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『Love/ Hate』

2008年03月14日 00:28

LOVE/HATE(初回)

LOVE/HATE(初回)

1.水の中のナイフ

1stアルバム一曲目が爽やかな疾走感溢れるギターから入ったのに対し、こっちはいきなりアルバム中でも最も重たいリフで始まる。そのあまりのニルヴァーナっぷりに引く人もいると思う。『Rape Me』やん、って。やってることもやたら少ない。四つのパワーコードとBadd9th、後若干のフレーズしかギターの音は聞こえてこない。しかし、これが作曲上の手抜きではなく、ストイックな曲構成に聞こえるところがファン心理。もうこれ以上の要素が本当に必要だと思わない。このアルバムはそんなアレンジの曲が多い。歌にしても、Aメロとサビの二つのフレーズをひたすら反復するだけなのに、それ以上のメロディの必要を感じない。むしろその単純さが胸を打つ。

話がそれた。この曲はお得意の冷えたメロディとそこからの爆発が上手く嵌った曲。サビの叫びはまさに木下。ハードロック畑の、発声法とかがきっちりした安定してパワフルな歌唱が出来る人には一生歌えない類の歌。歌詞は「透き通るように美しいものと、無様に這い回る自分」みたいな、中二病の一つの大きなテーマだがしかし、ここまでしっかりとやられるともはや笑うこともできないし、十分な説得力がある。暴れすぎないドラムを中心に、演奏も重さとキラキラさを無理なく結びつけ、世界観をしっかりと表現しきっている。サビのギターの歪みのつぶれ具合の惨めなこと。素晴らしい。

2.EVIL

先行シングル曲。一曲目の重たさを受け継ぎ、なおかつ感情を排したような拷問機械的なサウンドがアルバムの「Hate」の部分を強く押し出す。ストイックさはより増し、それだけに爆発の切れ味はアルバム中でも最も鋭い。ブツ切れの最後がそのまま次の曲の枯れたイントロに繋がる構成もきまっている。

3.モザイク

前曲がブツッと切れてこけおどし的なドラムが鳴り始める。世界の果てで鳴ってる様なギターの音が寂しさを醸し出しながらもサビで虚勢を張る。単調さもなんのその。

4.Butterfly Kiss

浮かんでくるような瑞々しい音が最後まで流れ続ける、美しい曲。デスキャブ的な奥行きとシューゲイザー的な雰囲気を持った浮遊感溢れるギターサウンドがあまりに素晴らしい。詞に関しても言葉の選び方が良く、儚さの表現が痛い。ボーカルにかかったリバーブも気持ち良く、歌自体も良く歌えている。歯切れのよいドラムがまた滑らかに曲を進行させる。

5.イノセンス

この曲のサビのギターフレーズが映画『ボーイズ ドント クライ』のオープニングでいきなり鳴り始めた時はビビった。パクリかよ!(無論木下がパクる側)しかし好きだ。虚しく這いまわるようなAメロから一気に飛びあがるサビへのメロディが気持ちいい。飛び上がった割にギターの音はぶっつぶれていて飛び上がりきれていないのがまた痛々しい。パクッたギターフレーズもこれ大好き。力なく夜空を見上げているような情景が浮かぶ、と思っていたら映画でそのままの景色だったのを観た時は笑った。珍しくフェードアウトするこのギターフレーズが切ない。

6.アパシーズ・ラスト・ナイト

曲全体を流れるアルペジオがHouse Of Loveの『Shine On』のパクリだということはファンの間ではあまりに有名。しかしまた見事に重苦しい。サビの美メロの高揚というかうねりというか、そんなものからエフェクトがかったギターの渦へ。シューゲイザーの陰鬱な部分を強く押し出している。何か引っかかっているかのようなドラムがまた重い。これと次の曲の流れがアルバムの「底」に当たる。

7.Love/ Hate

重い。タイトルチューンは近作中最もうわものの装飾が少ない、陰鬱で空虚なスローナンバー。多分これがあったから『LILY』は外されたんだろうな。『LILY』はまだサビでグランジになるからよいが、これはサビでもギターは爆発せず、叫びもせず、沈んでいく。一瞬だけ金切り声になるボーカルも陰鬱さの中に埋まっていく。アルペジオは周到にキラキラさを失っており、ただただ立ち尽くすような世界観の虚しさの上をなぞる。ドラムのどっしりとしたプレイが荒涼とした曲風景の中で何とか前進を続ける。まあ歌詞はちょっと個人的すぎるかな。25歳がどうのこうのとか知るか。

8.ジェニファー'88

仕切り直し。陰鬱で激しい前半が終わって後半戦が始まる。前曲の陰鬱さを吹き飛ばす威勢の良いイントロとポップなメロディ。アルバム中で若干浮いてはいるが、これが無いと重すぎて聴きづらいかも。こういうバランス感覚は好きだ。やけくそな感じの激しさが眩しい。

9.Bells

また陰鬱か。後ろで上昇と下降を繰り返している風のような音が印象的。リズムも少し変った感じというか、どこか懐かしいというか。つんのめった感じ。背景の音のおかげで間奏の掛け合いがかっこいい。サビのメロディは弱いかな。アルバムの中では一番好き度が低い曲。まあそれでも好きだけど。

10.Skirt

ここからがアルバムの山場。どうやら木下にも中二病的な自覚はあるらしい。それが表れたサビのシャウトが印象的。何と頼りない。間奏やアウトロの叫びの情けなさよ。乾いたアコギ主体のサウンドがいつの間にか轟音になり、唐突に世界が終ったかのような静寂から次第に盛り上がっていく様は非常にエモ的で美しい。そう、間奏からの爆発から昂揚してるんだかしてないんだかの流れはまさに彼らの18番。アコギの音だけ残るアウトロから次曲のノイズとベースのイントロへ突入する。

11.UNDER MY SKIN

絶対にアルバムの流れで聴いた方が映える疾走ナンバー。前曲にも増して情けない(技巧的にもね)ボーカルがかっこいいことこの上ない。ライブでちゃんと「繋いでよ」って叫べよ!そこ一番大事だろうが!

12.プールサイド

ブッチャーズの同名曲とは特に関係はない。影響は受けてるかもしれんし(無論木下が)、重なる部分はあるけど。前作における『シャーロット』的な位置の曲。そのタイトルに違わず水を想起させるアルペジオから、水中からいきなり浮上するようなサビへの展開がまさに!って感じ。まーた「ヘロインと愛」って歌ってる。相変わらず使いまわしだがご愛敬。このサビからの轟音はARTの全轟音の中でもトップクラスの美しさだと思う。このキラキラしているわけでもザラザラしている訳でもない、何とも食えない轟音こそが彼らの最大の個性だと思うんですがどうか。UK的でもUS的でもない独自のシューゲイザー哲学を持っている気がする。木下のファルセットもこの轟音を上手に泳ぎ切る。ドラムも開放のされ方が感情的かつクールで良い。なんだろう、陰鬱とも違う何かが渦巻いている。「Love」と「Hate」がごちゃまぜになって渦巻いているような印象。強烈なイメージ喚起曲。

13.しとやかな獣

先ほどの轟音から抜けて急にクリアになる視界。同じミドルテンポでも先ほどの混沌とは全く逆のベクトルに向かう曲。R&B的なタメを大事にしたドラムからキラキラしたギター、飛翔するメロディと、退廃した世界観から歩きだそうとする歌詞。宗教的な輝きで以てねじくれたポジティブさに辿り着く。アルバムの物語のエンディング的な性格を持つ曲。

14.Sonnet

そしてエンドロール。外国映画のセリフのコラージュをバックに、アコギと若干のシンセと歌だけで進む曲。ひたすらAメロとサビの二つのフレーズだけが繰り返される。脆い脆いおうたが純粋性をうたった歌詞とよく合う。音数の少なさとファルセットの多用と後ろのしゃべりの不気味さが最後に寂しさをどっさりと残していく。「Girls back teen!」どの映画から持って来たか知らないけど、いいフレーズ。

初回限定ボーナストラック.Seagull

どちらかと言えばインディ時代から1stアルバムまでの流れの曲。本編ではあまり聞けなかったポップでパワフルな演奏が聴ける。まあアルバムの色には合わないかな。曲自体はいかにもUSインディって感じがしてなかなか。ガリガリジャリジャリのギターが普通に痛快でかっこいい。歌のメロディは極端に少ないのに十分にかっこよく聞こえるのは演奏のテンションが高いからか。ボーカルも吹っ切れ気味で良し。


ART-SCHOOLメジャー2ndフルアルバムにして、第一期メンバーによる最後のスタジオ録音音源。ついでにキャリアを通じての、少なくとも第一期における絶頂期。周囲の盛り上がりとかを考えても、バンドにとって一番恵まれた時期だったかもしれない。バンドの内情を考えなければね。

Aメロのフレーズを四回、サビのフレーズを四回、あとイントロと間奏とアウトロみたいな、普通に考えたら手抜きか稚拙としか思えない作曲法で曲を量産し、ギターやベースのフレーズも繰り返しが多く、アルペジオのパターンも似たり寄ったり、こういったマイナス的なファクターばかりで出来たバンドART-SCHOOLが、とりわけその技法に拘ったアルバム。第二期ではもっとサウンドの幅が広がり、メンバーの自由が利いた曲が作られるが、第一期、とりわけこの時期の曲はひたすら全員が人権を放棄しバンドに尽くすというスタイルをとっている。ひなっちとか、後の自由すぎる振る舞いを観ているとこの頃のストイックさは不思議というよりもむしろ不可解なほど。「そりゃこういう作り方したらストレス溜まりそうだなあ。解散しても仕方ないかなあ」というくらい突き詰められたこの技法によって、木下理樹は自分の持てる限りの世界観を表現することに成功している。これ以降歌詞の作風がガラッと変わるのは、ここでいったん出しきってしまったからだと認識する。そのくらいギリギリのものを感じるし、これ以上に緊張感に溢れた作品は彼らの中にはまだないと言い切れる。特別な時期だったんだなあと思う。どの音も緊張し、また空っぽである。なんか上手く言えないなやっぱり。素晴らしいんです、素晴らしいんです。

作風的にはもはやグランジというよりもエモに近いと思う。というか、木下独自のグランジとかエモとかシューゲとかの解釈が結実した感じか。第二期はポストロック風味のギターロックに傾いていくが、その前に激しさ・荒々しさの総括っていった感じ、いや、ここで総括したから以降作風を変えざるを得なかったのか。

あと、この時期が一番歌うまいな木下は。ライブは知らないけど。


個人的な話をちょっと。高校の頃はロッキンオンジャパンを買っていて、その最初に買った号の後ろのCDレビューの一つ目がこのCDだった。そのころは音楽をよう知らなかったから、雑誌の隅々まで読んでしまおうとする訳だけど、まあ目についた。その頃はネットの情報なんかもかき集めて、とりあえずCDの評価を知ることにがんばっていた。それで、発売当時は結構このアルバムは酷評されていたりして、「単調すぎる」(まあ今でも思わないことは無い)だの「作風を広げようとして散漫になっている」(今となってはとてもそうとは思えない)といった評価をされていて、私は他人の評価に流されやすい人間だからそういうのを知って「なんかART-SCHOOLって駄目なバンドらしいぞ。よし、後回しでいいや。それよりもくるりナンバガスーパーカー一義~」といった感じになった。大学入って西新に住んで、西新のゲオで他のCDに混じってARTのCDも徐々にレンタルしていくが、昔の思い込みは強く、結構ずっと軽視していた。

しばらくして、福岡市の海沿いの道、そこは都市高速が通っていて、恒常化倉庫かよく分らん人工的・産業的な建物がやたらいっぱいあって、で、都会的な殺風景さがあって、っていう道を発見した。その光景にすっかり心奪われた私はなぜかその時何となくこのアルバムをiPodで流していて、そしたらモザイク以降の優しいような暗いような虚しいような音が風景にぴったりとはまってしまった。私はこのとき「ああ、いつかこの風景と音を誰かと共有できたらどれだけ素敵だろうな」と思った。まあそんなことがあって、また色々あって、結局ハマったってわけ。福岡市在住の人でこのCDを聴く人は、ぜひとも人工的な海のそばでこれを聴いてください。まるで世界の果てにいるかのような虚しさと美しさが降ってきます。個人差はあります。


ねえ、世界の果てには好きな人と二人でいたいって気持ちは、誰にだってありますよねえ?

中二だって?分かっているよ、そんなこと。



絶対後で読み返したら痛々しいんだこの文章は。

D

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