンの声が鋭い感じこそ、このアルバムのキャラクターそのものって感じ。ジョンの自信作らしいが、なるほどこのポップなのにひねくれた感じは本人も好きそうだ。
13.I'll Be Back
最後は哀愁を帯びたメロディをゆったりと辿っていく曲。アコースティックギターの音が澄んでいて、枯れていながらも優しいジョンの声とよく合っている。しかしこういうテンポの曲の多いアルバムだったなあ。
映画『A Hard Day's Night』(邦題『ビートルズがやってくる ヤア!ヤア!ヤア!』)に合わせて製作、リリースされた、ビートルズ三枚目のアルバム。
このアルバムに収録された曲はすべてレノン=マッカートニー製で、カバーは遂に一曲も無いし、何故かリンゴボーカルの曲も無い(笑)。特にジョンの曲が13曲中10曲と、まさにジョンの天下であります。このアルバムにジョン曲の多くには共通するところがあって、それは1.ゆったりしたミドルテンポ2.サビ以外のメロディがちょっと不機嫌そうな感じ(これはジョンのボーカルによるところも大きいけど)3.ジョンのボーカルがシャウト気味になるタイミングが曲中に用意されている、といったところです。こういうポイントのある曲を現代では所謂「初期ビートルズ風」サウンドとか言ったりする訳です。奥田民生とかね。まあ似たような雰囲気の曲が多いとも言えますが、それはポールの曲を効果的に挟んだり、あともう単純に自分の歌の力で強引に解決してしまっている訳で。なんというか、ジョンの荒々しいボーカルが苦手な人がこのアルバムを聴く理由はあまり無いかも。そのくらいジョンのアルバムに占める役割が大きいということ。たとえジョージが12弦ギターを買おうが、このアルバムの90%くらいはジョンレノン、「ビートルズの」ジョンレノンで出来ているアルバム。キラキラと奇麗なアコギや12弦ギターの音とジョンの荒々しさ全開な歌の絡みを楽しむアルバムです。ここまで来ると、所謂3コードみたいなロックンロールはもう消滅してますね。ロックンロールなんだけど、完全に「ビートルズ式」ロックンロールを確立した模様。初期ビートルズサウンドを勉強するなら聴き込みましょう。
私は初期は別に好きじゃないから……。早く『Revolver』まで行きたい。







