3ピースバンド・その音・傾向について
前からずっと書きたかった。どのくらい前かというと、去年の学祭時期位から。
日本において、いや、世界のどこでも「歌」というものは大事にされて、名ボーカリストというのは周囲の尊敬を集めるものだ。マイクの前に向かい、身振りなどで感情を表現しながら、自分の歌に心を込める。全神経を歌に集中させ、素晴しい歌のために全力を尽くす。その立ち振る舞いは凛とした者から暴れまわる者まで様々で、まあそれはそれで大事です。
しかし、世の中には歌を歌う癖に、歌だけに全精神を注ぐことが出来ない連中がいる。彼らは何故か歌いながら他の楽器を演奏してしまうのだ。「そんなの、歌に集中できないじゃないか!歌に対する冒涜だ!」とかそういう意見はまあ無視して。まあブルースとかの時代から当たり前のようにあったことだから、別に変でも何でもないんですけど。ビートルズだって楽器持って歌うだろう?
あまり大声で言ったら怒られそうだけど、よくある「ロックバンドの華と言えばボーカルとギター!熱いフィーリングをどうのこうのするぜ!」みたいなのは、まあそりゃあ認めざるを得ないくらい素晴らしいものもありますよそりゃあ、でも、少なくとも学生レベルとなると結構「なんだかなあ」って思ってしまうようなものも正直ある訳で云々。ああ、この話は本筋ではないからこの辺にしておこう。どうせ歌下手いならせめて楽器持ってごまかせばいいやん。
それで、そういった、演奏しながら歌う人というのは、割とその演奏している楽器がギターであることが多い。「いやいやベースボーカルこそ至高だろう!」という意見もまあ分ります。後述で詳しく語ります。それで、四人編成のバンドだったりしたら、そのうち二人はギターであるということがままあります。それか一人ギター、一人ボーカルみたいな。前者の場合、ギターボーカルの人はギターを弾くと言っても、それはリードギターだけだと音が薄くなっちゃうところを補強する役割が大きい訳で、コードやパワーコードによるバッキングがその主たる目的となります。所謂「リズムギター」ってやつで、まあこれはこれで大変なんですけど、サウンド的にはリードギターが自由が利くので、ある程度は負担が少ないと言うか、まあ正直音に厚みが無くていいところ(アルペジオを静かに聴かせるところとか)なんかは歌い手はギターを弾かずともいいわけです。
しかし、そうもいかないのが3ピースバンドの辛いところ。大抵のロックにおける3ピースバンドは、ドラム・ベース・そしてギターの三者から成り、歌ものの曲をするのであればそのうち一人が歌う訳です。KEANEのボーカル・ピアノ・ドラムとか言う3ピース編成は反則だろ……。だとしたら、どこかのパートが何かしら演奏をしながら歌う必要が生じるわけです。これには技術の他にも様々な要素が関連し、いろんな制約とか何とかがあって、考えるといろいろと面白いです。
なお、私は単なるギターロックをちょっとかじっただけの人間なので、ブルースがどうとか、ジャズがどうとかそういうことは言えません。
・ベースボーカルの場合
ベースはなんだかんだ言って結構曲中ずっと演奏しないといけないので、それプラス歌うと言うのはしんどそうです。増してや、複雑なリフを弾きながら歌うのは凄いと思います。
ただ、大きな利点としては、ギターが自由になるためサウンドの自由度がギターボーカルに比べて飛躍的に増すと言うことです。誤解を覚悟の上で言えば、ベースはあくまで曲の裏方的な仕事で、例えばずっとルート弾きでも、それほど曲のサウンド上のキャラクターを左右しない(うわもの的な意味で)のではないでしょうか。確かにベースを大事にして聴く人は多いですが、やはり曲のキャラクターに占めるうわものの役割というのは大きいもので、そういう意味でギターが自由に振舞えると言うのは大きいです。この場合、コーラスなどをドラムが担当すればさらにギターは自由に弾けるので、曲の世界観はもう彼の思うがままです(もちろんバランスは大事ですが)。
ベースボーカルの代表的な3ピースバンドとして、The Policeが挙げられます。この場合ベースも結構歌いながらよくうごくので凄いもんだなあとは思いますが、エフェクトを駆使した、本来のギターテクとは少し異なった意味でテクニカルなギターで空間を塗りつぶすギターサウンドはベースボーカルによるギターの自由さが効果的に発揮された例だと思う。多分。最近まともに聴き始めたからよく分らん。あとスティングのボーカルはそんなに好きじゃない。
The Policeの、PVとかジャケットとかの妙な「ダサさ」はどうしても気になってしまう……。
ファンの人ごめんなさいダサいなんて言って。
・ドラムボーカルの場合
あんまり知らないんですけど……。多分ベースも自由になって、音階のある楽器は自由になります。しかしリズム的に制約が大きくなるから、激しい変拍子なんかは無理になるのか。あと何といっても、ドラムボーカルが敬遠される大きな理由は、歌ってる人がドラム叩いてるから、ステージの後ろ側に行ってしまって見えにくいことなんじゃなかろうか。
ドラムボーカルの3ピースバンド……聞いたことないなあ。
・ギターボーカルの場合
本題。このジャンルこそが私にとって一番興味深い問題なわけで、それはまあ私がそうだからだったんですけど。正直言って、世間のすべての3ピースバンドのおよそ6,7割はたぶんギターボーカルなんじゃないでしょうか。それくらいやけにメジャーなジャンルです。何であんなにメジャーなんだろ。やっぱりカートのせいか?NIRVANAのコピーで、ボーカルが手ぶらで歌ったりしているのを見るとやたらガッカリします。
3ピースのギターボーカルの何が大変って、それはやはりうわものを全部同時にしないといけないことでしょう。演奏の例えとして、リズムを「骨組み」、メロディ関係、所謂うわものを「肉付け」とする場合がありますが、ギター以外がボーカルなら、この肉付けは「自由の利くギター+ギター以外の歌う人」となるので、役割が分散するわけです。しかし、ギターボーカルだと、肉付けはすべてギターボーカルの肩にのしかかってきます(ベースラインもうわもの的なことするやんって意見は置いておくとして)。つまり、曲のメロディ的なキャラクターはすべてギターボーカルの表現力に掛っている訳です。
しかし、問題があります。歌を歌っているときはいいんですけど、歌っているときのギターってどうするんですか?という問題。とりわけ歌ものバンドならそこが大事な訳です。だって歌いながら複雑なギターソロなんて弾けないでしょう?えっ、弾ける?……まあ確かに、時々歌いながら異常にギターを弾き倒せる人はいます。それは確かに凄い、凄いことなんだけれど、それは私の考える3ピースバンドの面白さとはちょっと違う。
つまり、歌いながら何を弾くかというのが問題な訳です。しかし、歌っているからギターにあまり自由が利かない。これが3ピースバンドのギターボーカルが抱える、致命的な「制約」なんです。これをどういう方法で克服、もとい誤魔化すか、というのが、私がずっと考えていたテーマでした。
1・え、別にギター二本でも一本でも変わらないやろパターン
つまり、ずっとリズムギター的にコード・パワーコードカッティングを続ける、「単にリードギターが無いだけ」パターンです。これはあくまでもリフ的なカッティングと言うよりは、バッキング的性格の強いものをいいます。誤解を恐れずに言えば、こういうのはいわゆるメロコア勢のバンドなんかで目立つ気がします。パワーコードでバッキングするんです。あとブリッジミュートでサビとそれ以外の部分との緩急をつけたり。それはまあ、初期グリーンデイ的なイメージなんですけど。
この曲がまあ、3ピースギターボーカルの一つの大きな答えであることは認めざるを得ません。まあぶっちゃけNIRVANAもここに入りそうな気がするけど、何か一緒にしたくないので分けます。
あと、個人的にはこれはちょっと面白みを感じないというのが正直なところです。このパターンの場合、歌のメロディの重要性があまりに大きすぎるからなんですが。だって私歌下手クソだし。演奏で誤魔化したい……。
2・アルペジオを駆使して世界観を作るパターン
これはよくあるパターン。アルペジオでも、コードを単にアルペジオで弾くのではなく、ある一定のアルペジオを反復するというやり方です。これの良いところは弾くラインによっては幻想的で奥深い世界観が「歌いながら」表現できる点です。ディレイやコーラスを駆使する訳ですね。どうでもいいですが、ART-SCHOOLはしょっちゅう単純なアルペジオを反復させますが、時々それ+サビでパワーコードっていう「ギター一本でも問題無いよねえ?」って曲があって、4人バンドなのに3ピースの音を考える際に参考になります。
例としてMO'SOME TONEBEBDER『GREEN AND GOLD』を挙げようとしたら、動画が見つからない……。ゆら帝の『美しい』も見つからない……。まあその辺。
3・リフを弾きながら歌う
やはりこれは熱いですね。複雑なリフじゃなく、単調なリフの繰り返し。乗せる歌で単調さを緩和します。このパターンの代表曲と言えばやはりNIRVANAのあれ。まあ上手い人はリフ弾きながらでも何無く歌うし。ただここでリフが自由すぎても面白くない。やはり、何かストイックな感じのリフの方が3ピースっぽくて良い。ゆら帝とかその辺を良く分ってるなあと思います。
まあ、おおざっぱに分けてこの3つが主なギターボーカルが歌いながら弾くことの内訳だと思います。ギターソロ弾きながら歌うとかドン引きですわ。この三つの点を踏まえて曲を作る訳です。学祭で3ピースバンド組んだ時は、私は趣味的にとりわけ2ばかりを重視しました。でもサビは1。単純野郎です。
ギターによる空間の埋め方というものは面白く、Sonic Youthなんかを聴いてるとギター二本のバランスの良さに感動したりしますが、3ピースではそれは望めないので、しかしそういう雰囲気を出したいがために努力するのです。一本のギターと歌だけで、どれほど空間を立体的に埋めることが出来るのか。それが3ピースのギターボーカルの面白みだと思います。ディレイは偉大です。
まあ、結局は曲の構成の段階で3ピースの中途半端なスカスカ感が出ないように工夫することが大事なんですけど。そのためには、ベースとドラムの絡ませ方・ブレイクの取り方・轟音の使い方などが大切になってきます。
そういう点で考えていくと、ギター一本で曲をする際に勉強になるなあと感じるいくつかのバンドが浮かんできます。大体この辺のバンドを参考にすると3ピースでギターボーカルがどんなことをすればいいか分かる、的なリストが以下のものです。
・ACIDMAN
なんかちょっとカッコつけ過ぎな感じが鼻につきますが、3ピース的バランス感は認めざるを得ません。
・Blankey Jet City
もうここまで弾けて歌えたら他に何も要らん。『SKUNK』とかよくあんなの弾きながら歌えるもんです。リフにしてもアルペジオにしても、その空間の埋め方には一定の美学を感じるし素晴らしいです。
・bloodthirsty butchers
『未完成』を聴きましょう。オルタナロックを3ピースでやる人にとっての答えの一つが堂々と記されています。吉村秀樹はNeil Young的でありながらも器用に、そして時に豪快に空間を轟音で埋め尽くすことに秀でています。またブッチャーズについては詳しく書きたいです。
・Dinosaur Jr.
実はJマスキスは資質的に吉村秀樹と似ているところがあるように思うのです。こっちの方が元でしょうけど。要するにビッグマフ繋がりですね。マスキスの方が器用か。
・Galaxie 500
これ実は超大事なバンドですね。ぼんやりしたアレンジに関しては天才的です。とりわけドラムの押さえ方、シンバルを重視してあまりスネアとかを叩かないドラムは勉強になります。
・Joy Division
彼らは4人バンドですが、バーナードサムナーの単調で鋭角的(そして下手クソ)なギターによる空間の埋め方は大いに参考になります。
・MO'SOME TONEBENDER
オルタナからサイケまでを強烈に表現する百々和宏のギターはかっこいいし参考になります。ムスタングですしね。
・NIRVANA
これはなんというか、むしろ「被らないように気をつける」的な部分で参考になるかも。それっぽくグランジしようと安易に考えて曲を作るとどうしても彼らっぽくなってしまいます。よく勉強して特性を学ぶべきかも。あとあれだけシンプルなギターでクソかっこいいのはカートの歌が素晴らしいからであることを忘れてはなりません。
・SPORTS
わりと最近聴き始めたんですけど良いです。ポップで時々シューゲな3ピースギターロック。今一つ売れなかったのはその検索しにくすぎるバンドの名前のせいじゃないでしょうか。
・Syrup16g
五十嵐がThe PoliceやU2が好きなこともあって、コーラス・ディレイを使った空間的なギターが結構多いことがポイントです。空間系を使いこなすNIRVANA的な見方が出来ます。歌のウエイトがやや大きいか?
・The Who
ロックンロールと言えばThe Whoです。彼らも四人バンドですが、ピートのギターはシンプルかつ感情的なので3ピースに適しています。まあババオライリィはシンセなしギター一本じゃあ厳しいけれど。でもループさせればいけるよねえ。
・Yo La Tengo
Galaxie 500の進化系(笑)。ギター一本でマイブラしてしまうそのギターワークは凄く頼もしいです。そしてヘロヘロの歌はなぜあんなに美しいのだろう。
今回は半分以上が自分用の「頭の中整理メモ」的なものです。訳がわからなくてごめんなさい。








