新たな音楽を楽しむシステムについて
皆さんは自分の好きなアーティストの好きな曲群から自分好みのプレイリストを作成した経験はおありだろうか。そして、それを自己満足ではなく、ほかの趣味の合う人に見せて評価してほしいなとか「オレならここはこうするよ」みたいな意見を交わしたいと思ったことはおありだろうか。
例えば友人同士ならMDやMP3プレーヤーで自分の作ったその連なったものを紹介し合えるが、それより外側のつながりにおいてはそういった直接的な方法で自分のプレイリストのこだわりを伝える方法は限られる。ネット上なんかでも従来は自分のプレイリストを「曲名の羅列」で表して評価してもらったりすることが多かった(んじゃないかな。知らないけど)。
こういった、「自分のこだわりのプレイリスト」を積極的に公開する手段の一つがDJプレイなのだろう。最近ではDJの機材も十二分に普及し、楽器屋に行けばなんかとりあえずあるしネットでもお求めできるので、街のヤンキーでなくとも、ひきこもりであろうともDJの技術を学ぶことはできる。私もちょっとやってみたい。
しかし、私がここで主題に上げたいのは次の手段である。
「ニコニコ動画」については、ちょっとでもネット知識がある人ならばその多くが知っていると思う。所謂動画共有サイトとでも言うんでしょうか、様々な動画ファイルを無料で見ることができる(プレミアムは知らないよ)。そこには著作権に触れるんじゃね?みたいなアニメ動画やらPVやらもたくさんあって、今結構その辺の問題が様々な場所で話し合われているが、開始からしばらくするとユーザーが自分で動画を作って投稿したものも増えてきた。今ではむしろそっちのファイルの方が多いだろう(多くは著作物を加工したMAD動画とかで、もしかしたらPVとかよりもさらに著作権的にヤバいのではとも思うが、でもそういった楽しみってのも文化としては非常に面白いから著作権団体は黙ってろと言いたいところああでもニコ動で人生を駄目にしている人も多いんだろうから難しいところだな)。
こういった投稿作品の中で一ジャンルとして築かれたものが、「好きな曲を詰め込んでみたメドレー」とかいったものである。これは作者が自分の好きな曲を集めてくっつけて、ちょっとイラストや写真なんかも乗っけてみたりして作った動画だけど、これが今面白い。それなりに名のあるアーティストならそのアーティスト単独のプレイリスト(「私的ベスト盤」みたいなのや「レア曲集」といった感じ)が幾つかあったりするし、複数のアーティストの曲からあるコンセプトの下(大概趣味とかが多いけど、でも人の趣味って偏りが出るもんだよね。偏り=傾向=個性!)編集したものなんかもあって面白い。その選曲にはやはり作者なりの理由がある訳で、その選曲には作者のセンスやら趣味やら美学やらが反映される。もはやその連ねられた曲群は単なる曲の集まりではなく、投稿者の意図した「作品」である(もちろん完全じゃないよ。著作権的にもどうかは知らないよ)。DJも自分のこだわりに従って曲を連ねて表現するが、そのようなことがもはや今日ではネットでも行われているのである。しかも、こういったことをしている投稿者の多くは非DJ的ないわゆる「ファン」ややもすると「オタク」な人々であることが多い。つまり、DJとは根本的に人種の違う人々の視点によって作られるそれはよりファン的である。DJのようにエンタテイメントとかそういうものを表現するためではなく、ただ単に自分の作ったプレイリストを共有したいだけというのは、確かに多くの人に対しては広がっていかないものかもしれないが、ファン同士の交流としては十分どころか、その投稿者のこだわりがより露骨になりやすい(やはりDJには色々と制約がつきものであろう)ので、かえってファン同士の意見と想像の交換に役立つのである。
しかし、同様のことは動画投稿サイト、つまりユーザーが動画を投稿できる環境でならどこでもありそうなことである。しかしそれが以外とニコニコ以外でこういうのは見当たらない(詳しく検索すればあるのだろうが、そこまで手間をかけなければならないのならそれは親しみ深いものにはならない)。こういった動画文化はほぼニコニコ動画特有のものと言って差し支えは無いはずだ。
その理由としてはいくつか考えられるが、一番大きい要因はやはりコメントである。ニコニコ動画の最大の特徴と言えば、動画の上に大胆にもコメントが表示され流れていくことであろう。これの大きなところはまず、ユーザーが動画を見ながらコメントも見ることができる点である。また、リアルタイムで流れてくるコメントはその動画の場面場面においての感想などを表す。要は「●●ktkr!●●は神曲」とか「ここのフレーズは神!」とかそういった率直な意見の交換に非常に役立つ。なにせ実際にその部分を聴きながら意見したり意見を見たりできるのだから単純で率直なはずだ。これが一番はっきりと効力を発揮するのは何より「弾幕」であろう。解説すると、曲の中の「ここだ!」と皆が思うフレーズにおいて皆がそのフレーズをコメントで「合唱」というか叫び散らすものである。例をあげれば、「言いたいことも言えないこんな世の中じゃ〜」ときた次の瞬間、多くの人が「ポイズン〜!」と書きこむのである。これほどファンとして(又はネタとして)共感できる場はなかなかない。感情的にはこの弾幕とライブ等のそういったものとの差はかなり少ないはずだ。Rideの『Dreams Burn Down』のPVに至っては、曲中に何度か繰り返される轟音パートがやってくるたびに「ギュァァァァァァァッァ」だとか「GYAAAAAAAAAAAAAA!」とかいった「轟音」コメントが弾幕となって画面上を覆い尽くしていた。なんと微笑ましくも素敵な(そして適度にオタク的な)ファン同士の交流だろうか。
そもそもニコニコ動画は2ちゃんねる発祥(と言っても過言じゃないよな多分)なので、そのコメントもmixiとかの他人行儀のものでなくもっと直接的で正直なものであるのが気持ち良い。ここからは推測だけど、ニコニコ動画が登場するしばらく前に2ちゃん、特にvipでは「●●垂れ流し」といった、やはり自分のプレイリストのMP3ファイルを垂れ流して、それについて語り合うスレッドなどがしばしば立てられ、それなりの人気を持っていた。やはりそのスレッドの「リスナー」がリアルタイムで感想なんかを書き込んでいくわけだ。ニコニコ動画はこういった流れから出てきたのだろう。しかも物凄く大胆な合理化(動画上にコメント)という画期的なアイディアを伴って。
最近ではさらに効率的になって、動画を見て気に入ったアーティストのCDなんかを買えるリンクを張る「ニコニコ市場」なる機能まで存在する(これは別に無くてもいいかなあとは思うけど)。
こういったシステムはファン同士の交流に新しい形を与えたけれど、さらには新規ファンの開拓にも(当のアーティスト本人が知らぬところで)役に立っている。これは特にオリコン上位とかの有名なアーティストではなく、もうちょっとマイナーな、しかしそれなりのファンベースのあるアーティスト、いわば「インディでメジャーな」アーティストなどに当てはまりやすい。ニコニコ動画はMySpaceと同等か、もしかしたらそれ以上にこういったインディちっくな宣伝活動(あくまでも非公式的だったりするんだけど)、所謂「口コミ」として役に立っている。音楽の趣味が多様化している今日においては本当に相応しいことなのかもしれない。
まあ著作権的には結構ブラックだし、動画で満足してCDを買わない人もいるだろうからその功罪は問われるべきところではあるけど。ただ、ユーザーの無責任な意見としてはこういったサイトは非常に面白いし得るものも多くて素晴らしいですけど。実際私も「アートのマイナー曲集」みたいな動画を見ては奴等の廃番シングルを集めたり、スマパンの動画を見てコメントなんかを見ながらスマパンを再発見したし、筋少の『いくじなし』の動画を見て久々に相当鳥肌が立ったりと、いろいろ美味しい思いをしている。カスラ●クはうざいけど、こういった楽しみがある日本はなかなかに素晴らしいですよ。私もiPodに幾つも貯め込んだプレイリストを動画にして公開してえ!やり方が分らんけど。







