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ついに

2009年04月10日 22:19

初デジタル・リマスターのビートルズ全アルバム、9月9日世界同時発売








ままままままままままままままっまままままままままままままままままままままままままままままっっまままままままままままままままままままままあっまっままっまままままままままっまままままっまままままままままmっじでえええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!





しかもぼっつぼっつぼっつぼおぼぼぼぼぼボックスうううううううううううううううううううううううううううううううううううううう!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!




どうせ「デビュー五〇周年記念」とか言って2012年までしないつもりだと勝手に思ってた。
ええと……誰か私が今持ってるビートルズのCD欲しい人いますか(笑)


こっちの方がいい記事だ。
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The Beatlesのレビュー:残り二曲『Free As A Bird』と『Real Love』

2009年01月02日 07:50

『Anthology』の曲を全部やったりするとあまりにしんど過ぎるので、やりません。確かに未発表曲とかもありますが、どうかお許しを。何曲かは気が向いたらそのうちするかも。

とりあえずこの二曲は、当時公式な「新曲」だったので、公式のディスコグラフィーにカウントされるものだと思っております。PVも凝ってるしね。


1. Free As A Bird (『Anthology 1』に収録)

曲の前にインタビューが入っていたのと、PVの解説のために、あえてYoutubeではなくニコニコ動画をあげております。ご了承ください。

ジョンが77年に書いた原曲(当然この頃はビートルズはとっくに解散して、各自ソロをしています)、完成させられずに放置された「没曲」なのかしら、そのテープをアンソロジープロジェクトで集結した残り三人の元ビートルが弄くり回して完成させた、半ばでっち上げた「新曲」。元のバージョンはジョンのピアノと歌だけのシンプルなものだが、それに大胆に手を加えて、しっかりと「ビートルズ」サウンドにしている。再結成が「テープ弄り」によって成されるとは、なんともビートルズらしい。

で、曲はリンゴの「ドン、ドン」とスネアを二回打つところから始まり、そこから一気に空中に投げ出されたような開放感に導かれる。乾いた青空を思わせるような、円熟味を帯びた音空間、そのイメージを作るのはジョージのスライドギターとリンゴのどっしりしたドラムであろう。この曲においてポールはベース、コーラス、アコギ、ピアノを担当しているが、あまり出しゃばらずに、むしろジョンの存在感を大切にしている印象がある。曲は開放的なサウンドに乗って言葉数少なめに歌うジョンのパートと、緊張感でいったん空間を圧縮するパートの繰り返しとなっており、後者は一回目をポール、二回目をジョージが歌うというニクい演出。曲自体は少ないメロディをゆったりと使った感じで、ソロ以降のジョン的作曲法であり、まあ若干出来が悪いような気もするが、それを他の三人が上手くカバーして、中期ビートルズの曲を後期ビートルズが演奏しているような感じになっている。最後のウクレレで終わるところなんかもビートルズ的お遊びが入っている。まあ、個人的には『Real Love』の方が好きだけど。

PV。これは物凄い。つまり、これまでの曲名とか歌の内容とかに引っ掛けまくった映像がずっと流され続ける。脅威の編集技術。ここでいちいち解説することなど到底出来ない程の情報量。この辺も『Revolver』『Sgt.Pepper~』とかみたいなセンスを感じられて良い。ビートルズをある程度網羅してから観ると、相当な情報量が見た人を何度もニヤリとさせる仕組み。これは見事としか言いようが無い。本当に、よくこんなの作れるな。


2. Real Love (『Anthology 2』に収録)

どうせなのでこっちもニコ動を貼る。

曲はジョンが79年に書いたとされる、やはりピアノと歌だけのデモ的なものに、他の三人が後から色々ダビングする手法で作られた。『Free As~』と比べると、こっちは二回目な分より自然に作られているというか、元々のジョンのデモテープもちょっとテープスピードを変えたりといった、ビートルズっぽい手法が自然に使用されている感じ。

原曲は割とゆったりした感じだったが、先述のテープ操作でミドルテンポにセットされ、それによってジョンの声が少しサイケな感じになっているのが賛否両論。ビートルズっぽいと思うけどなあ。マイナーコードの不穏なメロディから、ジョンの歌が浮かび上がり、同時に曲がゆったりとポップになる。こちらはジョンのポップソングライターとしての魅力が全開の良作である。リリカルなメロディはジョンのソロ的でもあるが、また『Halli Goodbye』みたいな可愛らしいメロディアスさも感じる。もっと言えば、より完成された、無理の無い『All You Need Is Love』って感じ。非常にシンプルで美しい、空に舞い上がったまま幸福感に包まれるようなメロディ。ここではジョン以外の歌は控えめで、コーラスに徹している。演奏もあくまでジョンの原曲を支えることに専念している。それでも十分にビートルズっぽく聞こえるのは、原曲の時点でビートルズっぽいメロディが多く見られるのと、やはり活躍するジョージのスライドギターによるものだろう。この曲はジョンレノンのソロバージョンも存在する(ジョンの『Anthology』に収録)ので、聴き比べてみるのもいい。どちらもかなり優れた曲だと思う。それにしても、ビートルズの今のところ公式で最後の曲が「Don't need to be alone」とかだなんて、なんて素敵なんだろう。そう、多分ジョンがソロ活動を再開する頃くらいに書かれた歌詞もまた、ビートルズ的な普遍性に富んだ、シンプルでいい歌詞だと思う。最後のタイトルのリフレインがいつまでも耳に残る。

PV。こっちはレコーディング風景と過去の映像を交えながら、色々なものが空へ帰っていくという、なんか感傷的なもの。ピアノ、『Sgt.Pepper's~』の服、楽器達、勲章、ビートルズのアルバム達が空に昇っていく。年を取った残り三人の笑顔や、それに挿入される生前のジョンの映像、そして最後はビートルズの頃の映像がフラッシュバックされ、そして街に『Real Love』が響き渡る、といった内容。『Free As~』ほど作り込んである訳ではないが、これもまた、ビートルズをバンドヒストリーも込みで理解してから観るとやたら感動する。ズルいんだよ作りが。マニアだけ喜ばせてどうするよ。「僕たちにそこまで没入してくれてありがとう。愛しているよ」ってか、出来過ぎだ。畜生。



とりあえず、これで長らく続けてきた(だらだらやってきた)「ビートルズ全曲レビュー」はいったん終わりです。見てくれた人ありがとうございました。何かの参考になったら幸いです。興味もって本とか読むと面白いですよ。あと、レビューについてはこのサイトを非常に参考にしました。中にはこのサイトの人の評価に引きずられた部分も多々ありで、なんだか申し訳ないですが、素晴らしいサイトだと思いますので、このサイトからビートルズに入るのも良いかもしれません。

あと、数あるビートルズ本の中にも、良書と悪書があります。参考に一つ、「入門」と銘打って読者に自分の価値観を植え付けようとする悪書を挙げておきます。最初はまっさらから聴くのが良いのかもしれませんね。んで一通り聴いてから解説本などを読み、マニアックに面白がるとか。
絶対買うなよ。読むならある程度聴いてから、「ああ、こういう考えの人もいるんだな」くらいに留めておく方が無難。




あ、年が明けましたね。なんか今年もよろしくお願いします。

『Past Masters Vol.2』 The Beatles

2008年12月30日 18:12

Past Masters, Vol. 2Past Masters, Vol. 2
(1991/07/20)
The Beatles

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1. Day Tripper
1と2は『Rubber Soul』期のシングル。両A面シングルである。この曲は世界中でもとりわけ有名なリフを主体に進行するポップソング。この時期にしては割とストレートな作りか。ジョンとポールがずっと二人で歌い続けるのが印象的。リフといっても同時期のキンクスみたいにダーティな感じではなく、もっとヘナヘナした感じになってるのがビートルズらしい。
2. We Can Work It Out
これ、何気に名曲。軽やかでポップなポールと、この頃からヘヴィな作風を取り入れ出すジョンの二つの作風が自然に噛み合った良曲。フォークっぽく跳ねるように歌うポールからボーカルがジョンに移った瞬間、急に曲調がシリアスになる。ワルツ調になったりもして(ジョージのアイディアらしい)、そこから強引にまたポップに戻るのを繰り返す。ビートルズのいびつさが上手く融合した数少ない例か。二人がこうやって歌い継ぐパターンの曲って意外と多くない。
3. Paperback Writer
3と4は『Revolver』期のシングル。この曲、曲自体はこの時期にしてはストレートな作風に思えるが、実際にやっていることはかなり凄い。まず、冒頭の複雑なコーラスワークはビーチボーイズにインスパイアされたものだが、ポールのベースもまたブライアンウィルソンに影響を受けたものらしい。ルートをあえて外れてリフを引き続けるベース。そしてギターのリフがまた非常にかっこいい。これらのリフと歌に付随するコーラスが合わさって強力なドライブ感を生み出している。歌詞もまた、B級作家(「ペーパ-バックしか出してもらえない」ライター)が出版社に自分の作品を宣伝するという内容。なんだそりゃ。
4. Rain
まさにこの時期を代表する名曲。ロックバンドとしてのグルーブ感とサイケデリックなメロディ・アレンジがシンプルな形で結合した見事な楽曲。ジョンの書いたメロディは独特のうねりを見せながら上昇と下降を繰り返す。地を這ったかと思うと次の瞬間には舞い上がるようなメロディ。そこにドライブ感を残したディストーション気味なギターがサイケさを加味し、リフ気味なベースが曲をかき混ぜ、そしてリンゴ自身がベストに挙げるドラム、ミドルテンポでフィルインの連発とブレイクを繰り返しまくるドラムが饒舌に歌っている。ブレイク時は宗教気味な浮遊感に苛まれ、それを突き破って入ってくるドラムに激しく興奮する。ともかくドラムのフィルが格好良過ぎる。単なる連打ではなく抜くところを抜いているのが非常にクール。コーラスワークがまた絶妙な音程を狙ってくるため非常にサイケ。そしていったん終わったかと思ったらまたドラムが沈黙を破って再開、逆再生されるボーカルで曲が倒錯しながらフェードアウト。サイケ感とドライブ感、そして王道然としたロックさが非常に高水準で融合した、本当に奇跡のような一曲。
5. Lady Madonna
5と6はサイケ期からその後に移行する際、マハシリの教えを求めてインドに旅行
に行くのだけれど、その前に作られたシングル。ピアノを主体としてホーンなんかも鳴り響く、また特別変な展開をすることも無くシンプルに愛嬌を振りまくこの曲がビートルズのサイケからの離脱を宣言する。大人っぽいポップさはロックというよりはやはりポップ、それも後に「捻くれポップ」といわれるようなそれである。ポールも太い声でがっちり歌っている。パパパパ、パパパパと入るコーラスが魅力的。これ以降のポールが非ロック的なポップソングを連発するが、この曲はその始まりか。ちょっと軽過ぎる気はする。
6. Inner Light
こちらはB面。折角「脱サイケ宣言」したのにこっちはもろインドサイケ。もちろんジョージ作。でもジョージのインド系作品の中では一番聴き易いか。歌のメロディは後のソロなんかにも出てきそうな旋律で、そこを中東とインドが混じったようなサウンドやリズムが出たり入ったりする。やはりワンコードか。曲の尺がそれほど長くなく、適度に曲展開もあるため意外と聴き易い。なんか旅行している気分になるが、歌詞は「ドアを開けずとも世界とコネクトできるんだ」というもの。バンド内で冷遇され続けるジョージにとって、救いは現実世界には無く、逃避先を求めて曲の世界にのめり込み、そして『Lord』に至る。この曲のあとインドに行ってマハリシに幻滅するのがなんとも皮肉だが、そこからジョージの更なる「救い」への上昇が始まる。
7. Hey Jude
7と8は『White Album』期のシングル。これがA面。ポール作曲の、ビートルズを
代表する名曲。ゆったりとしたピアノに導かれるメロディはどこまでも気高く、ささやかなコーラスとともにじわじわと盛り上がっていく。サビに移る際のドラムの入りがいかにもビートルズ的。そして、ひたすら高揚が続いていく大合唱が始まる。ストリングスが入り曲のクラシカルさが増大していく中を、アドリブ全開のソウルフルなポールのボーカルが響く、響く。転がり始めるピアノ、永遠に続く手拍子、小節の合間に入る緩急のついたドラムのフィルイン。そして高揚がゆっくりと通り過ぎていく。メロディの素晴らしさについては言うことは無いが、4分くらい続く大合唱の間、様々なアイディアや小技によって飽きがこなくて高揚が維持され続けるのが凄い。そこには本当に幸福感・祝福感しか無く、それがずっと続くのだ。
歌詞について。ポールが書いた詞はジョンの息子ジュリアンを励ますものだが、実はジョン自身を励ましているとも言われる。一時はポールが消そうとした「the movement you need is on your shoulder」という部分をジョンが「そこが一番いいのに。残しとけよ」といったというエピソードが有名。こういうタイプのポール曲が大体嫌いなジョンでも、この曲だけは常に賞賛を絶やさなかったことが印象深い。
8. Revolution
こちらはB面。A面が幸福感に満ちた名曲に対して、こちらは非常にものものしい
曲。ジョン作。イントロから非常に強烈に歪んだギターが鳴り響く。アンプを通さずにコンソールに直接ギターを繋ぐという反則技によって生み出されたサウンドはしかし、ジョンの要求を叶えるために様々な試行錯誤が繰り返され、エンジニアであったジェフエメリックを散々苦しめたとか。『White Album』収録の『Revolution 1』とこれはバージョン違いで、こっちはシングル向けにテンポが早くなり、そのついでに全編に攻撃的なファズギターとニッキー・ホプキンスのピアノが添えられた。こちらの方がよりロックンロールっぽい。ジョンの元々歪んでいるような声もこのサウンドと合わさって非常に攻撃的。しかしこの時期のジョンのロック曲はどれも非常に攻撃的で良い。
9. Get Back
9と10は『Get Back Session』の際に書かれた曲。こっちがA面。ポール作曲の軽
快なロックンロール。元の素材は同じだが、アルバム収録のものとは別にシングル用にジョージ・マーティンがプロデュースしたのがこのバージョン。前曲が激し過ぎるサウンドのため、この曲が流れ始めるとその音のしょぼさになんか拍子抜けする。このバージョンはいったん歌が終わったあとにもう一回ポールのアドリブから曲が再開、そしてフェードアウトする。こういう展開はもはやビートルズのお約束になっていた。これをポールはどこまで自覚していたのだろうか。
10. Don't Let Me Down
こちらはB面曲。ジョン作のスローなロックだが、『White Album』期の重さ・攻撃性は影を潜め、まろやかでダルになったサウンドの上をジョンが歌い、叫ぶ。独特の拍子回しからサビで一気に突き抜けていく曲調が特徴的。歌の内容はもちろんヨーコに向けたものである。ビリー・プレストンのエレピとトーンを抑えたギターのフレーズがこの曲のサウンド面の要。ジョンのボーカルは倦怠感とそこからの突抜をルーズに行き来する。アップル屋上ライブで演奏された曲。
11. Ballad of John and Yoko
11と12は『Abbey Road』セッションの前に突発的に発売されたシングル。こっち
がA面。僅か数時間でレコーディングされたこの曲はジョンとポールしか演奏に参加していない。はっきり言って特にこれといった特徴のない曲で、歌詞の占める割合の大きい曲。こういうタイプの曲がジョンのソロ作品の評価を妨げている。遂に曲名にまで登場したオノヨーコ。他のメンバーの誰がこんな曲を望んでいただろうか。当時のバンドのどうしようもない状況を背景に、ジョンとヨーコの二人の新婚生活がボサノバのような緩い曲の上で展開される。
12. Old Brown Shoe
こちらはB面。ジョージ曲。この曲は特にその後のジョージソロ的な色彩が強い。正当なロックンロールともポップとも、またはソウルなんかとも異なった独特のリズム運びやコード感がジョージ臭を強烈に放っている。やはり輪郭の曖昧なメロディが軽やかにドライブしていく。特にこれといった高揚も無くするりと展開していくのがジョージのクールさ。後にジョージが選曲したビートルズのベスト盤にこの曲が入っているが、ビートルズとしては全く異色なこの曲を入れちゃうジョージがなんか可愛い。
13. Across the Universe
これはシングルではなく、チャリティのオムニバスに収録された曲。ジョンのビートルズ後期におけるメロウサイドの名曲。『Let It Be』バージョンはフィルたんによって色々手が加えられていたが、こちらもこちらで、ファンの女の子によるコーラスやタンブーラの音色、そしてトリの羽ばたく音などが重ねられている。このアレンジがいいかと言われると、まあ別に悪くはないけどこれといって賞賛すべきものでもないというのが正直な感想。私は『Let It Be』のバージョンの方が好き。一番いいのはアンソロジーのやつだと思う。
14. Let It Be
12と15は『Let It Be』期のシングル。ビートルズのイギリスにおける最後のシン
グル。やはり『Get Back』と同じように、シングル向けにジョージ・マーティンがプロデュースしたバージョンがこれ。サビの伴奏が、アルバム版に比べて薄めでコーラス主体になっていて、また繰り返しも一回少ない。そしてギターソロが違う。個人的には音自体に荒い感情が入り込んでいるアルバムバージョンに軍配が上がる。サビのコーラスはなかなか良いのだが。こっちの方がゴスペル色が強いとも言える。
15. You Know My Name (Look Up the Number)
最後のシングルなのに、A面は感動的な名曲なのに、その裏にこんなふざけた曲を持ってくるなんて。誰がこうしたのかは知らないが(どうせポールだろうけど)、見事な選曲だと思う。ふざけておどけてバカしまくったナンバー。トラックはマジカルミステリーツアーのレコーディング時に作られ、歌入れは69年、M11あたりの時期に撮られた。ころころとコミカルに展開しまくる中に、こっそりブライアン・ジョーンズの演奏が入ってたりする。ボーカルの応酬はもう悪ふざけの極地としか言いようが無く、メンバーの仲が悪い時期に撮られたものとは思えない程楽しそうな雰囲気が伝わってくる。


ビートルズのアルバム未収録シングルを集めたシリーズの第二弾。こちらは中期以降のものだが、『Sgt.pepper's~』期のシングルは『Magical Mystery Tour』に収録されているのでその部分が丸々飛ばされている。

はっきり言って後期ビートルズのシングルのクオリティは20世紀中でもかなり飛び抜けたものがあり、その多くは執拗なレコーディング努力の上に存在している。初期とは作り込みの度合いが全く異なる。私は「ここまでやるか!?」って感じの後期が好き。

ビートルズの最高のシングルは『Paperback Writer』か『Strawberry Fields~』か、それとも『Hey Jude』か。このアルバムはそのうちの二つが収録されている。『Rain』を聴かずにビートルズファンを名乗るべからず。

『Get Back』以降、サウンドが次第に洗練されていく中で、同時に勢いみたいなものも失われていってしまうのが、バンドの終焉を物語っている。そう言う意味でも必聴の編集盤である。ともかくクオリティ高過ぎ!

リンゴに萌えろ!

ポール「MTVなんてまるで僕らが作ったようなものさ」



あと二曲でやっと終わる……。

『Let It Be』 The Beatles

2008年12月23日 20:51

Let It BeLet It Be
(1991/07/20)
The Beatles

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1. Two Of Us
カントリーチックで実に小規模な、名曲。タイトルの「two」は、ジョンとヨーコだとかポールとリンダだとかが正しいらしいが、一ファンの勝手な妄想としてはここはやはりジョンとポールにしておきたいところ。このアルバムは仲違いしたバンドによる悲惨なセッションの残骸で出来ているが、そんなアルバムの始まりがこんなに優しく、そしてどこか疲れきって、休日にどこかに出かけることを希望にして生きているような曲というのが切ない。ジョンとポールのハモリはまた、仲違いしていたとは思えないほど素朴で美しい。ポールの書いたメロディがまた、過剰な部分が無い素朴なメロディで良い。そして「You and I have memories...」と続く曲展開がなんとも感動的で素晴らしい。フェードアウトしていくアウトロはなんとも寂しい。
2. Dig A Pony
ジョンによるダルでパワフルな三連ロックンロール。まあただヨーコに「好き」って言いたいだけの曲だけど、でも結構いい曲。この時期のビートルズはアメリカ的な土臭いロックを志向していたけれど、それが上手く出ている。ジョージのギターなんかは後のUSローファイに繋がる部分なんかもありそう。アップル屋上でのライブを一発撮りしたものらしい。いい演奏だ。ただ、曲の前後にあったらしいタイトルコールが除去されているのは不満。どういうことだよフィルたん。
3. Across The Universe
曲に関してはジョンのメロディアスサイドの名曲。そのメロディは『Strawberry Fields~』や『Sexy Sadie』にも並ぶ美しさ。頼り無いメロディの循環が儚さと悟りっぽさを上手く表している。しかし残念なのは本人がこの曲を完成させることが出来なかったこと。このバージョンはフィルたんが勝手にストリングスやコーラスを挿入しまくった、多くのファンから顰蹙を買ったバージョン。別にこれはこれで悪くないとは思うんですけど。結構サイケだし。
4. I Me Mine
ここからポールいじめ開始。いきなりジョージのポール糾弾ソング。「お前いっつもアレ、俺、おれ、オレ、そう言ってるのが聞こえてウザいんだけどこの自己中」という曲。曲自体はワルツ調から猥雑なロックンロールに展開する様がなんともグダグダでこのアルバムらしい感じ。特にいい曲とは思わないけど、フィルたんの編集によるストリングスが歌詞のヒステリックさを強調しているのは笑える。
5. Dig It
元々は10分に渡る、ファンに言わせれば「非常にスリリングな」ジャム。しかし私はこの曲の4分バージョンを聴いたけど、ダルかったけどなあ。だからフィルたんがこの曲を40秒の小曲に編集したのは、商品として考えれば別に間違ってはいないと思う。そして最後にジョンのジョーク(ふざけたことに赤ちゃんトーキング)「ジョージ帰っちゃったから、次は「天使ちゃま」の歌でちゅ」うーん、辛辣。
6. Let It Be
そして天使様「マザーメアリー」来たる。日本人みんなこの歌好きアルねー。この歌が好きだとある程度のビートルズファンに言ったら鼻で笑われます。まあビートルズ的なスマートさが無くて、あまりにジェントリーすぎるかとは思うけど。でも、オルガンだけ残った後からの展開は流石にかっこいい。特にジョージのギター、音良し鳴き良しフレーズ良しでかなりかっこいい。ジョージのギターはやはりこの時期に完成したらしい。
この曲はシングル版もるが、違うのはサビでホーンセクションが入る(アルバムバージョン)かコーラスが入る(シングルバージョン)かということ、そしてギターソロ。断然このアルバムバージョンが格好良いです。
7. Maggie Mae
神聖な気持ちの前曲を小馬鹿にするかのようなふざけた曲、曲順に乾杯。リバプールに伝わる春歌で、売春婦の歌らしい。それを仲良く弾き語るジョンとポール。なかなかに終わってる感じがして良いです。すぐ終わるとこもグダグダで良し。
8. I've Got A Feeling
このアルバムの元々のコンセプトに一番かなった曲はこれか。アメリカンなルーズさとパワフルさを持ったミドルテンポの曲に、おっさん臭いテンションのポールとシニカルで鋭いジョンの歌が交差する。インディチックなギター、重たいドラム、分解寸前のはずのバンドがここでは上手く噛み合った演奏を見せている。屋上ライブからの一発撮りだが、間違い無く屋上ライブでのハイライト。特に終盤のジョンとポールの歌が同時進行するところへの流れは思わず「バンドっていいなあ」と思っちゃう程。
9. One After 909
ビートルズ初期のレパートリーからの一曲。確かにそんな感じのする曲。しかし初期のあのドライブ感は抜け落ち、なんだかズンドコしている。その中でキーボードが自在に動き回り、元々マージービーとトだったのが結果的にスワンプロックみたいになっている。これも屋上ライブから。
10. The Long And Winding Road
『Let It Be』『Hey Jude』と並び称される、ポールの名バラッド。確かに気品に満ちたメロディだが、しかしあまりにスタンダード寄り過ぎてビートルズっぽさが全く無いのも確か。フィルたんの編集でストリングスが分厚いのもビートルズっぽくない感じを助長している。まこれはこれで映画のエンディングみたいでかっこいいと思うけど。正直ポールはこのアレンジについてキレ過ぎだと思う。先の三曲の中でも特に作為的なこの曲、私は別にどうでもいい。
11. For You Blue
で、そんな本気全開のポールをまたもバカにするような曲順。ジョージによる非常に「カルい」カントリーブルース。もうなんて言うか、捨て曲感全開な感じがなんともいい。アルバム終盤にして最高のグダグダ感。スティールギターがかっこいいが、なんともダルダルで気が抜ける。
12. Get Back
散々虐められたポールが最後に放つ、会心のロックンロール。やはり土臭い、というかどこかウエスタンな感じもする。ルーズな演奏の中、リンゴのドラムの安定感、キメの入れ方の鮮やかさが光っている。まさにこのアルバムの元のコンセプトを体現した曲。ジョンによるリードギターもなかなか格好良い。ポールの歌があまり暑苦しくないのも良い。これもアップル屋上ライブからのテイク。最後にジョンが「オーディションに受かりますように」と言うジョークが挿入されて終わり。


ジョン曰く「地球上で最も最低なセッション」だったというゲットバックセッション、それはポールの「もっと昔みたいにタイトなバンドに戻ろうぜ!そしてライブしようぜ!」という提案から始まり、テンションの高いポールとやる気の無い他三人(それは曲にも良く出ている。ダルい雰囲気の多いアルバム中でポールの数曲だけやたら上品ぶっているあの感じ)によって非常に実りの無いセッションが行われた。その残念さはそのセッションからどうにかして作り上げたアルバムが、そのクオリティの低さに販売を断念せざるを得なくなる程。結局グダグダで険悪で解散が確定してしまった感じのあったバンドは、このセッションの後に色々あった後、最後のアルバム『Abbey Road』のレコーディングへと至る。そしてこの投げ出されたセッションは、まずセッションの様子が映画『Let It Be』となり、そして60'sの名プロデューサー、フィルスペクター(上ではフィルたんと呼称)にジョンがアルバムとしての編集を依頼する形で、結局は世に出ることになった。その編集にポールは激怒、色々あった後ジョンとジョージがいなくなったのを見計らって『Let It Be naked』を制作、という流れ。

アルバム自体を観ていく。まずはなんとも凄い曲順。感傷的に始まったかと思うと急に真面目ぶったポールに対して厳しい(笑)構成になり、そして最後にポールが「元に戻ろうぜ」と言うという、酷い曲順。私、その酷さが好きです。大好きです。もう『Maggie mae』のどうしようもなさとか、凄くこの時期のビートルズっぽくてリアルだと思う。フィルたんはいい編集をしたと思う。ストリングスとかのアレンジも、まあこれはこれで悪くないと思う。確かにポールはウザいかもしんない。
で、曲において目立つのがアメリカンロック的傾向で、カントリーやスワンプ、そしてThe Bandを意識したと思われるグルーブ感がアルバムの主流である。これはサイケブームが一段落したイギリス(アメリカではもっと続く)のその後の「ルーツ志向」にビートルズも乗っかっていたことが分かる。その消化っぷりはセッション最後のアップル屋上ライブによく現れている。もっとバンドが纏まっていたら、この路線で一枚いいアルバムが作れたかもしれない。キーボーディストのビリープレストンがいい仕事をしている。そしてジョージもそのプレイを完成の域に高めている。これでバンドに纏まりがあれば、というのはなんとも惜しい話である。

しかし凄いのは今の時代、Youtubeで映画『Let It Be』を部分的に見ることが出来ること。リアルタイムで映画を見ることが出来て「あれ観とらん奴はビートルズファンじゃないし」とか言っちゃうオジサン涙目wwwいやしかし確かに早くDVDか何かにしちゃえばいいのに。以下はこの映画のクライマックス、例の屋上でのライブ。ビートルズ、何年かぶりにして最後のライブ。これが非常に出来がいいから驚くよなあ。これがこんな簡単に観れるなんて、ホントいい時代になったらしいなあ。





あと一枚でやっと終わる。やれやれ。

『Abbey Road』 The Beatles

2008年12月14日 21:42

一個前の日記でビートルズに触れたので、その勢いでレビュー再開。
Abbey RoadAbbey Road
(1991/07/20)
The Beatles

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1. Come Together
ラストアルバムの一曲目としては何とも不穏なこの曲でこのアルバムは始まる。実はビートルズが最強のリズム隊を有していたことを高々に宣言する名演。やたら分離のいい録音が豊穣な音の隙間を作り、そこをリンゴとポールが妙技といった趣で絡む。そして細く鋭いジョンの声とジョージのギターが空間を裂く。バンドとしての一体感がここに来て強調される。自分を含むメンバーを散々揶揄しながら「さあ一緒にやろうぜ」と歌うジョン。その声はホワイトアルバムから続いた吹っ切れ状態を維持したまま、ギリギリまで鋭くなっている(この後にプライマルスクリーム療法が必要なくらいに)。曲そのものもいいがそれよりも、その絶妙の緊張感をたっぷり楽しめるタイプの曲。この緊張感は後のジョンによるセルフカバーでも再現できていない貴重なものだ。
2. Something
前曲の緊張感から急に雰囲気が緩む。このアルバムにてジョージの逃避的傾向が二つの美しい曲に昇華されるが、その片割れがこれ。何かを諦めたが故の穏やかで繊細なメロディのなんとも弱々しいこと。そこから少しばかり高揚するも(しかしなんと見事な高揚感だろう)、歌っていることは「I don't konw, I don't know」。そして透明な色気に満ちたギターソロの後、また穏やかに収束していく様は、ソロ以降のジョージ節の完成の過程でもある。そして、やはり最後までジョージ曲でやたら頑張るポール。この曲におけるベースラインはこのような曲におけるベースの一つの極北であろう。ジョージから嫌がられるほどに饒舌なベース。ギリギリのところで曲もギターも邪魔しない。素晴らしい音のバランス。
3. Maxwell's Silver Hammer
ポールの割としょうもないコミカルナンバー。このアルバムにおいてポールはビートルズの「ユーモアとコミカルさ」をえらく大事にしているようだが、この曲も曲調はそんなどこか間抜けな感じ。でも歌詞は連続殺人鬼の歌。いかにも後期ビートルズの平均点って感じの曲。流石にこれをシングルにしようとしたポールはどうかと思うが。
4. Oh! Darling
前曲がしょうもないのに対し、こっちは割と本気な真摯な気持ちを歌う。去ってしまった人を求める、ソウルフルな歌。ブリッジへの移行の盛り上げ方がいかにもポールっぽい。シンプルなピアノとささくれたギターの不思議な絡みがキモ。ポールの歌も精一杯頑張っていて暑苦しいが、この曲はそれがそんなに気にならない。
5. Octopus's Garden
リンゴのビートルズにおける自作曲第二弾にして最後の曲。しかし、一曲目の『Don't Pass Me By』よりもこちらの方が遥かに完成度が高い。『Yellow Submarine』のイメージを念頭に置いたコミカルな作りなんだろうが、ピアノの入りやコーラスの入れ方、そして何よりこのアルバム中で最も可愛らしいジョージのギターが、リンゴが持ってきたコミカルで、ちょっといじけた感じのイメージを大切にパッケージングしている。冷えきってしまったバンドの曲が続く中で、少しだけぬくもりを感じることが出来る曲。
6. I Want You (She's So Heavy)
この曲も一曲目と同じく、『White Album』の緊張感を引き継いだような、非常に重厚なジョンナンバー。前半の濃厚なブルース、後半に行くにつれてテンポチェンジやノイズコラージュによって楽曲は引き裂かれまくるが、そんな中全編を通してヨーコへの愛とその重さを歌うジョン。そしてそのある種退屈な決定的破綻を強制終了させるカットアウト。ジョージを筆頭に穏やかさとある種の予定調和に満ちたこのアルバムにおいて、ジョンは極端なまでに緊張感を供給、結果アルバムのバランスを整えることに成功している。
7. Here Comes the Sun
私はジョージ最高傑作にはこちらを推す。ビートルズ全楽曲中でも最高に繊細で暖かく、そして何故か悲しく感じる曲。太陽の温もり、その尊さ、それだけを表すためにビートルズ史上最高のアレンジが施されている。乾いた優しさに満ちたアコギに、さらに優しいシンセと、そして淡い詩情だけしか残っていないジョージの歌が寄り添う。そして淡々と進む楽曲に一度だけ訪れるブレイクスルー。不思議な拍子とシンプルで美しいリフレイン、少しずつ厚みを増して高揚するシンセによって「少しだけ」浮かび上がり、そしてまた優しさの中に消えていく。最小の展開で最大限のメロディを引き出している。そして何より「It's alright!」とささやくジョージの声のなんと細く弱く、そして優しく悲しいことか。牧歌的世界観から世界の果てに通じるような、そんな美しさと空虚さを持った最強の楽曲。
8. Because
ジョンが『月光』にインスパイアされて出来た曲。クラシカルなマイナー調のメロディをフロントマン三人のコーラスが美しく流れる。シンセの間奏が微妙にいかがわしいが、それが却って無機質さを出していて良い。この後の圧倒的な流れの前に置くには最適な小曲。
9. You Never Give Me Your Money
この曲からこのアルバムの目玉「B面メドレー」が始まる訳だが、この曲自体がなんかまるでメドレーみたいに次々に曲調が変化する。ピアノに導かれたマイナー調の曲かと思えば、急にコミカルでブリティッシュな感じに展開し、間奏を経てどんどん上昇し、そしてゆっくり降りていくエンディングを迎える。ポップながらなかなか夢の無い歌詞が良い。
「行く当てはなくとも甘い夢だけはあるぜ / バッグ持ってリムジンに乗り込んで
 もうすぐこことはオサラバさ(中略)今となってはもうお前(リンダ?)しかいない」
ポールさん絶好調。
10. Sun King
前曲の虫の音から続けてこの曲へ。まったりとした、輪郭の薄い曲で、後のヨラテンゴとかそんな感じ的サイケ感とアンニュイさに溢れる。なんとなく無常観も感じられる。何もすること無い夏休み……。スペイン語かなんかで呟いて、スネアが入って次へ移行。
11. Mean Mr. Mustard
ジョン作の、特に見所のないクズ曲。しかし、その何とも言いがたいどっしり加減が次の暴走気味なノリへの助走として見事に機能、鎮静と暴走のつなぎとしての役割を見事に完遂。
12. Polythene Pam
これ、最早曲になってるかどうかも怪しいが、しかしこの展開で聴くと非常にかっこいい。訳の分からないガムシャラ感、むちゃくちゃな感じでいて意外と安定しているドラム、疾走するアコギ、突っ掛かったりしながら進むギターソロ、そしてその勢いが上昇して……。
13. She Came in Through the Bathroom Window
この曲に収束。タイトかつシンプルなロックンロール。さっきの疾走から一気に横ノリに移行するスリル感が良い。そしてそんなビートを強烈にブーストするポールのベース。ここでメドレー前半は終了。
14. Golden Slumbers
メドレー後半はポールとジョージ・マーティンによる、まさに「意地でも感動させてやる」という気持ちの結晶。まず穏やかな童謡からマッチョなボーカルで盛り上げの第一段階。そしてまた穏やかな曲調に戻り、ストリングスが入って、そしてスネアが入って……。
15. Carry That Weight
大合唱(実はポールによる多重録音らしいが)。「重みを背負っていかなきゃならないよ」。再び登場する『You Never~』のフレーズ。やはり精一杯頑張るベース。舞い上がるストリングス、そして……。
16. End
やっぱり最後までコミカルにおどけて見せるビートルズ、というかポール。貴重なドラムソロのあとに三人のギタリストがギターバトルと言うには大人しいが個性あるプレイで盛り上げ(というかジョン適当すぎだろでもオルタナな感じでかっこいい)、そしてエンディングへ。
「結局、きみが持っていく愛はきみが作る愛と同じさ」
最後まできっちりビートルズという仕事をこなすポールに敬礼。
17. Her Majesty
で、数秒開けた後にこの僅か23秒の小曲で締め。要するにおまけ的な。しかもその内容が「イギリス女王を口説いてみせるさ」といったブリティッシュジョークだというのがまたなんとも。この辺り本当にポールはビートルズがどういうキャラであるべきか完璧に把握していたようだ。

ビートルズ、堂々の(本当は超苦し紛れの)完結、のはずだったアルバム。様々な思惑やその対立が解散寸前まで高まっていたにも関わらず、なんとかして形を成し、それがその努力もあって大変素晴らしかったという、バンドヒストリー的にとても美しい経緯を持つアルバム。

そんな経緯があるからか、このアルバムはビートルズの全アルバムの中でもとりわけ深読みされることが多い、要はみんなこれについて色々蘊蓄を語ったり邪推したくなるようなアルバムであるらしい。ジャケットだけでも、歩いていくメンバーの向きからポールの裸足や車のナンバーにおけるポール死亡説まで、その語られっぷりは枚挙に暇が無い。まあ世界的にも超絶に有名なジャケットでもあるし、私もこれは非常に素晴らしいと思う。深読みしたくなる情報が、しかし非常に整然と一枚の絵に収まっている。

曲的には、前半と後半(いわゆるAsideとBside)に分けて考察されることが一般的である。前半はまるでホワイトアルバムを良くも悪くも昇華したような、それぞれのメンバーの個性が煌めく名曲が連発されちょっとしたお祭り状態になっている。しかし、そのどれもがあまりに「完全」すぎるアレンジであることが、これらの曲の、このバンドにおける続きが無いことを予感させる。
そして後半は、というか『You Never Give Me Your Money』からの一連の流れは、まさにポールとジョージ・マーティンの「ビートルズとしての」意地の結晶である。何のことは無い。一曲一曲をアンソロジーでバラバラに聴くと、何ともたわいもない曲が並んでいたりするが、それをもアルバム作りに使わざるを得なかった二人が編み出した最後の、必殺のアイディアがこのメドレーなのだ。多少商品的に作り込まれ過ぎであろうと、お涙頂戴的であろうと、この執念の閃きの前ではそんな批判意味ない。まあこの箇所はその日の状況で聴きたい時と聴けない時があるけど。

私はこのアルバムについてのレビューをそれこそ100か200は読んだ。アマゾンには私情をひけらかす想い出おじさんや、後の「大人化」していく70'sロックの文脈で語ろうとする語り部や、ひたすら「ビートルズは最後まで凄かった」とべた褒めしかしない人や、「むしろポールウゼえよなあ」と言うアンチポールや、「これぞロックの最終地点」と排他的評価を下してしまう批評家などなど、非常に多くの人、それも幅広い層の人々がこのアルバムについて語りたがってる(『Revolver』とかはもっと偏ってるイメージ)。そんな私があえてここで個人的なこのアルバムの感想を書くとすれば以下のようになる。

「『あまりに出来過ぎな大作』の重みがあるから気楽には聴けないが、聴くたびに楽曲やアレンジの満足感と、前進することが出来なくなってしまったバンドの世界の果てでの寂しさとを強く感じる、冬から春にかけて聴きたいアルバム。」

要するに、総てはジョージのなんとも頼りのない「It's alright!」の中に消えていくんです。

『The Beatles(White Album)』The Beatles(2)

2008年07月30日 00:51

The Beatles (The White Album)The Beatles (The White Album)
(1990/10/25)
The Beatles

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Disk2
1.Birthday
なんだっけー確かビールのCMになってたはず、そんなキャッチーなリフに導かれたロックンロール。しかしリフ一辺倒かと思えばそうではなく、結構コロコロと展開が変わるワンコードで押し込むジョンのパートからコーラスも賑やかな『Magical Mystery Tour』的ポップなポールパートをはさんでまたリフに戻る。メンバー全員にきちんと見せ場があり、そういう意味ではあまりこのアルバムっぽくはないかも。良くも悪くも、よく纏まり過ぎているかも。
2.Yer Blues
前曲と同じようなコード展開のはずなのに、急に凶暴で鈍重な雰囲気に変わる。ロックンロールの両極端を見せ付ける曲順にまずは乾杯。いくらか迷いながらも、今作におけるジョンの曲の中でも最高レベル。当時流行のブリティッシュブルースをパロったとされるが、その攻撃性はパロディ元を優に凌駕する。切れ切れに剃刀のように引っ掻き回すギターと、それよりさらに剃刀度の高いジョンの攻撃性全開のボーカル、重心の低いベース、それらが止まったり刺さったりする空間で鳴り続けるオープンハイハット。ビートルズ全曲の中でも最も重たい部類に入るであろう。ブレイクが来るたびにジョンの激しさが鼓膜を揺らす。途中のリズムチェンジからのグダグダ具合もまた、グダグダなのに恐ろしく混沌としていて皮肉っぽい。そして元のリズムに戻りフェードアウトだが、その間もジョンはオフマイクで歌い続ける。
このように、ジョンのキャリア中でも最も攻撃的ではないかと思えるこの曲。ジョン自身もお気に入りらしく、ストーンズのロックンロールサーカスにて、クラプトンなどを従えた新バンドで演奏している。そちらも強烈。
3.Mother Nature's Son
前曲の激しさが嘘のような穏やかさ・優しさ。ポールのこういう方向の曲の中でも、牧羊チックな感じと宗教的サイケ感とトラディッショナルフォークさが見事なバランスで融合したこの曲は本当に、本当に最高の部類に入る。アコギのアルペジオがやりすぎてない感じで切なく、バックのホルンが効果的に使われ、ボーカルにもリバーブがいい具合にかかり、童話の世界のような、不思議な浮遊感を演出している。メロディもポップ過ぎず、しかししっかりと優しさと軽やかさを保っている。メロディやアレンジの全体的に浮遊感漂う雰囲気が、どことなくジョージチックな感じもする。少し引っ込んだところでハミングするポールの歌が、少ない楽器と空間で作られるイメージの中を漂う。風景のイメージやら香りやらが感じられる名曲。
4.Everybody's Got Something To Hide Except Me And My Monkey
多分ビートルズ中最も長いタイトルだろう。元気よく疾走するジョン作のシンプルなロックンロール。終始テンションの高いジョンのボーカルや、所々に入る合いの手シャウト、やかましいギターやらドラムやらからは、バンドとしてまだ全然問題なくかっこいいビートルズが感じられる。アウトロに向かう展開にきちんと一仕掛け作るところは流石ビートルズ。そのシンプルで荒々しい暴れ具合から、元祖パンクの一曲として挙げられることもある(個人的には「そうか?」と思わないこともない)。
5.Sexy Sadie
前曲とは打って変わって、気高さを強く感じるジョンのバラッド。その気品溢れるコード進行は後にRadioheadが『Karma Police』でパクリもとい強くオマージュしている。リリカルで憂いとポップさを程よく含んだピアノが素晴らしい。ジョンのボーカルも優しさと攻撃力を併せ持ち、そしてこのアルバムには数少ない他メンバーのコーラスが上手く曲に調和する。しかし、途切れることなく歌を紡いでいくジョンがあまりにかっこ良過ぎる。ギターソロも美しく、リズム隊も無駄なく非常に効果的な活躍で曲自体の持つ魅力を最大限に補強する。このアルバムの曲の中でも、最もアレンジが上手く行っている曲だと思われる。全体を通して孤高な雰囲気をかもし出していて、切ないような、力強いような、そんな気持ちになる。
6.Helter Skelter
突如別のCDみたいな曲が始まる。初期メタルがブルースからの特異な派生であることはそれなりに知られているが、まさにその走りであるこの曲。優しさに溢れた曲を量産しつつ、こんなおバカで過剰なブルースを逸脱したロックを作ってしまうこの時期のポールはまさに絶頂。メタル的なルート引きベースから、とてもビートルズとは思えないメタルなギターまでポール製である。かなりもっさりと重たいリンゴのドラムが実にそれっぽい。最後のリンゴの叫びは更にそれっぽい。そしてこんな曲を20分も演奏(実際は編集で4分に抑えられているが)してしまうテンションの高さ・おバカさ・素晴らしさに感動とは別の賞賛の気持ちが止まらない。
ところで、この曲のタイトルは「ポール家の近所の滑り台の名前」らしいが、このタイトルは後に不吉でおぞましい何かを示す言葉として使われるようになる。チャールズマンソンがこのタイトルを「最終戦争」と訳したのは有名。岡崎京子の攻撃性の極限としての作品『へルター・スケルター』はもっと有名、多分……。HiGEも『Goo』でこのタイトルを引用していた。確かになんか雰囲気のある単語ではあります。
7.Long, Long, Long
このアルバム、激しい曲の次は必ず静かな曲が来るよな……。この曲はジョージによる、宗教的な気高さに溢れたミニバラード。ジョージのこういう曖昧な雰囲気の曲といえばそう、オルガンがやはり重要な位置を占める。アコギと絡み変な浮遊感を作り出す。そして、ところどころで意外と動き回るドラムも印象的。優しくも憂い漂うジョージのボーカルは弱弱しく、今にも楽曲の彼方に吹き飛んでしまいそう。終盤の天に吸い込まれるような展開は、まあ宗教。Radioheadの(またか!?)『Motion Picture Soundtrack』の最後の天に召される音はやはりこれを参考にしたのだろうか。
8.Revolution 1
多分世間的にはこれよりもテンポの速い『Revolution』のほうが有名。ただ、このゆったり加減や、ホーンが入っていることや、ドゥーワップ調コーラスや、イントロのトチリなど、全編和やかなムードに溢れているこのバージョンも悪くない。後半の喘ぐようなコーラスもなんだか奇妙。どことなく『All You Need Is Love』と同じようなピースフルさが漂っているが、でも歌詞はタイトル通り革命についての皮肉だしなあ。
9.Honey Pie
どう考えても第二次大戦前って感じの雰囲気全開の、おしゃれジャズ風ポップソング。ポールのおしゃれ趣味が全開な良曲。いかにもな感じすぎる演奏がなんか面白い。メロディも見事に昔なつかしな雰囲気をかもし出しまくり、大人の余裕を見せつけまくるポールの歌も楽しい。ある意味これもバカ曲だよなあ「そこまでやるか!?」って意味で。60年代的にはこれはレトロスペクティブにあたるのだろうか。そう考えるとポピュラー音楽の歴史にちょっと興味深い気持ちになる。
10.Savoy Truffle
このアルバム中ならジョージの一番いい曲はこれか。『Taxman』以来の、タイトなリズムの上で非サイケな演奏をするタイプの曲。歌にしてもリズムにしてもとてもファンキー。ポール的暑苦しいファンキーさではなく、やたらと洗練されながらもユーモアたっぷりって感じのファンキーさ。ジョージのボーカルも嫌味ったらしく捻くれたり掠れたりしてもう大変かっこいい。豊穣なブラスにしっかりと対抗できる、細く尖ったギターを弾いており、それに呼応してか関係ないのかやはり水を得た魚のように動き回るポールのベースも非常にポイント高し。歌詞で甘党のクラプトンをからかってたり、ジョージがその持てるだけの大人っぽいユーモアとジョークと嫌味っぽさを濃縮した、非常に濃い一曲だと思う。賑やかさがやはり『Sgt.~』的な気がしたり。
11.Cry Baby Cry
ジョンの弾き語りっぽいものをベースとした、『Sexy Sedie』に次いでこのアルバム中で誇り高いメロディを奏でる曲。やはり切れ目なく歌い続けるジョンの歌が中心となり、力強く演奏が続いていく。やはり全パートが曲を際立たせるためにそれぞれ上手く機能している。
アウトロにはポール製の、謎の弾き語りが付属する。何なんだろうこれ。これと最後の会話のせいで書きたてられた不安が、次の曲で全開になること請け合い。
12.Revolution 9
ジョンとヨーコによる、愛と混沌の間に写る世界、60年代末という革命とそれによる混乱に満ちた世界を表現したサウンドコラージュ8分超え。まあ長すぎ。「ナンバーナイィン……」と呟く声、挿入される革命の群集のざわめき、いたずらと悪意に満ちたさまざまな音楽の挿入。ただ、意外と激しいところと静かなところがはっきりとしていて(いい具合に支離滅裂的な感じ)、実はこういう音楽としては聴きやすいのではないかしら。
ところで、下のこの曲の動画は素晴らしい。見事に恐怖・不安を煽る。作った人はすごくいいセンスを持ってる。
13.Good Night
あの混沌を潜り抜けたら、最後は「ディズニー映画のエンディングみたいな」優しいストリングスに導かれた子守唄風のジョン曲。もっさりしたリンゴの声が思いのほか曲の雰囲気に合っていて面白い。ストリングスなどのサウンドは本当にディズニーみたいな派手でドリーミーで優しげなもの。長い映画を見終わったような感じ……というよりは前曲のせいで、まるで「恐怖映画を見終わったら突如ディズニーなエンディングが……?」っていう感じ。なんだろう狙ってんのかなあそれとも暗にケンカ売ってんのかなあアレに。ともかく二枚組みの長旅の終わりはこんないかにもエンディング然とした曲なわけです。クセえぜとってつけたような感じがプンプンするぜェェェッ!狙ってやってるんなら嫌な奴等だなあビートルズってのは。


恐怖の二枚組み。真っ白な二枚組み。とりあえず疲れた。

まず、サイケデリックにはまってスランプだったジョンが、ここでは見事に復活しています。キャリア中でもかなり重たい曲を連発したかと思うと、やたら気品高いメロディを紡いだり。私はジョンの最盛期はこのアルバムだと思っています。最後の盛期……。あとヨーコが邪魔なときも。でもこの好調はヨーコのおかげらしいし……。
ポール、ポールもポールらしい優しさと軽さで出来たポップソングに関しては相当に充実していて、これも彼のキャリア中でもとりわけ輝いている風に思える。小品だけ集めてアルバム作れちゃう。ただ、ロックンロールな曲は当たり外れが大きい。あと『Wild Honey Pie』は要らない。
ジョージ、なんかほとんど完成していた『Not Guilty』(ジョージらしい憂鬱なメロディが聞ける、ちょっとハネたリズムのおしゃれで小粋な曲)が収録されなかったのは本当に可愛そう。絶賛冷遇中といったところか。
リンゴ、よく考えたら本体叩くべきところをポールに取られた曲って二曲だけか。自作曲はまあ、次のやつがいい曲だしね。そういうこともある。

アルバム全体を通して、一般的には「様々な曲を詰め込んだせいで統一感はないが」と解説されるが、どうも私にはそうは思えない。また、確かにサイケからロックンロールに回帰した作品ではあるけど、そのロックに初期ビートルズの影はほとんど見当たらない。そして、あの白いジャケットのせいなのか全体的に、サイケ期のカラフルとは真逆なモノトーンさ、暗さ、寂しさといったものが、主に音から想起される。大体このアルバム、ハードな曲とアコースティックな曲が多い。それらが交互に並ぶように曲順は定めてあり、そのためテンションのアップダウンは激しく、聞く人は変な不安に苛まれてしまう。次の『Abbey Road』(『Let It Be』はまあ失敗作だし)がまたカラフルなサウンドに回帰するのに比べると、このアルバムのモノトーンさはかなり冷ややかで寂しい。
それがこのアルバムの特徴なのだ。つまり、曲調やアレンジの冷ややかさ・クールさに関して、アプローチは違うが『Revolver』と同種のものがあり、そこが現代においてこのアルバムが人気がある所以だと思う。また、シンプルになったアレンジは楽曲を生々しいものとし、インディチックなプロダクションによる作品作りのヒントがこのアルバムにたくさん詰め込まれている。

このアルバムでメンバーは仲違い、解散へGOGO!する訳ですが、その前にこれだけ立派に「好き勝手」やっているアルバムを残すことが出来て良かったと思うし、凄いと思う。まあカスな曲はカスだけど。二枚組みだし仕方ない。でも一枚に纏めるともったいない気もするし。



『The Beatles(White Album)』The Beatles

2008年07月27日 01:39

The Beatles (The White Album)The Beatles (The White Album)
(1990/10/25)
The Beatles

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1.Back In The U.S.S.R.
飛行機のジェット音から軽快なロックンロールに突入。ファンキーなポールのボーカルや後期ビートルズの要であるピアノが熱っぽく転げまわる。そしてビーチボーイズのパロディチックなコーラス。ギターの音も結構尖がっていて、ともかく勢いがある。かなりの楽器をポールが担当しており、リードギターからピアノ、ドラムに至るまでポールの自作自演。そのためか、解散後のソロ・ウイングス的な大味ロックンロール路線の先駆け的な要素が見られる。
というか、ビートルズのアルバムなのにいきなりリンゴ不在な曲だなんて……。当時バンドがどういう状況だったのかを如実に表している。
2.Dear Prudence
全曲のアウトロのジェット音からそのまま怪しいアルペジオに導かれて始まるジョン曲。その怪しいアルペジオが曲を支配し、ジョンのどこか空虚さを感じさせる力の抜け気味なボーカルとともに宗教的な怪しさがある。低い声のコーラスなんかも怪しい。悪漢はコーダへ向かっていく展開で、ギターとドラムがそれまでの閉塞感を突き破っていく。ドタバタしたドラムはリンゴっぽい感じがするが、これもポールのドラムでやはりリンゴ不在。
3.Glass Onion
これはちゃんとリンゴの力強いドラムが先導する、ハードでシャープなジョンの曲。歌詞が過去の曲の揶揄(あとポールへの悪口)で占められているが、それに合わせて挿入されるいくつものインストゥルメントが面白い(悪口言われながらもリコーダー吹いたりするポールw)。それによって楽曲がカラフルになるかというとそんなことなく、ずっとモノトーンの緊張感が続き、そしてアウトロの奇妙で不快なストリングスに到達する。曲自体は非常にシンプルながら、ジョンのボーカルや鋭いギターなどのハードな雰囲気によって「刺さる」一曲となっている。ジョンのボーカルはかなり攻撃的で、モーサムの百々が「そんなのズルイ」と思ってビートルズに目覚めるきっかけになったとかなってないとか。
4.Ob-La-Di, Ob-La-Da
前曲とのあまりのギャップの大きさにがくっとなる、ポールのポップソングの中でももっとも可愛らしく、子供向けっぽい一曲。「幼稚だ!」と揶揄されることの多い曲だが、その細部のアレンジの懲り方にはポールの意地を感じる。それぞれの歌の繰り返しで異なる歌い方を試したり。特に細かいコーラスワークに遊びが多い曲で、さまざまな楽器やエフェクトとともに、まさにおもちゃ箱ポップとして高性能な曲。後半のテンションの高いポールのボーカルと、それでも可愛らしく終わるところが聴き所か。
5.Wild Honey Pie
これは……意図を測りかねる曲。奇妙なバックの音に合わせてタイトルを繰り返し続けるだけの変な曲。何でポールはこんなしょうもない曲を入れたんだろう。こんなの外してジョージの曲とかをもっと収録してあげればよかったのに(これを収録して『Not Guilty』を収録しないって!)。
ただし、ピクシーズがこの曲をカバーしているらしく、私は聴いたことないが、滅茶苦茶かっこいいとのこと。聴いてみたい。
6.The Continuing Story Of Bungalow Bill
今度はジョンによる正直しょうもない曲。童話風のコーラスとひねくれたヴァースを無理やりつなげた感じで構成される。オノヨーコがボーカルとして参加しており、そのせいか今度はポールが参加していない。曲としてのレベルはかなり低い。歌詞は黒人差別についていいこと言ってるらしいが。こんなのよりももっとジョージを……。
7.While My Guitar Gently Weeps
そんなわけで現れた、ジョージの最高傑作のうちのひとつとされる名曲。渋い大人のブルースを思わせる、ジョンとはまた違った意方向の緊張感の漂う一曲。曲自体のムードもさることながら、やはりかなりハードなエリック・クラプトンによるギターが緊張感を高める。そんなギターの下で暗躍するベースがかなり太く怪しく蠢く。やはりジョージ曲でいい仕事をするポール。全体を貫く愁いを帯びた雰囲気はかなりビートルズ的(レノン=マッカートニー的と言い換えてもいい)雰囲気から逸脱している。ちょっとアダルティ過ぎてだるくて、私はそれほど好きでもないけど。
8.Happiness Is A Warm Gun
展開がころころと変わるジョンの曲。怪しいギターのアルペジオが支配する前半は段々とハードさを増して行き、どっしりと三連ブルースチックになる中間部(ジョンの相当けだるいボーカルが印象的)から突如変拍子気味な激しいリフを繰り返した後、急に高揚した、ポップなコーラスが登場する。しかしその上で激しくシャウトし、トーキングし、突き抜けていくジョンの声は圧巻。そう、このころころ変わる曲調に合わせてジョンのボーカルもその熱量を巧みに調節する。そしてハードなギターの音。このアルバムはハードな曲が多いが、どの曲もギターはいい具合に歪んでいる。曲・音ともにかなりざらついた感触の、奇妙な攻撃性を持った曲。
9.Martha My Dear
不可解で強力な前曲からまた、いきなり可愛らしいピアノが始まる。やはりポール曲。自分の犬について歌った、かなりどうでもいい曲なんだろうが、そのポップとしての強度はかなりのもの。曲自体の「ポールのいいところ」を詰め込んだようなポップさに、段々とホーンやストリングスが入って鮮やかになっていくアレンジ。ポップ職人としてのポールの真骨頂である。まあ、ポール以外のメンバーはレコーディングに参加してないっぽいけど。
10.I'm So Tired
これまた重たい雰囲気のジョンの曲。重たいといってもこれは攻撃性ではなく、ひたすら倦怠感の漂う中を突如ジョンが突き抜け、じわじわと高揚してはまた倦怠に落っこちるのを繰り返す曲。こういう曲をかなりかっこよく聞かせられるジョンのボーカルはやはり強烈な才能である。一応ブルースだろうが、ジョンがやると妙に破綻した展開などでブルースの常道とは外れた凄みが強く感じられるようになる。
11.Blackbird
ビートルズ時代のポール曲の中でも随一の装甲の薄さを誇る、非常にパーソナルな雰囲気の(歌詞は黒人差別についてだが)アコースティックナンバー。ふくよかな空間を感じさせるポールのアコギ弾き語りがかなり綺麗でおしゃれ。ポールのボーカルも力みが一切ない、非常に済んだものとなっている。メトロノームの反復する音もまた素朴さを深めていてよい。夜に静かな部屋で聞くと気持ちがいいです。
12.Piggies
ハープシコードが印象的なジョージ曲。バロック調な盛り上がり方はサイケ期っぽい。ってかこれもっと早く作っていれば『Sgt~』にいれられたんじゃないの?まあ曲自体のクオリティはがっかりな感じだけど、ストリングスが入ったり多重録音のコーラスだったりという後半のコケオドシッぷり(アウトロには何故か荘厳なストリングスが!)は面白い。そしてそんな優しい曲調なのに、人々を豚として皮肉る歌詞……。豚の泣き声入り。まあジョージらしいっちゃらしい。でもやはり、これが入って『Not Guilty』が入らないのはどうなんだ?
13.Rocky Racoon
ポールの曲。トーキングスタイルからやさしいメロディに移ったあと、軽快なバーのメロディに吸い込まれていく曲。アコギの音やハーモニカ、軽快なピアノなどが活躍する、またしても小粋なポールポップ。崩しまくったボーカルから優しいハミングのメロディの憂い具合への移行がかなり良い。このいかにもどこかの寂れたバーで歌ってそうな閉じた雰囲気はポールポップの一番おいしいところ。
14.Don't Pass Me By
ビートルズ史上初のリンゴ単独作曲(2曲しかないけど)。アコーディオンが印象的なゆったりカントリーポップソングなんだが、曲自体がいまいちなのか、それともリンゴのボーカルがうまく行ってないのか、どこか物足りない感じはする(もうひとつのリンゴ作曲『Octopus's Garden』と比べると顕著)。サウンドの中心がエレピやアコーディオンという、バンド然としていない楽器のチョイスのせいなのか、それとも全体的にもっさりとしたミックスのせいなのか。メンバーのフォローもあんまり足りていないようだし。あとタイトルは「俺を無視すんなよ……。」ってところだろうか。このアルバムのレコーディングでのリンゴの冷遇っぷりが伺えるのか?
15.Why Don't We Do It In The Road?
ポールがファンキーで暑苦しいボーカルを披露する、まさにタイトルどおりの曲(タイトルの意味は「何でみんな道端でオナニ○しないの?」)。まんまロックンロールの展開にだるいピアノ乗っけて、そのうえでポールがタイトルを連呼する。それだけの曲。うーん……。
16.I Will
また来た必殺のポールによる小ポップソング。短くシンプルに、優しさに溢れたメロディを紡いでいく。その伴奏にはアコギやパーカッション、そしてジョンの口で「ポコポコ」言ってる音や口ベースなど、小規模なものしか使われていない。それによってこの小規模な、心をちょっぴり和ませてくれるポップソングを書いてしまうのだ。正直こういう方向性のポールの曲に駄曲は存在しない(少なくともビートルズ時代は)。その中でもこの曲の簡潔さ・優しさはトップクラスである。こういう曲をさらっと作れるポールが羨ましい。そしてポールソロのアルバムはこういう曲が多ければ多いほど私にとっては好ましい。
17.Julia
一枚目の最後はジョンの弾き語り。これも『Dear Prudence』などとよく似たアルペジオが使われるが、こちらは怪しさよりも儚さ、空虚さが強く強調されている。力なくたゆたうジョンのボーカルがなんとも寂しい。パーソナルな内容(ヨーコとか。何が「Ocean Child」だよ)を歌っている。ジョンがここまで繊細な表現を用いたのは多分この曲が始めて。


前半だけでも相当疲れました。何で二枚組の癖に一枚の曲数も多いんだよ!意味わからないよ!続きはまた今度。

どうでもいいかもだけど

2008年07月23日 01:11

The Beatlesのレビュー、Youtubeの動画を張り忘れていたので慌てて貼っています。
いやあ中期以降のプロモーションクリップは面白いのが多いですね。特にアニメ関係はヤバい。この時期のアニメって原色がキツくてキツくて凄く強烈。『Lucy In The~』のプロモは今でもある意味スタイリッシュで危うく感じられてしまうほど。当時はこんなんが子供向けアニメとして流れていました。一体子どもたちをどうする気!?

この時代の文化・デザインなどの勉強にもなるんで、ぜひぜひご覧になってくださいな。
やはり60年代はステキだ……。
こういうのを見たり聴いたりしてると、それが40年前のものだとは到底考えられず、まさに今、現在進行形なもののように思えてくる。

L・S・D!L・S・D!L・S・D!
流石にマズいか……。

さっき見つけた動画。なんか混ざっとる。全然古臭く聞こえん。カッコイイ!



……そして、次のレビュー更新は30曲90分越えなのです。誰も見てなくても頑張る積もり。

『Yellow Submarine』The Beatles

2008年07月23日 00:48

きいたこと、ありませーん。
でも、『Yellow Submarine Songtrack』の方で、「ビートルズの作った曲」は聴きました。
アマゾンは両方とも貼る。
Yellow Submarine (Original Motion Picture Soundtrack)Yellow Submarine (Original Motion Picture Soundtrack)
(1990/10/25)
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Yellow Submarine SongtrackYellow Submarine Songtrack
(1999/09/14)
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順番は『Yellow Submarine Songtrack』に並んでた順。
1.Hey Bulldog
もう最高。ジョンがサイケデリックから足を洗った大一発目にして非常にソリッドで緊張感に溢れた名曲。メインリフが物凄くかっこいい。ギターの音が鋭く粗く、後のミッシェルとかそういうバンドに繋がっていくような、スタイリッシュな鋭さを感じる。また、吐き捨てるようなボーカルもこれまでのサイケで輪郭のぼやけた歌とは根本的に異なっている(まあジョンはどっちも凄くかっこいい訳だが)。このボーカル、サイケ以前の初期ビートルズのころと比べても、攻撃力が格段に増している。
どっしりとしたリズム隊もしっかりと曲を支える。細かいところでやはりリンゴがいいドラムさばきを見せるのは流石だと思う。ベースラインも妙なリズムで鳴っていて不穏。
また、ポールのハモリもかなり有効に機能している。とりわけ間奏やアウトロの二人の暴走加減は最高。この投げやり感。実際この曲は『Lady Madonna』のプロモーションクリップ撮影の合間に「半ば冗談で」作ったというんだから恐ろしい。終盤の、この曲のタイトルを決めることになった二人のアホな暴走が非常に微笑ましい。
総じて、よく纏まり殺傷力の高い、かなりの良曲。この曲を聴く限りじゃあすぐ後のバンドの崩壊なんて予測できないな。この曲から『White Album』期にかけて、なぜかジョンは自身のキャリア中最も攻撃性・緊張感が溢れた曲群を一気に書きまくる。サイケデリックによって無限に広がった可能性によるスランプ(67年はジョンが書いて発表された曲は多くない。名曲が多いがそのどれも奇抜なアイディアや混乱性が特徴となっている)からの脱出によるものなのか。それともヨーコ効果か。
2.All Together Now
要するに、ポールが「ポンキッキ」的な子供向けポップソングを書いたということ。跳ねるリズム、楽しそうなコーラスの掛け合い、子供にイメージを与えるような「数え唄」的な歌詞。まあ決して質が高いとは言わないが、しかしそれでも色々と工夫が散りばめられていて面白い。いやー本当にポンキッキの世界だなあ。そういやオザケンも「オナラで月までいけたら~」とか歌ってたんだよなあ。つまりそういうノリの曲。真面目に論評すべきものではありません。
3.Only A Northern Song
インド曲を書いていた時期のジョージの、割とポップソング寄りな曲、なのか……?かなり曖昧に揺らいで行くメロディ、神秘的で空虚なオルガン、調が合ってるのかどうか分からないピアノに、やたらと良く動くベース、そして無数のホーンやら効果音やら何やらの音の洪水。非常に分かりやすくサイケしていらっしゃる。ジョージのこういうタイプの曲はジョンに比べて、もっと精神的に高尚というか、マジに神様に繋がろうとしている感じがして一層不気味。まあこの曲は歌詞は皮肉なんですけど。最早これインドでも何でもないよなあ。『Sgt.pepper~』のアウトテイクだけど、絶対『Within You Without You』よりもこっちの方がいい曲だよなあ、っていうかポールの曲一曲くらい削ってでも入れるべき曲だったような。暗すぎたか。ギリギリでポップさを保っているメロディが却って根暗さを縁取っている印象。
4.It's All Too Much
そんな上の曲にも増してさらにイッちゃってる、ジョージの最高傑作のひとつにしてビートルズサイケ一つの頂点。いやあもう、「悟り」を開いてしまってジョージ超怖い。
フィードバックしたギターで曲が始まって、そこからいい具合に歪んだギターが始終ポップで、サイケで、なおかつ時に攻撃的で、でもやっぱりイッちゃってるようなフレーズを重ねていく。そこに爽やかなホーンやら手拍子やらが被さっていく。しかし、そんなカラフルなうわものを支えるベースがおかしい。ずーっと同じ音を弾き続けるベース。ずーっと同じ音が下の方でウーーーーーーと鳴り続けている。相変わらず良く動きよく転げまわるドラムとリズムは合わせて、しかしずっと同じ音。これが相当エグい。そこがいい。やはりポールはジョージ曲でなんかいいベースを弾く傾向にあるようだ。
で、その中を相変わらずふらふらするジョージの歌だが、ここでのジョージの歌のメロディラインは、どこか本当に高尚な「悟り」を開いてしまったかのように、確信的に、そして意味深にふらふらする。そのフラフラメロディが、ジョージの全キャリア中でも屈指のポップさというのがなかなかあり得ん。ポールの子どもっぽい可愛らしさをたたえたメロディとは真逆の、「絶対的な何か」に近づいていくような堂々とした、でも宗教どっぷりだからどこか危うげな、そんなメロディ。コーラスなども色々と怪しく挿入されたり。
圧巻は後半からの展開。ポップなメロディでまとめた前半からそのまま進行していくのに、歌メロは更に曖昧さを極め、そして怒涛のタイトルコール。いつまで続くのコレって感じの狂気を感じさせる、奇妙なコーラス。「トゥーマッチョ、トゥーマッチョ」。このコーラス中のリンゴのドラムがまたたまらなく怪しい。無心になって「過剰だ」と歌い続けて、フェードアウトして終わる。
個人的には、ジョージのビートルズ最高傑作だと思う。ジョージの精神性、その危うさが最良の、しかもポップな形で収束している。6分越えな楽曲。『A Day In The Life』に次いで当時の彼らの最長ソング。『A Day~』はジョンとポールの合作だけど、これはあくまでジョージの単独曲だというところに、そしてこんな超会心作がこんな辺鄙なアルバムに収録されてしまうというところが、ジョージの孤独さ・不憫さ・皮肉っぽさといったキャラクターを強烈に焼き付ける。レコーディングが『Sgt.pepper~』に間に合っていれば、そして収録されていれば、どれだけあのアルバムの評価が変わったことか。ビートルズ全楽曲の中でも最も「不遇で、タイミング悪くて、知名度の低い大曲」であることは間違いない。

ビートルズが主役として登場するアニメ『Yellow Submarine』のサントラみたいなもの。まあこの時期ってまだアニメ黎明期でしょ?アニメのサントラっていう概念すら新しかったに違いない。

で、なんで、こんな、クソみたいな(だって半分はアニメのサントラ。あとアニメで使われた数曲の既存曲も収録)、アルバムに、二人の天才の傑作中の傑作を、収録しとんじゃああああああああ!

ふう。

ところで、私が聴いたのは『Yellow Submarine Songtrack』なんですが、これ、ビートルズの楽曲を「リミックス・リマスター」した数少ない音源の一つで、他に収録されている既発曲を含めて相当聴いた印象が違います。
まず、昔の技術的要因のせいなのか、この辺の時代のレコードは全てのパートを左右どちらかのチャンネルに振る必要があったのかどうかは知らないけど、ドラムやボーカルもすべて片側のチャンネルに入っていて、これがヘッドフォンで聴く場合には、最近の楽曲などを聴くときと比べて感じる大きな違和感になります(まあ、それがいい、って場合もあるんでしょうけど)。
それをこのアルバムでは、パンニングをやり直してボーカルやドラムを中央に配置、結果、以前と比べてどっしりとした、現代的なサウンドとなってビートルズのいくつかの楽曲が蘇った訳です。
勿論ファンの中には「こんなはっきりした音像ビートルズじゃねーよこのクソリマスターがぁぁぁ!」とおっしゃる人もいる訳ですが、現代っ子・ゆとり全開の私としては、このリマスターによる現代サウンド的ビートルズはかなりしっくりきます。というか、そのせいでこのアルバム収録の4曲がやたら良く聞こえるのかも。
なので、EMIはさっさとビートルズ全音源をこういう感じでリマスターしてくれないですかね。まあその場合、山ほどの古参ファン・マニアが誹謗するのでしょうが。いやでもこの、リマスターされた楽曲たちの「現役感」というか、最近の楽曲にも全然引けを取らないぜ感は凄い。『It's All Too Much』とか、ボーカルをリアムに差し替えたら十分オアシスの新曲って言えちゃうくらいのクオリティ(もしかしてオアシスはもはや現役じゃないか?)。こんな感じで、現代風サウンドな『Rain』や『Strawberry Field~』を、せめて死ぬ前までにはお目にかかりたいなあと思います。

『Magical Mystery Tour』The Beatles

2008年07月15日 17:46

Magical Mystery TourMagical Mystery Tour
(1990/10/25)
The Beatles

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1.Magical Mystery Tour
世代によってはポンキッキーでお馴染の、同名の映画のテーマソング。突き抜けていくような軽快陽気なポップさが持ち味。メインボーカルにはかなりエフェクトが掛かっていて、楽しげなピアノやホーンと相まって、おもちゃ箱サイケを地で行ってる感じ。単純な繰り返しでここまで飽きさせないのは流石です。チープトリックのやつはなんかダサいのに(なんかあの時代独特のリバーブ感ってあるよね)。
2.The Fool On The Hill
リコーダーが印象的なゆったりとした曲。ピアノ中心で、ハーモニカやらマラカスやらも入っていて、ドラムがハイハット以外入って無くて、完全に普通のロックンロールから離れまくっている感じが良い。ポールの歌も熱がこもり過ぎていなくて優しい。そしてメロディ自体の素朴さと、ちょっと薄めで寂しげな伴奏が良くマッチしている。
3.Flying
おそらくビートルズの公式音源中では(『Revolution 9』を除いて)唯一のインストナンバー。なぜかメンバー四人ともが作曲クレジットに載っている。これは……どうなんだろな。まあサイケで不思議な感じだけど。良く聞くと曲自体はロックンロール的トライアドなコード進行だったりする。
4.Blue Jay Way
ジョージ作の、宗教的ないかがわしさがすごく漂っている曲。こっちの方が却ってインド全開なやつよりもヤバいかも。逆回転なオルガンやら、フランジャーなボーカル、ドラム。アシッドなメロディ。確かにジョンはサイケのせいで色々駄目駄目になったけど、一番サイケ的にヤバかったメンバーはジョージだよなあと、これを聴いて思うのです。微妙に聞こえてくるチェロも不気味。そしてこういう曲でもドラムがトコトコと入っていくのが、意外とサイケさにマッチしていて不思議。まあ確かに暗すぎて、『sgt,Pepper~』のカラーには合わないか。
5.Your Mother Should Know
ポールが狙ってちょっと古めのマイナー調ポップスを書いてみた曲。出だしのコーラスの憂い具合がいかにもって感じでクスッとくる。昔の社交場か何かで掛かっていそうな。そしてそこでメンバーの親の世代の奴等が手をとり躍っているイメージ、だそうな。サウンドはシンプルだが、それでもピアノとオルガンなので、全然ロックバンドではない。
6.I Am The Walrus
ジョンのサイケデリック的大曲構築への挑戦の、一つのピーク、というか、行き詰まり。そのメロディ・サウンド・歌詞に至る全編に行きわたったナンセンスさは、非常に薄暗く退廃的な倦怠感に満ちている。ジョンのボーカルもフィルターがかった感じで聞こえる。圧巻なのは突然変な効果音が挿入されてから曲全体が浮かび上がってミドルエイトへ向かう展開。ボーカルの効果はきつくなり、ストリングスがより前面に出てきて(しかしなんて退廃的なストリングスだろう)、そしてエンディングで次第に壊れていく。無意味な効果音が飛び交い、変なコーラスや、ラジオから流れる『リア王』が混沌を作り出していく。
圧倒的な混乱具合が陰惨さに繋がっている。そういう点で僕はこの曲とM8が対極的なものに感じる。
7.Hello, Goodbye
まさに「ビートルズってこんな感じ」を体現する、見事な陽性ポップソング。おもちゃ箱をひっくり返したようなサウンドが楽しい。実はかなり良く働くドラムが曲の骨組みそのものをがっしり作っている。本当にこういうドラムいいなあ。ベースもスケール上をコロコロと転げまわったり、メロディの上昇に逆らって下降したりする。曲自体は非常に分かりやすい展開をしていくが、そのメロディの可愛らしいこと可愛らしいこと。もうここまでのメロディが出てきたらそれだけで「勝ち」みたいな。そんな曲に更に弦楽器やらギターやらオルガンやら、そして『Help!』と双璧を成す最高のコーラスを肉付けして、更にはネバーエンディングな仕掛けを作って、この幸福感がどこまでも続いていくような、まさにポールサイケの極北と言っていい出来。前曲が暗いからな。次も暗いけど。
8.Strawberry Fields Forever
ジョンのサイケデリック的挑戦が成し遂げた偉大な成果の一つ。サイケデリック的陶酔感を純粋な感情の表現に上手に利用できた稀有な例。これはサウンド面での実験(最早バクチの域)とそもそものソングライティングの成熟が相互作用している。
アンソロジーⅡにはこの曲の他テイクが収められているが、それらを聴いて、確かにサウンドは右往左往しているが、そもそもの曲自体は、メロディ自体は初めからかなり完成している。この、頭やられてぼんやりしている感じと、どこか英雄的な旋律回し、そして迷子のようにふらふらと漂うジョンの歌が歌詞と相まって、虚無に飲み込まれる手前の純真を思わせてならない。そういう意味で、ひたすら退廃的で混沌としたM6とこれはどこか対極的な気がする。
そして、そんな最高のソングライティングをフルに生かすアレンジ、というよりも、その曲の持つ可能性を、「二つの別個のアレンジを、テープ操作によって『強引に』繋げる」という手法によって、逆説的だが、カラフルかつモノトーンに色付けしたアレンジが光る。前半のメロトロン中心の脆く崩れそうなサウンドから、途中でホーンセクション中心の力強い(にしては音の空白が大きく、やたら寂しくもあるのだが)パートに変化していく。そしてドラムがフェードアウトしていく、と思ったら帰ってくる、吹きすさぶ風のような音とともに。しかし、その全パートにおいて、そもそもの曲が持つ「孤独感」のような、うすら寒くなりそうな風景は変わらない。
サウンドの奥行きや、その歌の内容、ひたすら空虚さの漂うメロディなどから、強烈に聴く人にイメージを喚起させる曲。ジョンの境遇と併せて考えれば、その風景はあまりに寂しい。PVみたいなやつもまた、曲にいい感じに合ってる。やはりこの曲が、個人的な刹那的な好みを排除すればジョンの最高傑作か。個人的にはビートルズのベストサイケ曲は、これかジョージの『It's All Too Much』。
9.Penny Lane
街中で流れると歩く足取りが軽くなりそうな感じの、ポールのおしゃれポップ。前曲の寂しさを一蹴してしまう陽性ポップさに「ああ、ポールはやっぱりポールだなあ」と思ってしまう。ピアノとホーンがひたすらちょっと陽気でお洒落な昼下がりの街の光景みたいな感じで広がっていく。最後の転調は「立場的に、どんなポップソングにでもどうしてもヒネリを加えたい」ポールの面目躍如といったところか。
10.Baby You're A Rich Man
ジョンとポールの合作らしい、ラーガロック調(ラーガロックって何だ?)の曲。ホワイトストライプスの最新作なんかでも聴ける、いかにもケルトとかその辺って感じのビブラフォンか何かの音が印象的。こう、空中に音で線を引くような音がしますよね。曲自体はまあ、メロディとかしっかりサイケしてるんだけど、ちょっと精彩を欠くか。
11.All You Need Is Love
この時期のジョンにしては割としっかりと地に足ついた感じのするポップソング。イントロの派手なホーンから楽しげな曲のエンディングに至るまで、「昔から今までをすべて包み込むような」多幸感に溢れる。ちょっとホーンやギターがムーディー。ストリングスもゆったりとした大人っぽさがある。しかしジョン独特の雰囲気もあって、ヴァースが微妙に拍子足らずだったりする。サビやアウトロの異様な幸福感、M8で見せた「孤独感」とは全く逆の雰囲気から、あと適度に崩したメロディなどから、そして何より曲自体の放つメッセージから、どことなくソロ以降のジョンレノン作品に繋がる要素を見つけ出すこともできる。


イギリスでは二枚組EPやシングルだった曲たちを、アメリカの奴等が勝手に一緒にして出しちゃった、でも何でか気が付くとこれが公式盤化していたという、なんか不思議なアルバム。なのでそもそもからアルバム一枚としてのまとまりは無い。
アルバム前半が『Sgt.Pepper~』の余力、って感じ。まあ、程よく力が抜けて、いるのか?特にポール。
まあ普通に、後半のシングル群がこのアルバムにおいては重要な訳で。何故かは知らないが、アルバム『Sgt.Pepper~』を聴くよりも、これらのシングル曲の方がよっぽど分かりやすくサイケしているのがなんとも。っていうか、『Penny Lane』と『Strawberry Fields Forever』は『Sgt~』の先行シングルになったばかりに同アルバムから外されたと。もしこの二曲がアルバム入ってたら、絶対今の低評価は無いなあと思う。あとジョージの、『Yellow Submarine』に収録される没曲も入ってたら良かったのに。なんか、もったいないにゃあ。
という訳で、この時期のシングル曲は恐ろしく完成度が高い。間違い無くビートルズの歴史中最強。なのでこのアルバムは存在する。M6~M8の流れは、纏まりとかはともかく、その圧倒的なクオリティの前に跪いてしまう、聴いてると。
まあ、これだけの密度・クオリティの曲の放出がずっと続くわけねーよ、ってのが、次のあの真っ白な名盤の生まれる土壌となる訳ですが。……あれ、全曲レビューするのか。疲れそう。





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