夜の空にクリーム注いで飲み干したら荒野の味
夜に、六本松から天神・中州を通って家に帰るのは、何故だか昼間よりも距離が長く感じるし、風景も違って見える。私は現在位置を見失う(『そんなものとっくに見失ったわ!』という意見は置いといて)。
六本松の交差点で、空き缶を沢山袋に詰めた自転車を走らせる人がいて、私がその人の前でふらついてしまって進路妨害をしてしまったら「ちっ」と舌打ちされてしまった。僕はその場は怖くて謝って逃げ、それからしばらくして何でそこまでと思って怒りがこみ上げてきたが、その人の姿を思い出すと怒る気も無くなる。
天神駅の真ん中くらいの入り口のところで人が倒れていた。最初私は布が落ちているのかと思ったが、よく見たら人だった。きっと彼には帰る家が無い。私は彼を助けてあげるべきだった気がするが、やはり怖くて逃げてしまった。それとも、面倒くさくて無視したのだろうか。その周りを歩く人々は、まあスーツの人なんかはともかく、これからパーティという格好の人だっていたし、オッシャレーなカップルだっていた。見て見ないフリをするのは私も得意だった。
夜はそれでも何となく廻る。
あるときはファッション系の広告だったり、あるときは商品の広告だったりで、女性の姿をフューチャーしたものがよく見られる。大抵彼女たちは笑っているが、表情はそれで固定されている。動きはしないと分かっていても感じる恐ろしさもあるが、むしろ板に張り付いてしまった笑顔そのものに恐怖する事もある。その笑顔は所謂商品であるわけだし。彼女たちはそこで降ろされるまで不特定多数に笑顔をばら撒く。
中州で男に運転中の私の自転車のかごを触られた。手を折ったことにして金をせびろうとでも思ったのか、それとももっと単純でちっぽけな悪意だろうか、暇つぶしか。もしかしてホモだったりしないかなあ。ケツを触ろうとしたら自転車のかごだったみたいな。残念ながらそいつの顔を見ていないので、いい男かどうかは分からなかった。またその人とすれ違ったら、今度こそ掘られるかもしれない、という未来的被害妄想(もしかして願望なのか?ううん、そんなはず無い、そんなはず無いはず)。
晩飯を早く食いたいのに街はどうもこうもならん、金が無いと。
くるりのアルバムの感想。これはもしかしてNIKKIよりもポップなんじゃなかろうか。女の子はとても食いつく事だろう。ああ、それは嫌だなあ。私の小さな心がそれは嫌だと言っている。このジェンダー野郎!作品ですが、全く難解ではなく、とても聴きやすい作品です。でもなんと言うか、わざとらしいポップでもないですね。初期くるりの持ってた『日本的な叙情性・メロディ』が実は西洋のものだったのかもという再認識。どことなくメロディや歌詞における『君』との距離感などは初期を思わせるものがありますが、激しい怒りややるせなさみたいなのは減退し(アナーキーインザムジークは例外か)、ほんのりと甘い倦怠と諦観がその空きを埋める感じ。優しさはある程度一貫したものがあります。クラシッククラシック言ってましたが、モロにそういう曲は数曲くらいです。山崎洋一郎のうやうやしいライナーノーツによると、もっと根源的な、メロディやリズムに関してそういう要素が現れている、らしいので、ということは初期くるりの叙情性はクラシックなのかもしれません。まあ、そういう評価も結構ありましたね。さよストとかの時期。
全体の時間は思ったよりも普通で55分。これは初回限定のボーナストラック込みで。しかし初回限定盤に洋楽でもないのにボーナストラックを入れるところなんかは無駄に挑戦的です。まあ今回シングルまだ一枚しか切っていないからPVのDVD入れようにも入れられないでしょうけど。個人的にはDVDは基本的にいらない(時々当たりはあります)ので、ボーナストラックの方が嬉しいです。
次は何をするんだろう。ちょっと思いつけそうに無い。今回の作品を本人が『美しいノイズを追求した向きもある』とか言っていたが、果たして。後、私の事前の予想の、アルバムの雰囲気が『The World is Mine』に煮るだろうっていう予想は結構外れましたが、どこか一歩引いたポップさを感じさせる点ではちょっとだけ合っているかもと、無理矢理にでも自分の判断の失敗を認めません。
いいアルバムです。聴きやすい。メロディが軽くて可愛らしい。NIKKI以上に。だがそこがいい。くれぐれもロック的なものを過剰に求めないように。
- アーティスト: くるり, 岸田繁
- 出版社/メーカー: Viictor Entertainment,Inc.(V)(M)
- 発売日: 2007/06/27
- メディア: CD








