『PARADISE LOST』
- アーティスト: ART-SCHOOL, ACO
- 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
- 発売日: 2005/10/19
- メディア: CD
1.Waltz
いきなりグランジっぽさ皆無のモグワイ・シガーロス的ポストロックから始まることで、バンドの変化を雄弁に語った曲。豊かな海を想起させる音づくりはさすがモグワイスタッフが関わっているだけのことはある作り。ボーカルが不安定なのはまあいいかって感じになる。キーボードや女性コーラスなど、ライブ再現不可能要素満載で、ライブで見てみたいけどおそらく無理でしょう。
2.BLACK SUNSHINE
前曲から続けて始まるのは、コードカッティングを軸にしたポップなミディアムナンバー。堅実な作りをしていて、それだけに既聴感もままあり、ちょっと面白みに欠ける気がしないでもないが、きっちりとしたリズムは聴いてて気持ちいい。こういうシンプルな曲でもよく聞くと細かいSEっぽいのが入ってたりする。何故かPVがある。
3.ダニー・ボーイ
アコギと透明感のあるギターが優しいゆったりとした曲。サビの盛り上げもギターの轟音ではなくシンセとコーラスを使用。奇麗で少し洒落た音世界。Aメロをサビの後にもう一回歌う構成はやっぱり好き。透き通っている感じの曲。
4.Forget the swan
これだよこれ!M2なんかよりもこっちのPV作ってよ!個人的にアルバム中一番の出来だと思います。USインディの元気いっぱいでキラキラしてて、ジャリジャリした音で疾走するあの感じそのまま。流石ダイナソーJrの曲名をそのままパクるだけのことはある。ピクシーズチックなベース、ヤケクソ気味で前のめりなドラム。可愛らしいノイズやしょっぼいリフを弾くギター、その中を基本いい感じに抜けの悪い音でしかもFMフィルターがかかったりしながらも突き抜けていく、セックスばっかり歌う情けないボーカル。向こうの国の太陽の下、Tシャツ野郎どもがプールサイドで狂ったように演奏しているかのような勢い。3分10秒!すべてがそれっぽ過ぎて笑えるほど。
5.クロエ
前曲から続けて始まります。こういう演出別に要らないけどなあと思うのは、曲単位でしっかり分けとくとプレイリストを作りやすいからです。しかしこの曲と次の曲の繋ぎ方は多分初めから意図されてたものじゃないよなあ。上手いこと繋いだもんだ。いい曲です。そしていい流れ。MIXが変わって音がややくっきりしている気がします。
6.あと10秒で
前曲のバックで鳴ってた音が鳴ったままこの曲のイントロが始まるところはアルバムの一つのハイライトか。これも多分MIX加減でミニアルバムよりパワーアップしてたはず。飽きやすい感じもするけど、流石にかっこいいなあ。歌詞のヤケクソ加減が好き。この曲までの流れのバランスの良さは評価すべきところ。
7.欲望
ここで急に勢いが途絶えて重苦しいイントロへ。アコギが鳴る荒涼としたAメロから重いサビにという、静と動を強調したナンバー。静のパートの音が奇麗なだけに、動のパートはもっと激しくやってほしかったかなあ。個人的には、別に無くても困らないタイプの曲。『羽根』とかと被るイメージ。
8.刺青
漢字二文字の曲が連続すると少し見栄えが悪いですね。いい曲です。やはり再MIXによって音がくっきりはっきりしてますが、前verと比べるとベースが引っ込んでしまった感じ。こればっかりは趣味ですが、前verの「圧倒的(笑)」なベースの方が好きかも。
9.LOVE LETTER BOX
可愛らしいアルペジオから、ポップなエモ的展開をする曲。トレモロがかったギターが入ってくるのが良い。あとコーラスとか。あと間奏のギターとシンセだけのところとかも可愛い。タイトルとかちょっと前向きな歌詞とかも含めて「可愛らしい」って感じの元気のいい曲。もうちょっと演奏的に毒があったら大好きだったかも。
10.PERFECT KISS
奇妙でファンキーなリフのギターとワウのギター二本の絡みが中心となった、『クロエ』系統の曲。こっちの方が幻想性を剥ぎ棄てて大人的で猥雑な感じを強調している。ドラムのオープンハイハットのタイミングが好き。あとコーラス。コーラス大事だなあこのアルバム。
11.PALADISE LOST
一気に緊張感のある雰囲気になだれ込む、『羽根』やM7的なナンバー。そういうのの中だと一番キレがある気がする。とりわけドラム。こういうドラムをいかにもポストロック〜って曲で聴いても何とも思わないけど、こういうポップソングと絡むとかっこいいなあ。クールに駆けるAメロからやたら神々しいBメロ(サビというほどは盛り上がらない)に入るのがかっこいい。やたらいろいろな音が入っていて面白い。あと終わり方がクール。「盛り上がらない」感じが新鮮で良いが、こんな地味な曲をよくタイトル曲にしたなあとも思う。好きだけど。
12.僕が君だったら
歌やギターのメロディも良く、サビの音の世界観も奇麗なスローバラードだけど、正直かなり印象薄い。奇麗なんだが地味。なんかアルバムの最後に入ってそうな雰囲気、『君は僕の物だった』『PERFECT』とかの系統の曲みたいに思う。これの後に曲が続くから違和感。曲順が悪かったか。神々しい感じのアレンジはいいんだけどなあ。
13.影
イントロが好き。ひょろいシンセにギターが重なり、ベタなメロディになる。Aメロのリズムギターもいかにもすぎるブリッヂミュートで、そこに可愛らしくも飛翔するメロディが乗って、なんだかGet Up Kidsとかに通じる微笑ましい感じの世界観がある。あと間奏のアレンジがいい。後ろのひょろひょろした音がいいんだよなあ。うーんポップだ。ただラスト前の曲としては荷が重いか。やはり曲順が……。
14.天使が見た夢
ああ、こういうもろシガーロス的な子守唄ポップソングはちょっと趣味じゃないです。ドラムに掛ったエコーが奇麗だけど、メロディはいいんだけど、ちょっと眠たすぎる。コーラスとシンセが活躍する。このアルバム、曲によってはギターの目立たなさが凄いんだよなあ。やっぱりギターのかっこいいARTであってほしいものです。しかしだるい。アルバムの最後は爽やかにすっきり終わる方が好きです。
第二期ARTになって作った最初のフルアルバム。前のアルバム『Love/ Hate』からは二年ほど経っている。
レコーディングスタッフが異様に豪華で、モグワイやベルセバのプロデューサーであるトニー・ドゥーガンのスタジオで彼の協力と助言を受け録音し、MIXは彼とそしてあのデイブ・フリッドマンによって行われたという徹底っぷり。さらに一部レコーディングにモグワイのメンバーまで参加していたりしてなんか物凄い。これまでの「下北鬱屈系」の世界観が吹き飛んでしまいそうな布陣である(まあ吹き飛ばなかったのだが。流石木下というべきかハハハ)。
ただ、そうした急激な環境の変化のせいか、色々なサウンド的挑戦を試みて、その結果内容がやや散漫になった感じはある。そもそも一曲目の世界観がなんかそれ以降に上手く繋がっていない感じがする。もう一曲ああいう壮大な曲があったらバランス取れてたかも。あと、前半は緩急の付いた曲順でいい感じに進むけど、後半はちょっと緊張感の足りない感じがする。最後が弱いというか、山場にならず終っていく感じが寂しい。ポップな曲とまどろむ曲とM7.8.11の順番を変えたらマシになるかなあ。あと、名曲『LOST IN THE AIR』をアルバムに収録しなかったり(その代り『刺青』が入ってるけど)。ちなみに彼は次のアルバムでも『フリージア』において全く同じことをします)。折角トニーにMIXまでしてもらっていたのに(初回盤はボーナスディスクとしてトニーMIXの『LOST〜』とデイブMIXの『Waltz』が付いてきます)ああ勿体無い。収録すれば後半に山場が作れたろうに。
という訳で、実はこのアルバム、彼らの4枚のフルアルバムのうちで一番聴きこんでないですし一番好き度が低いです(まあそれでも好きなんだけど)。でも要らない曲を何曲か外して、『LOST〜』入れてプレイリスト作ったら結構いい感じでした。ただM4だけはひたすら誉めたたえたいです。This is Arternative!!!って感じで、本当に大好きです。まあ過渡期だったんでしょうね散漫なのは。個人的には色々なアレンジの曲が入ったカラフルなアルバムよりも、一色はっきりとしたものがあってそれについて展開していくアルバムの方が好きです。ARTだと『Love/ Hate』とこの次のアルバム『Flora』がそれかなあ。どっちも好きなアルバムです。
ちなみに肝心の音の質だけど、それも同じ路線なら次の『Flora』の方が好みです。というか益子氏は凄いな。
とりあえずレビュー終了まであと5枚か。DVDは書きません。持っていないからです。








