2010年04月28日 13:25
人生で何度目かの個人的サニーデイ周期が来てるな今。
サニーデイ最大の問題作にして大作。付録の『ベイビー・カム・ヒア組曲』も含めれば16曲80分越えという、曽我部のキャリア中でも圧倒的なボリューム。
このアルバムの特徴は、そのボリュームにもあるような、それまでのアルバムのバランスの良さをかなぐり捨てた暴力的かつ焦燥に満ち溢れた作風にある。セルフタイトルの前作でバンドが「完成」してしまった後の、マンネリ化の気配を何としてでも払拭しようというもがきが全編に溢れている。何しろ冒頭から6分台の曲を立て続けに三連発、アルバム最後には10分越えの大曲が腰を据え、さらにおまけの『ベイビー〜』も十分越え。アルバムとしての流れが無い訳ではないが、他の作品のカチッとしたそれではなく、バンドの苦悩のドキュメンタリー的な重さがある。
曲調も、抑圧された熱き血潮で突っ走るフォークナンバーで始まり、カントリータッチな名曲(『シルバー・スター』)やらサニーデイ史上もっともカオスでフリーキーな『僕は死ぬのさ』、音響的な終盤二曲などを経て、淡々とした静から最後の荘厳壮絶なエンディングを迎える大曲『24時のブルース』、そしてもはやボロボロの『ベイビー〜』に至るまで、無秩序に乱れ打たれている。このアルバムがサニーデイのホワイトアルバムと呼ばれる所以である。新しい方向性を血みどろで求めるバンドの、そして曽我部の頭の中を全てさらけ出したようなそれは、時に痛ましく、しかし時に目が覚めるほど美しい。持てる力全て出し切らんとして、尺的制約やらアルバムのカラーやらをかなぐり捨てたバンドの、混沌かつ奔放な姿、そしてそれでも保たれる楽曲の強度!
自分たちの混乱を忠実に表現したこの作品に敬意を表して、あえて四つ星をつける。今思えば、このアルバムでの殆ど死に体での実験の数々が、後の曽我部の音楽性豊かな活動を予感させるものであった。完璧さを放棄して愚直に生き急いで、結果破綻したこの時期の彼等には、四つ星こそ栄誉であるように思う。永遠に完成しない強烈なエネルギーの奔流が、確かにここには収められている。
サニーデイ・サービス『さよなら!街の恋人たち』
この、フォーキーながらやたら重く苦しいムード。曽我部の歌もかなり激しさ入ってる。
サニーデイ・サービス『今日を生きよう』
上とは対照的な超脱力PV。自分はこんなPVつくっといてM.I.Aの新曲のPV(グロ注意)に文句つけるか、というツイートを読んで爆笑した。曲自体はどこか諦観が感じられる。ループなドラム、ループな日常。
当時このアルバムの制作現場を見たらしいライター兵庫氏のレビュー。
アルバムの初回盤に付録している(らしい)レコーディング日誌と合わせて、当時のサニーデイの混乱っぷりがよく見えて来て興味深い。曽我部というずば抜けた才能が最もコントロールを失いかつ才能あふれ出しまくり状態だと、ここまで状況がカオスになるかという。このアルバム最大の聴き所はそこにあるからなあ。ある意味凄く難儀、ある意味凄く人間的。それにしても兵庫さんのレビュー、『MUGEN』と『LOVE ALBUM』を「迷走」と決めちゃうのは、ちょっとむっとしちゃうなあ。確かにバンド的な上昇気流はこの二枚には無いけど。
このアルバムからはサニーデイでもレアな曲が何曲も出た時期で、とりあえず『蜂と蜘蛛』『真昼のできごと』という二大ボツ曲がこの時期にかっちりレコーディングされながら、殆ど酷い扱いを受けている(前者はツアーパンフの付録、後者に至っては「PSソフト「キャイーンのたのしメール」収録」とかいう意味不明な自体の後、曽我部ソロ1stにて再録)。この二曲もかなりいい曲なので、せめてB面集アルバムとかに収録してくれると助かったのになあ。しかし今ではこうやってネットで聴けるので、まあ、便利な時代です。
サニーデイ・サービス『蜂と蜘蛛』
中期ビートルズ的気怠げサイケロック。音のローファイ具合がヘンテコ。どっちのバージョンも終盤の展開はワルノリ気味(笑)
サニーデイ・サービス『真昼のできごと』
細野さんのソロ作的なゆったりとオリエンタルな風味が心地良い、かなりの名曲だと思いますが、マスタリングの最後になって外されたという、不遇な一曲。正直せめてシングルのカップリングとかに押し込んじゃえば良かったのにと思う。
![]() | 24時 (1998/07/15) サニーデイ・サービス 商品詳細を見る |
サニーデイ最大の問題作にして大作。付録の『ベイビー・カム・ヒア組曲』も含めれば16曲80分越えという、曽我部のキャリア中でも圧倒的なボリューム。
このアルバムの特徴は、そのボリュームにもあるような、それまでのアルバムのバランスの良さをかなぐり捨てた暴力的かつ焦燥に満ち溢れた作風にある。セルフタイトルの前作でバンドが「完成」してしまった後の、マンネリ化の気配を何としてでも払拭しようというもがきが全編に溢れている。何しろ冒頭から6分台の曲を立て続けに三連発、アルバム最後には10分越えの大曲が腰を据え、さらにおまけの『ベイビー〜』も十分越え。アルバムとしての流れが無い訳ではないが、他の作品のカチッとしたそれではなく、バンドの苦悩のドキュメンタリー的な重さがある。
曲調も、抑圧された熱き血潮で突っ走るフォークナンバーで始まり、カントリータッチな名曲(『シルバー・スター』)やらサニーデイ史上もっともカオスでフリーキーな『僕は死ぬのさ』、音響的な終盤二曲などを経て、淡々とした静から最後の荘厳壮絶なエンディングを迎える大曲『24時のブルース』、そしてもはやボロボロの『ベイビー〜』に至るまで、無秩序に乱れ打たれている。このアルバムがサニーデイのホワイトアルバムと呼ばれる所以である。新しい方向性を血みどろで求めるバンドの、そして曽我部の頭の中を全てさらけ出したようなそれは、時に痛ましく、しかし時に目が覚めるほど美しい。持てる力全て出し切らんとして、尺的制約やらアルバムのカラーやらをかなぐり捨てたバンドの、混沌かつ奔放な姿、そしてそれでも保たれる楽曲の強度!
自分たちの混乱を忠実に表現したこの作品に敬意を表して、あえて四つ星をつける。今思えば、このアルバムでの殆ど死に体での実験の数々が、後の曽我部の音楽性豊かな活動を予感させるものであった。完璧さを放棄して愚直に生き急いで、結果破綻したこの時期の彼等には、四つ星こそ栄誉であるように思う。永遠に完成しない強烈なエネルギーの奔流が、確かにここには収められている。
サニーデイ・サービス『さよなら!街の恋人たち』
この、フォーキーながらやたら重く苦しいムード。曽我部の歌もかなり激しさ入ってる。
サニーデイ・サービス『今日を生きよう』
上とは対照的な超脱力PV。自分はこんなPVつくっといてM.I.Aの新曲のPV(グロ注意)に文句つけるか、というツイートを読んで爆笑した。曲自体はどこか諦観が感じられる。ループなドラム、ループな日常。
当時このアルバムの制作現場を見たらしいライター兵庫氏のレビュー。
アルバムの初回盤に付録している(らしい)レコーディング日誌と合わせて、当時のサニーデイの混乱っぷりがよく見えて来て興味深い。曽我部というずば抜けた才能が最もコントロールを失いかつ才能あふれ出しまくり状態だと、ここまで状況がカオスになるかという。このアルバム最大の聴き所はそこにあるからなあ。ある意味凄く難儀、ある意味凄く人間的。それにしても兵庫さんのレビュー、『MUGEN』と『LOVE ALBUM』を「迷走」と決めちゃうのは、ちょっとむっとしちゃうなあ。確かにバンド的な上昇気流はこの二枚には無いけど。
このアルバムからはサニーデイでもレアな曲が何曲も出た時期で、とりあえず『蜂と蜘蛛』『真昼のできごと』という二大ボツ曲がこの時期にかっちりレコーディングされながら、殆ど酷い扱いを受けている(前者はツアーパンフの付録、後者に至っては「PSソフト「キャイーンのたのしメール」収録」とかいう意味不明な自体の後、曽我部ソロ1stにて再録)。この二曲もかなりいい曲なので、せめてB面集アルバムとかに収録してくれると助かったのになあ。しかし今ではこうやってネットで聴けるので、まあ、便利な時代です。
サニーデイ・サービス『蜂と蜘蛛』
中期ビートルズ的気怠げサイケロック。音のローファイ具合がヘンテコ。どっちのバージョンも終盤の展開はワルノリ気味(笑)
サニーデイ・サービス『真昼のできごと』
細野さんのソロ作的なゆったりとオリエンタルな風味が心地良い、かなりの名曲だと思いますが、マスタリングの最後になって外されたという、不遇な一曲。正直せめてシングルのカップリングとかに押し込んじゃえば良かったのにと思う。
- コメントをする・見る
- Comments(0)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:日本
2010年04月28日 02:58
アマゾンにまたレビュー書いたので、転載。
よく考えたら、二、三回のクリックで見れるものをわざわざ転載する必要は無いのかも。
本人たちも認める「バンドとしてのサニーデイサービス」の最盛期にリリースされた、四枚目にしてセルフタイトルの「牛盤」。
一曲目『Baby Blue』から、非常にラフでアコースティックな音の響き。この落ち着いたトーンがアルバム全体を支配していて、このアルバムならではの雰囲気を醸し出す。ビートルズやらニールヤングやらニックドレイク(『PINK MOON』!)といった昔のアーティストの枯れた味わいを器用に抽出し、表現したい雰囲気に見事に転化している。また、曲のタイトルやら歌詞の中やらにも先人からの気の利いた引用が見られる。ジャケットも『原始心母』だし。
曽我部のソングライティングは『東京』以降はずっとハイレベルであるが、このアルバムにおいてはシンプルで楽器の生々しい音が響きやすい曲をずらりと並べている。SWW的で多少地味ではあるが、非常にメロウで落ち着いた、味わい深い楽曲揃いである。また、これらの楽曲が並ぶことで作り出すアルバム一枚を通しての雰囲気も抜群。アルバム終盤で爽快なロックを二曲連発した後、『bye bye blackbird』でしっとりかつ壮大に締める頃には少し寂しくも快い味わいが残る。
ジャケットの牧場が象徴的だが、このアルバムは曽我部の全作品中でもとりわけ牧歌的な性質の強いものである。東京の地名は出て来ないし、街が出て来ない曲も多く、代わりにノスタルジックでうっすら叙情的な言葉が並ぶ。まるでどこか閑散とした風景を旅しているような、そのような寂しさと草の香りとメロウさがある。数ある曽我部作品中でもこうした切なくも綺麗な風景を想起させるサウンドとしてはこのアルバムと『MUGEN』が双頭だろう。
雰囲気作りと並んで、このアルバムのとりわけ心地良いところは、その演奏の妙にある。いなたさ全開の演奏の中でも、とりわけ日本のポップシーン史上でも類稀な弱々しさ(失礼!)を見せる丸山晴茂の、少しモタり気味でバタバタしたドラムが、間違いなくこのアルバムの演奏のグルーブの中心を形作っている。ヘタウマと呼ぶにはあまりに心地良いユルユルのタイム感がこのアルバムの牧歌的雰囲気に完全に合致しているという意味で、このアルバムはサニーデイというバンド独特のグルーブの完成を表している(これは同時にこれ以降のバンドのキャリアを苦しめることになるが)。
サニーデイのアルバムは『東京』から現在の最新作『本日は晴天なり』まで、どれも高品質でまたそれぞれの趣を有しているが、このアルバムの持つ「個性」はその中でもとりわけ特殊でそれ故に尊い。
サニーデイ・サービス『NOW』
爽やかな曲に合わせてか、このPVの曽我部もかなり爽やか風に見える。なんかつるっとしてるよねえ。この曲でもあの心地良いバタバタドラムが味わえる。もたるリズムの心地良さ!
よく考えたら、二、三回のクリックで見れるものをわざわざ転載する必要は無いのかも。
![]() | サニーデイ・サービス (1997/10/22) サニーデイ・サービス 商品詳細を見る |
本人たちも認める「バンドとしてのサニーデイサービス」の最盛期にリリースされた、四枚目にしてセルフタイトルの「牛盤」。
一曲目『Baby Blue』から、非常にラフでアコースティックな音の響き。この落ち着いたトーンがアルバム全体を支配していて、このアルバムならではの雰囲気を醸し出す。ビートルズやらニールヤングやらニックドレイク(『PINK MOON』!)といった昔のアーティストの枯れた味わいを器用に抽出し、表現したい雰囲気に見事に転化している。また、曲のタイトルやら歌詞の中やらにも先人からの気の利いた引用が見られる。ジャケットも『原始心母』だし。
曽我部のソングライティングは『東京』以降はずっとハイレベルであるが、このアルバムにおいてはシンプルで楽器の生々しい音が響きやすい曲をずらりと並べている。SWW的で多少地味ではあるが、非常にメロウで落ち着いた、味わい深い楽曲揃いである。また、これらの楽曲が並ぶことで作り出すアルバム一枚を通しての雰囲気も抜群。アルバム終盤で爽快なロックを二曲連発した後、『bye bye blackbird』でしっとりかつ壮大に締める頃には少し寂しくも快い味わいが残る。
ジャケットの牧場が象徴的だが、このアルバムは曽我部の全作品中でもとりわけ牧歌的な性質の強いものである。東京の地名は出て来ないし、街が出て来ない曲も多く、代わりにノスタルジックでうっすら叙情的な言葉が並ぶ。まるでどこか閑散とした風景を旅しているような、そのような寂しさと草の香りとメロウさがある。数ある曽我部作品中でもこうした切なくも綺麗な風景を想起させるサウンドとしてはこのアルバムと『MUGEN』が双頭だろう。
雰囲気作りと並んで、このアルバムのとりわけ心地良いところは、その演奏の妙にある。いなたさ全開の演奏の中でも、とりわけ日本のポップシーン史上でも類稀な弱々しさ(失礼!)を見せる丸山晴茂の、少しモタり気味でバタバタしたドラムが、間違いなくこのアルバムの演奏のグルーブの中心を形作っている。ヘタウマと呼ぶにはあまりに心地良いユルユルのタイム感がこのアルバムの牧歌的雰囲気に完全に合致しているという意味で、このアルバムはサニーデイというバンド独特のグルーブの完成を表している(これは同時にこれ以降のバンドのキャリアを苦しめることになるが)。
サニーデイのアルバムは『東京』から現在の最新作『本日は晴天なり』まで、どれも高品質でまたそれぞれの趣を有しているが、このアルバムの持つ「個性」はその中でもとりわけ特殊でそれ故に尊い。
サニーデイ・サービス『NOW』
爽やかな曲に合わせてか、このPVの曽我部もかなり爽やか風に見える。なんかつるっとしてるよねえ。この曲でもあの心地良いバタバタドラムが味わえる。もたるリズムの心地良さ!
- コメントをする・見る
- Comments(0)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:日本
2010年04月24日 12:29
素晴らしいアルバム!とりあえずアマゾンに投稿したレビューを転載。
サニーデイサービスの再結成アルバム……のはずなんだけど、それにしては調子が違うなあ、というか「たまたま前作からのブランクが十年あるだけ」みたいな感じがするのが不思議。余りにも自然に「サニーデイ」然としていて、驚くような、ほっとするような、感動するようなアルバム。曽我部ソロのどの作品よりも遥かに「サニーデイ」しているので、思わず「曽我部さん器用だからなあ、サニーデイっぽいアルバム作るのも簡単なんだろうなあ」という変な懐疑心も吹き飛んでしまう。
一曲目『恋人たち』のブンチャカブンチャカしたイントロからもう、凄くサニーデイ。包み込むようなメロウでポップな空気感、ジャケットの桃色を想起させる、朧げで小さな幸福感。曽我部の歌も曽我部バンドの力強いところがまるで無く、とても脆い。
続く二曲目や五曲目(かつての未発表曲『まわる花』の再録!)でちょっとそれっぽいファンクを、しかしやはりサニーデイ的なメロウさでもってやってしまったり、また三曲目『ふたつのハート』の終盤でわざわざ「God Only Knows!」と叫んじゃったりなど、サニーデイ的な「音楽マニアっぷり」も随所に、それもごく当たり前のように盛り込まれている。
音の、あと歌の質感的にはその薄皮一枚向こうのノスタルジーを感じさせるメロウさやらエロさが、どこか「『24時』『MUGEN』『LOVE ALBUM』を経て作られたアルバムなんだなあ」などと思わせられる。というかこの三枚からの流れとして非常に自然な音作りになっているのも、先述のキャリアとしての断絶を感じさせない一因かも。特にボーカルの重ね方のエロさにニヤリとする。終盤三曲の音響的なつくりなんか、「この三枚の後の作風」という感じがとても強い(『Poetic Light』のリズムトラックなんか、随分昔のあの大曲を思い出させる!)。個人的には特に『MUGEN』に似た質感を感じる。セピア色の『MUGEN』、薄桃色の『本日は晴天なり』という具合。
リンゴスターや中村一義と同系統のようにも思える(それにしても随分頼り無さげながら(笑))、モタリ気味でバタバタした晴茂くんのドラムからして、もうどうしようもなくサニーデイっぽさが溢れているように思う。いやあ、なんだか本当に「復活」とか「再結成」とかよりも、「活動再開」くらいの軽快で自然なノリが嬉しい。完成度も高く、そしてなにより「これで完成!決定盤!」という感じがしないところが良い。……次作、期待してもいいんですよね、これ?青春と哀愁のサニーデイ、「このまま素敵な日々がずっと続く」のか、果たして……。
個人的には、全体的にアダルティックな雰囲気の中にやたらと王道然としたロックナンバー『五月雨が通り過ぎて』(『サマーソルジャー』なんかに通じる堂々とした感じ!)を入れるところが「やっぱり曽我部さん上手いな」とか思ったりする(というか、「こういう曲調もまだやってくれるんだ!」と、嬉しくなる)。
サニーデイ・サービス『ふたつのハート』
曲自体はモロにサニーデイ!!!って感じだけど、流石に曽我部さんの容姿だけはどうにもこうにも、といった印象(笑)ヒゲがやたら逞しい。そういえば今回の再結成は、意外な三人編成でもライブをやっているとかで、その点呼の曲なんかは三人でも演奏出来るように作られてるなあ、とか思う。まあ曽我部さん歌うまいからギターのコード弾きだけでも凄く良いものになるだろうけど。
ロッキンオンサイトのサニーデイ全アルバムレビュー。参考までに。誰が書いているんだろコレと思ったら、兵庫さんか。スヌーザーの加藤亮太氏のレビューも、特にリアルタイムでファンだった人は必見!
![]() | 本日は晴天なり (2010/04/21) サニーデイ・サービス 商品詳細を見る |
サニーデイサービスの再結成アルバム……のはずなんだけど、それにしては調子が違うなあ、というか「たまたま前作からのブランクが十年あるだけ」みたいな感じがするのが不思議。余りにも自然に「サニーデイ」然としていて、驚くような、ほっとするような、感動するようなアルバム。曽我部ソロのどの作品よりも遥かに「サニーデイ」しているので、思わず「曽我部さん器用だからなあ、サニーデイっぽいアルバム作るのも簡単なんだろうなあ」という変な懐疑心も吹き飛んでしまう。
一曲目『恋人たち』のブンチャカブンチャカしたイントロからもう、凄くサニーデイ。包み込むようなメロウでポップな空気感、ジャケットの桃色を想起させる、朧げで小さな幸福感。曽我部の歌も曽我部バンドの力強いところがまるで無く、とても脆い。
続く二曲目や五曲目(かつての未発表曲『まわる花』の再録!)でちょっとそれっぽいファンクを、しかしやはりサニーデイ的なメロウさでもってやってしまったり、また三曲目『ふたつのハート』の終盤でわざわざ「God Only Knows!」と叫んじゃったりなど、サニーデイ的な「音楽マニアっぷり」も随所に、それもごく当たり前のように盛り込まれている。
音の、あと歌の質感的にはその薄皮一枚向こうのノスタルジーを感じさせるメロウさやらエロさが、どこか「『24時』『MUGEN』『LOVE ALBUM』を経て作られたアルバムなんだなあ」などと思わせられる。というかこの三枚からの流れとして非常に自然な音作りになっているのも、先述のキャリアとしての断絶を感じさせない一因かも。特にボーカルの重ね方のエロさにニヤリとする。終盤三曲の音響的なつくりなんか、「この三枚の後の作風」という感じがとても強い(『Poetic Light』のリズムトラックなんか、随分昔のあの大曲を思い出させる!)。個人的には特に『MUGEN』に似た質感を感じる。セピア色の『MUGEN』、薄桃色の『本日は晴天なり』という具合。
リンゴスターや中村一義と同系統のようにも思える(それにしても随分頼り無さげながら(笑))、モタリ気味でバタバタした晴茂くんのドラムからして、もうどうしようもなくサニーデイっぽさが溢れているように思う。いやあ、なんだか本当に「復活」とか「再結成」とかよりも、「活動再開」くらいの軽快で自然なノリが嬉しい。完成度も高く、そしてなにより「これで完成!決定盤!」という感じがしないところが良い。……次作、期待してもいいんですよね、これ?青春と哀愁のサニーデイ、「このまま素敵な日々がずっと続く」のか、果たして……。
個人的には、全体的にアダルティックな雰囲気の中にやたらと王道然としたロックナンバー『五月雨が通り過ぎて』(『サマーソルジャー』なんかに通じる堂々とした感じ!)を入れるところが「やっぱり曽我部さん上手いな」とか思ったりする(というか、「こういう曲調もまだやってくれるんだ!」と、嬉しくなる)。
サニーデイ・サービス『ふたつのハート』
曲自体はモロにサニーデイ!!!って感じだけど、流石に曽我部さんの容姿だけはどうにもこうにも、といった印象(笑)ヒゲがやたら逞しい。そういえば今回の再結成は、意外な三人編成でもライブをやっているとかで、その点呼の曲なんかは三人でも演奏出来るように作られてるなあ、とか思う。まあ曽我部さん歌うまいからギターのコード弾きだけでも凄く良いものになるだろうけど。
ロッキンオンサイトのサニーデイ全アルバムレビュー。参考までに。誰が書いているんだろコレと思ったら、兵庫さんか。スヌーザーの加藤亮太氏のレビューも、特にリアルタイムでファンだった人は必見!
- コメントをする・見る
- Comments(2)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:日本
2010年04月14日 10:42
ツイッターの書き込みから殆ど引用。
たまたまツタヤにあったので借りた、特に理由も無く(「めんどい」とかその辺の理由)聴いていなかったSufjan Stevensの『Illinoise』を聴いている。ああ、流石にこれは、凄かった。完全な構築。ここまでイメージを広げるのも、そのイメージを音にするのも凄く大変だろうに。(2:33 PM Apr 12th webから)
(19世紀のシカゴで行われた博覧会か何かの歌(!?)こういうものをテーマにする辺りにそのマニアックかつアメリカの根源的なノスタルジアの探求という、正直ポップミュージックとしては高尚過ぎて「な、なんかすげーなオイ」と思ってしまう。しかしてその音楽、我々は19世紀のその雰囲気を知らんが(ましてやアメリカだしね!)でも言われてみると確かにそれに近い雰囲気。どうやってこの雰囲気を掴み、そして音にしようと思ったんだろう、と、制作者の意図と苦労を思うと、こっちが頭痛気味。本当に見事です。しかし)
「今時のシンガーソングライターはここまで圧倒的に作り込めるんだ!」という時代の進歩の素晴らしさも思うけど、それよりも「今時シンガーソングライターならここまでやらなきゃいけないんだ。大変だなあ。」などと思う方が、こういう音楽(トクマルシューゴなんかも同系統だよなあ)を聴いてて思う。 (2:35 PM Apr 12th webから)
「おかざきよしともさん(筆者註:これオレ)がpeople in the boxについて「「ああ、いいなあ」っていうのとドン引きの感情とが併存しちゃう感じ」と仰っていたけど、俺のその感覚はトクマルシューゴに対してだなあ、と思う。好きな音出してるんだけど完璧すぎる。「これ一人でやってんの?」とか思うと絶望する。スキがない。好きなはずなんだけど、やっぱり俺スキだらけのバンドとか不完全さが漂う音楽が好きなのかもとか思う。」(02tabiken02氏のツイートから借用。無断引用申し訳ありません)
そういう意味ではコーネリアスの『ファンタスマ』辺りはその先駆的なものなのか。そしてもしビーチボーイズ『Smile』が60年代に完成していれば、これが全ての始まりになったんだろうな。いや、未完でも、これとか、あとヴァンダイク辺りがやはり先祖か。ファンタジーを作り上げるタイプの音楽。
『Star fruits surf rider』Cornelius
『Cabin Essence』Brian Wilson
『palm desert』van dyke parks
(米国の一部ポップミュージック職人達の、19世紀アメリカ辺りに対する激烈で華麗なノスタルジアは一体なんなんだろう。凄く魅力的に思えると同時になんか人懐っこい感じがするのは、やはり貴族文化があらかじめ排除された新天地としての、「荒野」としてのアメリカの側面からだろうか。)
もう、こういう「世界観構築系音楽」になってくると「曲が良い」ってのはもう、当たり前になってくるよなあ、曲自体はどうやって作ってんだろ、そしてそこからアレンジしまくるのか、と考えるとホント、頭痛がしそうになる。(2:41 PM Apr 12th webから)
偏執的制作過程の気狂いっぷりは、ブライアン・ウィルソンがスマイルに頓挫したことで証明されている。確かに現代の方があの大昔よりも遥かに音を重ねやすくなったとは思うけれど、根底のイマジネーションについては今も昔も変わらない。(2:43 PM Apr 12th webから)
2004年版『Smile』で一応の完成を見た『Heroes And Villains組曲』ちなみに、これらの楽曲中のあらゆるフラグメンツ自体は『Smile』が頓挫した67年に殆どちゃんと存在していた!!
このイマジネーションこそが、プログレもソフトロックもポストロックもエレクトロニカも何もかも飲み込んでしまう怪物。翻って、現代の凄腕シンガーソングライターはみんな、この怪物に取り憑かれてしまっている点で「壮絶だなあ」とか思ってしまう。七尾旅人の『911』なんかもこの系統か!(2:44 PM Apr 12th webから)
『" 911 fantasia " Introduction Movie』七尾旅人 旅人もやはりアメリカの近代的ノスタルジアからの引用を欠かさない辺りが興味深い。
単純なメッセージがどうも意味を上手く果たせなくなりつつある(情報と多様化の海に容易に飲み込まれがちだから)この時代において、何か包括的な主張を、こと音楽で行おうとすると、ここまでやらないといけないのか。圧倒的なイマジネーションの総情報化!思わず唾を飲み襟を正す思い。(2:48 PM Apr 12th webから)
しかし、このような圧倒的イマジネーションによって作られる音楽の壮絶さを思うと「もうジャンルがどうこうとか、本当にちっちぇえな」などと考えてしまう瞬間があるのも事実。そうなのか?もはやジャンルすら技法の中に死滅してしまうような時代なのか?なんかもう、「幸福な空虚」を感じてしまう。(2:53 PM Apr 12th webから)
反面、ライブハウスでは様々なジャンルのライブが分化されゆく過程を辿っているように思われる。ライブの主役はやはり生演奏だと思うので、音響系とは袂を分かっているような感覚。がちゃがちゃした音楽の主舞台はやはりライブ。まあガチャガチャ系と音響系が対バンしたらお互い食い合いそうだしなあ。(2:59 PM Apr 12th webから)
『EMOTION POTION』THE BAWDIES あっでもこれも50'R&Bに対するノスタルジアではあるか。
『ビューティフル』毛皮のマリーズ あっこれも過去の音楽に対する憧憬だらけだな。
(皮肉のつもりは毛頭ないけど、ロックのネタ切れによる「リバイバル的墓荒らし」を「ノスタルジア」というテーマによって現代の音楽に昇華しようとするのが00'のロックミュージックの主流なのかしら、とも思わんでも無い。「古き良きものは今でも良いんだから、今のものにしちゃおうよ」っていう、ある種の開き直り、もしくは「今現代のこの情報量でもってあの「古き良き時代」を科学しよう」というスタンス)
このひとり議論、出口見つからずだらだらだけど、分かりやすく「圧倒的イマジネーション系(表現)」と「現実的バカロックンロール系(パフォーマンス)」のふたつを両極として、そして優等生気取りたい人達がこの間で上手な作品やら中途半端な自己表現やらを行うんだろう、と無理矢理構図ってみる。(3:02 PM Apr 12th webから)
『Title and Registration』Death Cab For Cutie 悪意は無いです。というかむしろ凄く好きだし。こう、「ずば抜けて優等生的」な感じを持ちながら嫌らしくないところが、凄く良いと思う。
『完璧な庭』People In The Box 3ピースバンドでこれだけやれるのは凄いです。まず彼等は曲が難し過ぎるよなと。展開も歌詞もめっちゃ多い。圧倒的な情報量とその的確かつ強靭な処理という点では彼等も大いに00'的だと思われ。
今思うと、「イマジネーションの怪物はもういいや」とか一時期言ってた(その割に『LOVE CITY』とかにその辺の香りをまだ感じるけど)のが曽我部恵一だなあ、など思ったり、またはライブではシンプルに、しかし出来うる限りのイマジネーションを展開させるのが七尾旅人だなあ、など思ったり。(3:14 PM Apr 12th webから)
『ギター』曽我部恵一 圧倒的な「作品」を作ろうとするサニーデイの時代から「日常をさらっと歌う」ソロへの移行。でも『LOVE CITY』だけはサニーデイ期と並び立つ圧倒的名盤な気もする。方向性が違うんだよな。しかもどっちも出来るんだよな彼は。
『Walk On The Wild Side日本語カバー』七尾旅人 超シンプルな弾き語りなのに、圧倒的な主張の強さ!終盤、客は笑っているが、多分旅人的にはマジな部分も多いんだろうなと思う。
壮大なイマジネーション音楽を思って「色々ちっちぇえな」とは考えるけど、でも同時にシンプルな弾き語りもいいものはいいし、それにタイトなバンドも壮絶なバンドもポップなバンドも良いものは良い。もう、考えれば考えるほど情報に我が身を引き裂かれるような感じがする、などと、思考力弱い俺思う。(3:19 PM Apr 12th webから)
「我々こそが「考えれば考えるほど情報に我が身を引き裂かれる世代」である。その苦悩をこそ想え!」とか言っちゃうのは、流石に甘えかなあ。「情報疲れ」なんて、遥かに博識な人達が聞けば失笑ものだろうしなあ。(3:24 PM Apr 12th webから)
![]() | Illinoise (2005/07/05) Sufjan Stevens 商品詳細を見る |
たまたまツタヤにあったので借りた、特に理由も無く(「めんどい」とかその辺の理由)聴いていなかったSufjan Stevensの『Illinoise』を聴いている。ああ、流石にこれは、凄かった。完全な構築。ここまでイメージを広げるのも、そのイメージを音にするのも凄く大変だろうに。(2:33 PM Apr 12th webから)
(19世紀のシカゴで行われた博覧会か何かの歌(!?)こういうものをテーマにする辺りにそのマニアックかつアメリカの根源的なノスタルジアの探求という、正直ポップミュージックとしては高尚過ぎて「な、なんかすげーなオイ」と思ってしまう。しかしてその音楽、我々は19世紀のその雰囲気を知らんが(ましてやアメリカだしね!)でも言われてみると確かにそれに近い雰囲気。どうやってこの雰囲気を掴み、そして音にしようと思ったんだろう、と、制作者の意図と苦労を思うと、こっちが頭痛気味。本当に見事です。しかし)
「今時のシンガーソングライターはここまで圧倒的に作り込めるんだ!」という時代の進歩の素晴らしさも思うけど、それよりも「今時シンガーソングライターならここまでやらなきゃいけないんだ。大変だなあ。」などと思う方が、こういう音楽(トクマルシューゴなんかも同系統だよなあ)を聴いてて思う。 (2:35 PM Apr 12th webから)
「おかざきよしともさん(筆者註:これオレ)がpeople in the boxについて「「ああ、いいなあ」っていうのとドン引きの感情とが併存しちゃう感じ」と仰っていたけど、俺のその感覚はトクマルシューゴに対してだなあ、と思う。好きな音出してるんだけど完璧すぎる。「これ一人でやってんの?」とか思うと絶望する。スキがない。好きなはずなんだけど、やっぱり俺スキだらけのバンドとか不完全さが漂う音楽が好きなのかもとか思う。」(02tabiken02氏のツイートから借用。無断引用申し訳ありません)
そういう意味ではコーネリアスの『ファンタスマ』辺りはその先駆的なものなのか。そしてもしビーチボーイズ『Smile』が60年代に完成していれば、これが全ての始まりになったんだろうな。いや、未完でも、これとか、あとヴァンダイク辺りがやはり先祖か。ファンタジーを作り上げるタイプの音楽。
『Star fruits surf rider』Cornelius
『Cabin Essence』Brian Wilson
『palm desert』van dyke parks
(米国の一部ポップミュージック職人達の、19世紀アメリカ辺りに対する激烈で華麗なノスタルジアは一体なんなんだろう。凄く魅力的に思えると同時になんか人懐っこい感じがするのは、やはり貴族文化があらかじめ排除された新天地としての、「荒野」としてのアメリカの側面からだろうか。)
もう、こういう「世界観構築系音楽」になってくると「曲が良い」ってのはもう、当たり前になってくるよなあ、曲自体はどうやって作ってんだろ、そしてそこからアレンジしまくるのか、と考えるとホント、頭痛がしそうになる。(2:41 PM Apr 12th webから)
偏執的制作過程の気狂いっぷりは、ブライアン・ウィルソンがスマイルに頓挫したことで証明されている。確かに現代の方があの大昔よりも遥かに音を重ねやすくなったとは思うけれど、根底のイマジネーションについては今も昔も変わらない。(2:43 PM Apr 12th webから)
2004年版『Smile』で一応の完成を見た『Heroes And Villains組曲』ちなみに、これらの楽曲中のあらゆるフラグメンツ自体は『Smile』が頓挫した67年に殆どちゃんと存在していた!!
このイマジネーションこそが、プログレもソフトロックもポストロックもエレクトロニカも何もかも飲み込んでしまう怪物。翻って、現代の凄腕シンガーソングライターはみんな、この怪物に取り憑かれてしまっている点で「壮絶だなあ」とか思ってしまう。七尾旅人の『911』なんかもこの系統か!(2:44 PM Apr 12th webから)
『" 911 fantasia " Introduction Movie』七尾旅人 旅人もやはりアメリカの近代的ノスタルジアからの引用を欠かさない辺りが興味深い。
単純なメッセージがどうも意味を上手く果たせなくなりつつある(情報と多様化の海に容易に飲み込まれがちだから)この時代において、何か包括的な主張を、こと音楽で行おうとすると、ここまでやらないといけないのか。圧倒的なイマジネーションの総情報化!思わず唾を飲み襟を正す思い。(2:48 PM Apr 12th webから)
しかし、このような圧倒的イマジネーションによって作られる音楽の壮絶さを思うと「もうジャンルがどうこうとか、本当にちっちぇえな」などと考えてしまう瞬間があるのも事実。そうなのか?もはやジャンルすら技法の中に死滅してしまうような時代なのか?なんかもう、「幸福な空虚」を感じてしまう。(2:53 PM Apr 12th webから)
反面、ライブハウスでは様々なジャンルのライブが分化されゆく過程を辿っているように思われる。ライブの主役はやはり生演奏だと思うので、音響系とは袂を分かっているような感覚。がちゃがちゃした音楽の主舞台はやはりライブ。まあガチャガチャ系と音響系が対バンしたらお互い食い合いそうだしなあ。(2:59 PM Apr 12th webから)
『EMOTION POTION』THE BAWDIES あっでもこれも50'R&Bに対するノスタルジアではあるか。
『ビューティフル』毛皮のマリーズ あっこれも過去の音楽に対する憧憬だらけだな。
(皮肉のつもりは毛頭ないけど、ロックのネタ切れによる「リバイバル的墓荒らし」を「ノスタルジア」というテーマによって現代の音楽に昇華しようとするのが00'のロックミュージックの主流なのかしら、とも思わんでも無い。「古き良きものは今でも良いんだから、今のものにしちゃおうよ」っていう、ある種の開き直り、もしくは「今現代のこの情報量でもってあの「古き良き時代」を科学しよう」というスタンス)
このひとり議論、出口見つからずだらだらだけど、分かりやすく「圧倒的イマジネーション系(表現)」と「現実的バカロックンロール系(パフォーマンス)」のふたつを両極として、そして優等生気取りたい人達がこの間で上手な作品やら中途半端な自己表現やらを行うんだろう、と無理矢理構図ってみる。(3:02 PM Apr 12th webから)
『Title and Registration』Death Cab For Cutie 悪意は無いです。というかむしろ凄く好きだし。こう、「ずば抜けて優等生的」な感じを持ちながら嫌らしくないところが、凄く良いと思う。
『完璧な庭』People In The Box 3ピースバンドでこれだけやれるのは凄いです。まず彼等は曲が難し過ぎるよなと。展開も歌詞もめっちゃ多い。圧倒的な情報量とその的確かつ強靭な処理という点では彼等も大いに00'的だと思われ。
今思うと、「イマジネーションの怪物はもういいや」とか一時期言ってた(その割に『LOVE CITY』とかにその辺の香りをまだ感じるけど)のが曽我部恵一だなあ、など思ったり、またはライブではシンプルに、しかし出来うる限りのイマジネーションを展開させるのが七尾旅人だなあ、など思ったり。(3:14 PM Apr 12th webから)
『ギター』曽我部恵一 圧倒的な「作品」を作ろうとするサニーデイの時代から「日常をさらっと歌う」ソロへの移行。でも『LOVE CITY』だけはサニーデイ期と並び立つ圧倒的名盤な気もする。方向性が違うんだよな。しかもどっちも出来るんだよな彼は。
『Walk On The Wild Side日本語カバー』七尾旅人 超シンプルな弾き語りなのに、圧倒的な主張の強さ!終盤、客は笑っているが、多分旅人的にはマジな部分も多いんだろうなと思う。
壮大なイマジネーション音楽を思って「色々ちっちぇえな」とは考えるけど、でも同時にシンプルな弾き語りもいいものはいいし、それにタイトなバンドも壮絶なバンドもポップなバンドも良いものは良い。もう、考えれば考えるほど情報に我が身を引き裂かれるような感じがする、などと、思考力弱い俺思う。(3:19 PM Apr 12th webから)
「我々こそが「考えれば考えるほど情報に我が身を引き裂かれる世代」である。その苦悩をこそ想え!」とか言っちゃうのは、流石に甘えかなあ。「情報疲れ」なんて、遥かに博識な人達が聞けば失笑ものだろうしなあ。(3:24 PM Apr 12th webから)
- コメントをする・見る
- Comments(0)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:特集的な
2010年02月12日 18:09
2010年は景気がいいのう。川本真琴新譜に小沢健二ライブに、サニーデイも来たか!
サニーデイ・サービス10年ぶりアルバム「本日は晴天なり」
ソロにソカバンにランデブーバンドにと何でもありの曽我部が、あえてサニーデイをやるということは、果たしてどういうことかいな。やはり「サニーデイでやる」ということの意味が現れた作品になると思われ。つまり今の曽我部がサニーデイという器をどのように規定し、音楽として表現するか、ファンに提示するか。
……などと固いことを書きましたが、ライブとかの話を聞くとのんびり楽しくやっているらしく、再結成アルバムというのもあって、やはりそういう雰囲気の出た作品になるのかなあ、とも思います。
しかし、曲目眺めているだけでなんか、凄くワクワクする。もう、この並び自体が「ああ、なんかサニーデイだなあ」って思える辺り、やはり曽我部もかなりはっきりと「サニーデイ・サービス」を提示する気満々だなあと思われ。最後の作品『LOVE ALBUM』から早十年、十年間の曽我部の屈強多彩な活動を踏まえて、どのようなサニーデイサウンドが聴けるのか、ホント楽しみです。
『五月雨が通り過ぎて』とか、もうこの文系気取りっぷり、まさにサニーデイ!
アルバム発売記念ツアーとかしないかなあ。福岡にサニーデイで来てくれないかなあ。
『胸いっぱい』。これの入ったアルバムからもう、十年。曽我部を始め、年取った感じしないですけどね、写真とか見てると。
サニーデイ・サービス10年ぶりアルバム「本日は晴天なり」
ソロにソカバンにランデブーバンドにと何でもありの曽我部が、あえてサニーデイをやるということは、果たしてどういうことかいな。やはり「サニーデイでやる」ということの意味が現れた作品になると思われ。つまり今の曽我部がサニーデイという器をどのように規定し、音楽として表現するか、ファンに提示するか。
……などと固いことを書きましたが、ライブとかの話を聞くとのんびり楽しくやっているらしく、再結成アルバムというのもあって、やはりそういう雰囲気の出た作品になるのかなあ、とも思います。
しかし、曲目眺めているだけでなんか、凄くワクワクする。もう、この並び自体が「ああ、なんかサニーデイだなあ」って思える辺り、やはり曽我部もかなりはっきりと「サニーデイ・サービス」を提示する気満々だなあと思われ。最後の作品『LOVE ALBUM』から早十年、十年間の曽我部の屈強多彩な活動を踏まえて、どのようなサニーデイサウンドが聴けるのか、ホント楽しみです。
曲目
01. 恋人たち
02. Somewhere in My Heart
03. ふたつのハート
04. 南口の恋
05. まわる花
06. 水色の世界
07. 五月雨が通り過ぎて
08. Dead Flowers
09. Poetic Light
10. だれも知らなかった朝に
『五月雨が通り過ぎて』とか、もうこの文系気取りっぷり、まさにサニーデイ!
アルバム発売記念ツアーとかしないかなあ。福岡にサニーデイで来てくれないかなあ。
『胸いっぱい』。これの入ったアルバムからもう、十年。曽我部を始め、年取った感じしないですけどね、写真とか見てると。
- コメントをする・見る
- Comments(4)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:日本
2010年02月07日 16:07
有名な歪みネコジャケじゃあ!ラブリー。
1. ウサギのバイク
冒頭から延々と続くアコギの繊細で幻惑的なアルペジオが、まるで落ち葉の溜まった森の奥深くへ聴き手を誘うかのように響く。非常に柔らかくて弱々しくて綺麗な世界。他の演奏もその雰囲気を壊さないように鳴る。シンバルやパーカッション、またはタムなどを演劇みたいに鳴らしたりするドラムは可愛らしくもある。少し遠目に鳴るギターソロがちょっと壮大さも感じさせたりしてとても良い。一回目の繰り返しを全部スキャットで歌う草野からして、幻惑する気満々。女性コーラスの重なり方も良い。「ウサギのバイクで逃げ出そう」という歌詞の出だしからもう、初期スピッツ全開。「氷の丘」という初期らしい単語も飛び出す。「脈拍のおかしなリズム」に、この可愛らしさの、しかし同時に魂も抜かれてしまいそうな雰囲気が出ている。草野氏も自讃する、スピッツの良いところがとても可憐に表現された名曲!
2. 日曜日
力強いギターストロークで進行するどっしりロック気味な曲。でも、戦車的なサウンドに乗る草野のポップでダレ気味のメロディのバランスがスピッツ的で「戦車は二人を乗せて」というフレーズの重厚さと柔らかさのバランスを曲の雰囲気で成している。一回だけ登場するブリッジ部のちょっと演劇がかった展開もロマンチックさを感じさせる、けどその後の笑い声は何?「昨日の夢で手に入れた魔法で 蜂になろうよ このまま淡い記憶の花を探しながら」と、普通に聴いてると自然な言葉の数々が、実はこのようにどうしようもなく繋がって妄想していて笑える。
3. 名前をつけてやる
ちょっとハネた、けどかなりまったりな曲のリズムが、確かにジャケットのダレた猫を思わせる。トレモロやワウなどのエフェクトのギターのカッティングがサビでシューゲイズ風になるところに組み合わせの妙を感じる。ギターソロをシューゲにしないのも良い。ハスキーな調子のAメロととぼけて舞い上がるサビの対比も上手い。サビも最後だらしなくメロディが落っこちて、トホホ可愛い。そんな可愛らしい曲調の中に「むき出しの出っ張り」だの「ふくらんだシャツのボタンを ひきちぎるスキなど探しながら」とのうのうとエッチなフレーズを突っ込むセンス、しかもそれをとても可愛らしくやってしまうところが流石。そんなエロの癖に、終盤の急にスカスカに各楽器が響く中を草野のコーラスが響くところはやはり幻想的。このアルバムは毒とエロが可愛らしい幻想性に包まれているのがとても良い。
4. 鈴虫を飼う
三輪作曲の穏やかな曲。草野的なトロンとした感じは希薄で、その分シンプルでスタンダードなメロディがアルバム内でいい意味で「普通」という個性を有している。アクセント的存在。くっきりのどかなサウンド(特にハネたベース)の中で、しかしギターだけはリバーブ気味に鳴らされシューゲ的・宇宙的なスケール感を有していて、両者が合わさると夜空な感じになる。サビのマンドリンが特徴的。所々の妙に現実的に毒々しいフレーズがサビの孤独感・夜空の下の寂しさに繋がっていく。
5. ミーコとギター
ワウなギターがマッドチェスターなどを感じさせる、ポップだが元気一杯な曲。ベースがもう、動きが多くて可愛くて堪らない。SE的でSF的なギターとこの意地悪でポップな歌うベースの組み合わせがとても良い。ミドルエイトでボーカルに加工が入るところもノリがあって良い。そこから入るギターソロの開け方も宇宙的だがまたすぐに歌に着陸する。シンプルに歌を構築するソングライティングが好き。しかしそんな快活さの裏で歌詞は混迷を極めている。単語の突飛な並びが衝撃的な『テレビ』に対して、こちらはフレーズ自体はシンプルながら、その意味合い、「ミーコ」なる女の子の状況が酷くこんがらがってしまった(「そしてミーコの彼はミーコの彼じゃない」!文学的状況想像が膨らむ)、が、それでも切なくて可愛いミーコの姿が浮かんでくるから、流石草野氏と思わずにはいられない。ああくそう、可愛いなあミーコ。三分無い曲だが、とてもおいしい。
6. プール
最初に響く澄んだギターの音だけで皆殺しな、後々まで一貫して持つ彼等の透明感が端的に現れた名曲。シューゲイザーサウンドの本当に澄んだ部分を取り出して夏の気怠さに転化してしまう手法はもう、見事としか言えない。寂しげなテンポで響くギターの音。ギターソロもホント、キラキラして切ない。何気に良く動くベースが可愛い。AメロとBメロだけのシンプルなソングライティングもそれぞれのメロディのささやかな美しさを活かしているし、何よりも二回目のBメロ後の展開を特別なものにしている。この、自分だけ時が止まって周りがゆっくり流れていくような感覚の展開、初期スピッツ流シューゲイザーサウンドの最も強力な武器だと思う。歌詞だって凄い。気怠げな爽やかさ、キラキラ眩しい表現、慎ましやかでかえってエロい表現、そして夏蜘蛛という単語。蜘蛛の足八本→重なり合う二人の手足、だなんて、凄過ぎる……。シンプルにして完璧という、その理想型のひとつ。
7. 胸に咲いた黄色い花
アルバム中でも最も分かり易くポップな楽曲か。イントロの可愛くてポップでちょっと捻くれたギターフレーズ(三輪曰くXTCのイメージらしい。なんか分かる。特に最後のサビで増えるギターはネタバラし的)が印象的。Aメロのリズムはスタンダードポップス的、バラライカの音まで飛び出す。サビのメロディもはっきりと朗らかな感じで安心出来る。ミドルエイトで一回溜めてからメインリフに戻る展開も効果的で、草野が何気に良質なミドルエイトメーカーであることが分かる。逆再生ギターやタム回しなど、宇宙的スケール感の維持も忘れない演奏も良い。「このまま僕のそばにいてずっと もう消えないでね」と可愛いメロディで懇願するが、「明日になればこの幻も終わる」。可愛いくせに徹底的に冷めた部分がチラチラ見える辺りやはり初期スピッツ、気が抜けない。
8. 待ち合わせ
不穏なフィードバックギターから派手なギターリフが響き、パンクなリズムで疾走するロック曲。ブリッジでどっしりと展開するのはお約束とはいえ、それをスピッツで聴くと何故かとても新鮮で素敵だからズルい。歌のメロディに前作的なフニャフニャした部分が無い分こちらの方が分かり易い。ギターのテンションの高さがアルバムのアクセントに。しかし歌詞はもう「何言ってんのこの人?大丈夫?」感全開で笑えるもとい切ない。「だけど君は来ない待ち合わせの星へ 約束した場所へ」で「百万年前に約束した場所」だそうだ。しかも焦燥感に満ちた「待ちわびた僕の涙」。まいったねこりゃ。
9. あわ
前曲から一転、仄かにボサノバやジャズの香りのするアルバム中最も穏やかのんびりな曲。しかし草野の珍妙な歌詞や歌い方のお陰で鼻につくようなお洒落さは周到に取り除かれている。慎み深いと言うか剽軽というかシャイと言うか、その辺まさにスピッツ。のんびりと逆三角形的にランニングするベースなどもなんかシュールに聴こえて笑える。サビの頼り無いメロディはまさに「あわになって溶け出」すよう。二回し歌ったらもうサビに帰って来ずにのんびりと演奏が続いていくのも、とぼけているような切ないような。「本当は逆さまだってよ」「優しいひとやっぱりやだよ」なんてパンク風味なフレーズをこののんびりした曲に入れちゃうセンスがもう、愛くるしい。
10. 恋のうた
いきなり歌から始まる、このアルバムでは珍しくはっきりしたサウンドが特徴の可愛い小曲。カントリーライクで非UKギタポ的な素朴なアコギの響きや彼岸的なメロディの無い明朗な歌など、のんびりとピースフルな感じ。歌詞もシンプル。「おさえきれぬ僕の気持ち おかしな夢ばかり見てさ」はまるで初期スピッツの異常さを自己言及しているかのよう。「君と出会えたことを僕 ずっと大事にしたいから 僕がこの世に生まれてきた訳にしたいから」なんて、普通にとても可愛らしいのに、それを草野が歌う!ずるい!インディ時代のパンクなスピッツの方向転換になった曲。
11. 魔女旅に出る
豪華なオーケストラやコーラスを配した、壮大なストーリーの予感を感じさせる曲でアルバムは終わる。でも、旅に出るのはあくまで「君」なところが何とも情け無い。サビのメロディのささやか具合も、初期スピッツの地に足着いてない感じが上手く出ているように思える。壮大なオーケストラはまさに劇のエンディングみたいな具合で、まるで騙されたかのような不思議な幸福感と「あれ?」に包まれる。妄想メルヘンなアルバムの締めが最高にメルヘンなオーケストラ曲というのが、よく出来てるなあと。出だしから「ほら苺の味に似てるよ」なんて、絶妙なメルヘン具合。「泣かないで 行かなくちゃ」と出発を促すのは、「こんなところにいたらダメだよ!ほら、もっとまともな世界へ!でも帰って来たくなったら「いつでもここにいるからね」」と言っているようで、やはり最後まで情け無くて滑稽。『ウサギのバイク』で誘っておいて、この曲で「さあ、お帰り」と言っているような気もする。あと、何気にベースが凄く歌っているのに最近気付いてびっくり。
スピッツの2ndアルバム。卑怯なほど可愛いジャケット、スピッツの可愛さと妄想具合がしとやかに表現されたアルバム、そして日本語ロックの重要な名盤などと呼ばれる。このような名盤が当時、前作から僅か8ヶ月でリリースされたんだから、メンバーも「作った時のことを良く覚えてないけど、スムーズに行ったみたい」などと回想するほどなんだから、分からないもんである。
前作から8ヶ月後のリリースというのもあって、基本的には前作とサウンド的な志向は同じ。80'sUKギタポ〜シューゲイザー、もっと言うと「クリエイションレーベル」で換言出来そうなジャンルの音楽を自分たちのユーモア込みで取り入れたサウンドは、確かに要素は同じものな筈なのにしかし、前作とは響きが随分違うように思われる。ぼんやりとした気持ち悪さ・残酷さが感じられた前作に対し、こちらもぼんやりとはしているが、どこか大人しく、おだやかのんびりで、そして可愛い、聴き易い感じがするのは、まるでジャケット通りに、前作のサウンドが上手に「猫を被った」ような感じさえする。
個人的にはこの「猫を被った」感じの要素が前作と今作の大きな違いであり、またこのアルバムが一枚の「名盤」として高く評価される所以だと思う。高速で制作されたアルバムはサウンド的な大転換などはあまり見られず、その分曲のクオリティアップや細かいギミックの工夫、また高速で制作した故の全体のトータルな雰囲気などが、収録時間40分弱という収まりの良い一枚に結実している。前作で非常に苦労したらしい録音の行程も今作ではとてもスムーズに行われたらしく、各サウンドはユーモアセンスも十分に含みながら伸び伸びと鳴っている感じがする。何故か草野のソングライティングもぱりっとしたポップさや可愛らしさの成分が増加し、そこに巧妙に性と死、空虚などの毒を混入するから、ある意味かえってタチが悪いのかもしれない。この猫、毒持ちにつき、である。
何気にスピッツ流のシューゲイザーサウンドは進化し、輪郭のはっきりした曲やサウンドにシューゲ要素を取り込むなど、前作以上により「スピッツサウンド」化している。『プール』はもしかしたらスピッツの『Vapour Trail』かもしれない(この時期メンバーは自ら「歌謡ライド」と名乗っていたらしい)。スピッツが持つノスタルジックで頭がぼんやりしながらも胸を痛めるような側面は、後のロック要素も地に足着いたポップ要素も薄いこのアルバムにこそはっきりと出てきているのかもしれない。幻想的な雰囲気ではスピッツでも最高の部類だと思われ。『ウサギのバイク』でしっとり誘われて、『魔女旅に出る』で壮大に送り出される、そういう素敵でポップで時々危なっかしくて切ない、そんな小さくて美しく纏まった40分弱のメルヘンな絵本の世界、というのがこのアルバムの個人的な見方。
『ウサギのバイク』曲だけ。シューゲイザーともサイケとも言えない、スピッツらしい夢見心地。
『恋のうた』ライブ。草野さんギター持たずに歌うこともあるんだな。
『魔女旅に出る』ライブ、というかコンサートって感じだなあ。スタジオ版以上に豪華なオーケストレーションが凄いが、曲もなかなか負けていない様子。っていうかこの曲ここまでできちゃうんだ。切なさの代わりにこみ上げてくるもんがあるなあとか思ったり。
![]() | 名前をつけてやる (2002/10/16) スピッツ 商品詳細を見る |
1. ウサギのバイク
冒頭から延々と続くアコギの繊細で幻惑的なアルペジオが、まるで落ち葉の溜まった森の奥深くへ聴き手を誘うかのように響く。非常に柔らかくて弱々しくて綺麗な世界。他の演奏もその雰囲気を壊さないように鳴る。シンバルやパーカッション、またはタムなどを演劇みたいに鳴らしたりするドラムは可愛らしくもある。少し遠目に鳴るギターソロがちょっと壮大さも感じさせたりしてとても良い。一回目の繰り返しを全部スキャットで歌う草野からして、幻惑する気満々。女性コーラスの重なり方も良い。「ウサギのバイクで逃げ出そう」という歌詞の出だしからもう、初期スピッツ全開。「氷の丘」という初期らしい単語も飛び出す。「脈拍のおかしなリズム」に、この可愛らしさの、しかし同時に魂も抜かれてしまいそうな雰囲気が出ている。草野氏も自讃する、スピッツの良いところがとても可憐に表現された名曲!
2. 日曜日
力強いギターストロークで進行するどっしりロック気味な曲。でも、戦車的なサウンドに乗る草野のポップでダレ気味のメロディのバランスがスピッツ的で「戦車は二人を乗せて」というフレーズの重厚さと柔らかさのバランスを曲の雰囲気で成している。一回だけ登場するブリッジ部のちょっと演劇がかった展開もロマンチックさを感じさせる、けどその後の笑い声は何?「昨日の夢で手に入れた魔法で 蜂になろうよ このまま淡い記憶の花を探しながら」と、普通に聴いてると自然な言葉の数々が、実はこのようにどうしようもなく繋がって妄想していて笑える。
3. 名前をつけてやる
ちょっとハネた、けどかなりまったりな曲のリズムが、確かにジャケットのダレた猫を思わせる。トレモロやワウなどのエフェクトのギターのカッティングがサビでシューゲイズ風になるところに組み合わせの妙を感じる。ギターソロをシューゲにしないのも良い。ハスキーな調子のAメロととぼけて舞い上がるサビの対比も上手い。サビも最後だらしなくメロディが落っこちて、トホホ可愛い。そんな可愛らしい曲調の中に「むき出しの出っ張り」だの「ふくらんだシャツのボタンを ひきちぎるスキなど探しながら」とのうのうとエッチなフレーズを突っ込むセンス、しかもそれをとても可愛らしくやってしまうところが流石。そんなエロの癖に、終盤の急にスカスカに各楽器が響く中を草野のコーラスが響くところはやはり幻想的。このアルバムは毒とエロが可愛らしい幻想性に包まれているのがとても良い。
4. 鈴虫を飼う
三輪作曲の穏やかな曲。草野的なトロンとした感じは希薄で、その分シンプルでスタンダードなメロディがアルバム内でいい意味で「普通」という個性を有している。アクセント的存在。くっきりのどかなサウンド(特にハネたベース)の中で、しかしギターだけはリバーブ気味に鳴らされシューゲ的・宇宙的なスケール感を有していて、両者が合わさると夜空な感じになる。サビのマンドリンが特徴的。所々の妙に現実的に毒々しいフレーズがサビの孤独感・夜空の下の寂しさに繋がっていく。
5. ミーコとギター
ワウなギターがマッドチェスターなどを感じさせる、ポップだが元気一杯な曲。ベースがもう、動きが多くて可愛くて堪らない。SE的でSF的なギターとこの意地悪でポップな歌うベースの組み合わせがとても良い。ミドルエイトでボーカルに加工が入るところもノリがあって良い。そこから入るギターソロの開け方も宇宙的だがまたすぐに歌に着陸する。シンプルに歌を構築するソングライティングが好き。しかしそんな快活さの裏で歌詞は混迷を極めている。単語の突飛な並びが衝撃的な『テレビ』に対して、こちらはフレーズ自体はシンプルながら、その意味合い、「ミーコ」なる女の子の状況が酷くこんがらがってしまった(「そしてミーコの彼はミーコの彼じゃない」!文学的状況想像が膨らむ)、が、それでも切なくて可愛いミーコの姿が浮かんでくるから、流石草野氏と思わずにはいられない。ああくそう、可愛いなあミーコ。三分無い曲だが、とてもおいしい。
6. プール
最初に響く澄んだギターの音だけで皆殺しな、後々まで一貫して持つ彼等の透明感が端的に現れた名曲。シューゲイザーサウンドの本当に澄んだ部分を取り出して夏の気怠さに転化してしまう手法はもう、見事としか言えない。寂しげなテンポで響くギターの音。ギターソロもホント、キラキラして切ない。何気に良く動くベースが可愛い。AメロとBメロだけのシンプルなソングライティングもそれぞれのメロディのささやかな美しさを活かしているし、何よりも二回目のBメロ後の展開を特別なものにしている。この、自分だけ時が止まって周りがゆっくり流れていくような感覚の展開、初期スピッツ流シューゲイザーサウンドの最も強力な武器だと思う。歌詞だって凄い。気怠げな爽やかさ、キラキラ眩しい表現、慎ましやかでかえってエロい表現、そして夏蜘蛛という単語。蜘蛛の足八本→重なり合う二人の手足、だなんて、凄過ぎる……。シンプルにして完璧という、その理想型のひとつ。
7. 胸に咲いた黄色い花
アルバム中でも最も分かり易くポップな楽曲か。イントロの可愛くてポップでちょっと捻くれたギターフレーズ(三輪曰くXTCのイメージらしい。なんか分かる。特に最後のサビで増えるギターはネタバラし的)が印象的。Aメロのリズムはスタンダードポップス的、バラライカの音まで飛び出す。サビのメロディもはっきりと朗らかな感じで安心出来る。ミドルエイトで一回溜めてからメインリフに戻る展開も効果的で、草野が何気に良質なミドルエイトメーカーであることが分かる。逆再生ギターやタム回しなど、宇宙的スケール感の維持も忘れない演奏も良い。「このまま僕のそばにいてずっと もう消えないでね」と可愛いメロディで懇願するが、「明日になればこの幻も終わる」。可愛いくせに徹底的に冷めた部分がチラチラ見える辺りやはり初期スピッツ、気が抜けない。
8. 待ち合わせ
不穏なフィードバックギターから派手なギターリフが響き、パンクなリズムで疾走するロック曲。ブリッジでどっしりと展開するのはお約束とはいえ、それをスピッツで聴くと何故かとても新鮮で素敵だからズルい。歌のメロディに前作的なフニャフニャした部分が無い分こちらの方が分かり易い。ギターのテンションの高さがアルバムのアクセントに。しかし歌詞はもう「何言ってんのこの人?大丈夫?」感全開で笑えるもとい切ない。「だけど君は来ない待ち合わせの星へ 約束した場所へ」で「百万年前に約束した場所」だそうだ。しかも焦燥感に満ちた「待ちわびた僕の涙」。まいったねこりゃ。
9. あわ
前曲から一転、仄かにボサノバやジャズの香りのするアルバム中最も穏やかのんびりな曲。しかし草野の珍妙な歌詞や歌い方のお陰で鼻につくようなお洒落さは周到に取り除かれている。慎み深いと言うか剽軽というかシャイと言うか、その辺まさにスピッツ。のんびりと逆三角形的にランニングするベースなどもなんかシュールに聴こえて笑える。サビの頼り無いメロディはまさに「あわになって溶け出」すよう。二回し歌ったらもうサビに帰って来ずにのんびりと演奏が続いていくのも、とぼけているような切ないような。「本当は逆さまだってよ」「優しいひとやっぱりやだよ」なんてパンク風味なフレーズをこののんびりした曲に入れちゃうセンスがもう、愛くるしい。
10. 恋のうた
いきなり歌から始まる、このアルバムでは珍しくはっきりしたサウンドが特徴の可愛い小曲。カントリーライクで非UKギタポ的な素朴なアコギの響きや彼岸的なメロディの無い明朗な歌など、のんびりとピースフルな感じ。歌詞もシンプル。「おさえきれぬ僕の気持ち おかしな夢ばかり見てさ」はまるで初期スピッツの異常さを自己言及しているかのよう。「君と出会えたことを僕 ずっと大事にしたいから 僕がこの世に生まれてきた訳にしたいから」なんて、普通にとても可愛らしいのに、それを草野が歌う!ずるい!インディ時代のパンクなスピッツの方向転換になった曲。
11. 魔女旅に出る
豪華なオーケストラやコーラスを配した、壮大なストーリーの予感を感じさせる曲でアルバムは終わる。でも、旅に出るのはあくまで「君」なところが何とも情け無い。サビのメロディのささやか具合も、初期スピッツの地に足着いてない感じが上手く出ているように思える。壮大なオーケストラはまさに劇のエンディングみたいな具合で、まるで騙されたかのような不思議な幸福感と「あれ?」に包まれる。妄想メルヘンなアルバムの締めが最高にメルヘンなオーケストラ曲というのが、よく出来てるなあと。出だしから「ほら苺の味に似てるよ」なんて、絶妙なメルヘン具合。「泣かないで 行かなくちゃ」と出発を促すのは、「こんなところにいたらダメだよ!ほら、もっとまともな世界へ!でも帰って来たくなったら「いつでもここにいるからね」」と言っているようで、やはり最後まで情け無くて滑稽。『ウサギのバイク』で誘っておいて、この曲で「さあ、お帰り」と言っているような気もする。あと、何気にベースが凄く歌っているのに最近気付いてびっくり。
スピッツの2ndアルバム。卑怯なほど可愛いジャケット、スピッツの可愛さと妄想具合がしとやかに表現されたアルバム、そして日本語ロックの重要な名盤などと呼ばれる。このような名盤が当時、前作から僅か8ヶ月でリリースされたんだから、メンバーも「作った時のことを良く覚えてないけど、スムーズに行ったみたい」などと回想するほどなんだから、分からないもんである。
前作から8ヶ月後のリリースというのもあって、基本的には前作とサウンド的な志向は同じ。80'sUKギタポ〜シューゲイザー、もっと言うと「クリエイションレーベル」で換言出来そうなジャンルの音楽を自分たちのユーモア込みで取り入れたサウンドは、確かに要素は同じものな筈なのにしかし、前作とは響きが随分違うように思われる。ぼんやりとした気持ち悪さ・残酷さが感じられた前作に対し、こちらもぼんやりとはしているが、どこか大人しく、おだやかのんびりで、そして可愛い、聴き易い感じがするのは、まるでジャケット通りに、前作のサウンドが上手に「猫を被った」ような感じさえする。
個人的にはこの「猫を被った」感じの要素が前作と今作の大きな違いであり、またこのアルバムが一枚の「名盤」として高く評価される所以だと思う。高速で制作されたアルバムはサウンド的な大転換などはあまり見られず、その分曲のクオリティアップや細かいギミックの工夫、また高速で制作した故の全体のトータルな雰囲気などが、収録時間40分弱という収まりの良い一枚に結実している。前作で非常に苦労したらしい録音の行程も今作ではとてもスムーズに行われたらしく、各サウンドはユーモアセンスも十分に含みながら伸び伸びと鳴っている感じがする。何故か草野のソングライティングもぱりっとしたポップさや可愛らしさの成分が増加し、そこに巧妙に性と死、空虚などの毒を混入するから、ある意味かえってタチが悪いのかもしれない。この猫、毒持ちにつき、である。
何気にスピッツ流のシューゲイザーサウンドは進化し、輪郭のはっきりした曲やサウンドにシューゲ要素を取り込むなど、前作以上により「スピッツサウンド」化している。『プール』はもしかしたらスピッツの『Vapour Trail』かもしれない(この時期メンバーは自ら「歌謡ライド」と名乗っていたらしい)。スピッツが持つノスタルジックで頭がぼんやりしながらも胸を痛めるような側面は、後のロック要素も地に足着いたポップ要素も薄いこのアルバムにこそはっきりと出てきているのかもしれない。幻想的な雰囲気ではスピッツでも最高の部類だと思われ。『ウサギのバイク』でしっとり誘われて、『魔女旅に出る』で壮大に送り出される、そういう素敵でポップで時々危なっかしくて切ない、そんな小さくて美しく纏まった40分弱のメルヘンな絵本の世界、というのがこのアルバムの個人的な見方。
『ウサギのバイク』曲だけ。シューゲイザーともサイケとも言えない、スピッツらしい夢見心地。
『恋のうた』ライブ。草野さんギター持たずに歌うこともあるんだな。
『魔女旅に出る』ライブ、というかコンサートって感じだなあ。スタジオ版以上に豪華なオーケストレーションが凄いが、曲もなかなか負けていない様子。っていうかこの曲ここまでできちゃうんだ。切なさの代わりにこみ上げてくるもんがあるなあとか思ったり。
- コメントをする・見る
- Comments(0)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:日本
2010年02月07日 07:30
初期だけ。スピッツはまんべんなく好きですけど。とりあえず初期だけ。
1. ニノウデの世界
一音目からバンド全体で元気よく始まる割とどっしりした一曲目。繊細なアルペジオが歌の後ろで早速舞い上がっているがディストーションギターの出番も多い。この曲に限らずだが、籠った感じの音が幻想的に響く。バンドブーム時代的な音の古さが惜しまれる、特にドラムの音。不思議な符割りで上昇するサビが印象的。ミドルエイトの超高音ボーカルには正直ビビる。早速歌詞は難解で、シュールな言葉の中に二人だけの幼くも退廃的な世界が見えてくる。「冷たくて柔らかな 二人でカギかけた小さな世界」。性と死、あるいは虚無、そういったイメージが晴れやかなのに冴えないサウンドと共に浮かび上がる。デビューアルバムの一曲目で、なんかもういきなり小さな世界の果てでぐったりしている。
2. 海とピンク
ツーコードのシンプルなメロディがシュールで幻惑的な「チューチュチュー」のスキャットまで軽快に突っ走っていく割と元気な曲。リズムにスピッツが元々パンクバンドだった名残が見える、が、歌も合わせるととても気怠げ。ソロも弾くアコギの響きが目立つ。歌詞はもう、やるせなくなってくる。冒頭から「ほらピンクのまん○」、「繰り返し遊んだ」と性的なモチーフも、「言葉だけ無邪気になる ほらまただまされてた」とか、可愛く意地悪だけどなんか虚しいし、そして結局「ちょっときみを見て 海を見て あくびして」で締める。このどうしようもない気怠さ。
3. ビー玉
穏やかにふわっとした雰囲気で終始進む、まさに気怠さそのものな曲。間奏のハーモニカがカントリーっぽくもあるが、やっぱり薄らと目眩がしてくるようなまったり具合。草野の歌もメインのコーラスを中心に非常にフニャフニャで、頼り無いを通り越して不安にさえなる。いきなりの「おまえの最期を見てやる」とか、「みんな夢のように消え去って」とか「俺は狂っていたのかな」とか、どうしようもない表現の数々が、サビの「タマシイころがせ チィパ チィパ チィパチィパ」に集約される様はぼんやりとした寒気を感じる。
4. 五千光年の夢
またパンク的、もっと言えばバンドブーム的なハネたリズムで進行する軽快な曲。この曲までダルダルでぼんやりとした曲が続くので、少々ダレる。サビらしくないサビの変なコード感はUKネオアコ的な耽美さも。最後のコーラスとギターソロの並走でぼんやりと世界観が広がる。「うしろ向きのままで」「なんだか寂しいな」「ちょっと照れくさくて」といった具合で、タイトルの意味するところの意味不明な消極性・妄想性が連想される。
5. 月に帰る
ちょっとこれまでと変わって、割とはっきりと爽やかでロマンチックなメロディの、ギターの三輪徹也による曲。壮大な世界の広がりを思わせるコード感やギターサウンドは後の『青い車』やら『渚』やらの開放感に繋がっていきそうな、そういうスケール感をもった曲。この曲ではそれが妄想的に宇宙的な方向に向かう。サビのメロディの舞い上がり方とか、そういうイメージにうってつけ。そんな宇宙的な広がりを見せるSE的なギターが素敵。特に終盤の無数の流れ星みたいなギター、逆再生なども用いたそれはとても幻想的で、シューゲイザー的。歌の裏で鳴っているアルペジオのadd9な響きが、やっぱギターポップだよなあ、と思わせる。
6. テレビ
イントロからして難解。どこでAメロ始まってんだ?バンドブームっぽい高速ツービートかと思ったら急にしっとりして、サビで爽やかにドライブする。気怠げながらぐるぐる回るメロディがサビで抜けて行く具合は良い。ミドルエイトのブレイクからまた少し宇宙的・シューゲ的広がりをかいま見せるところにニヤリとする。しかしそんなことしている場合でないほどに歌詞が混迷を極めきっている。文句無くスピッツでも五本の指に入る難解さ。爽やかに舞うサビの「マントの怪人 叫ぶ夜」を筆頭に、どうすればそうなるのか分からない言葉の連なりがぞろぞろ。「カボチャとナスは仲良しか それもいいや だって」とか、もう、何!?しかも、そんな訳の分からない言葉の並びも、ギリギリのところでちゃんと意味が通るように配置されていることに、ファンなどのこの歌詞の解釈(解説ページでもやはりこの曲が一番議論となっている)をいくつかつまんで見て再度驚く。「おなかの大きなママ」のフレーズで衝撃を受ける。なんちゅう世界観だ……。もちろん正解は無いので、とりあえずスピッツに、いや、変なものに興味がある人は、とりあえず歌詞を読んでほしい。頭痛くなってくる。輪廻転生かあ、なら曲調のぐるぐるした変化もなんか分かるなあ。
7.タンポポ
ゆったりぼんやりとした三拍子の、長い曲。マイナー調ではないけれど、しかしかなり陰鬱。全体的にぼんやりした音やフラフラしたメロディがとても幻想的に頼り無く、間奏の長めのギターソロが虚しげに響く。サビの「ふんずけられて また起きて道ばたの花 ずっと見つめていたよ」というフレーズがもう、どうしようもなく重たい。最後は「どうかこのまま僕とここにいて欲しい」と情け無く言い出す始末。「太陽は黄ばんでいた」というフレーズがすべて表しているような、明るいが故に虚しいタイプの曲。
7. 死神の岬へ
鬱で内向的な前曲から一気に切り替わり、爽やかに風景が開けるような雰囲気。軽快なリズムでテンポよく可愛いメロディを歌うので安心する。また三輪作曲。このアルバムの三輪曲はほっとするタイミングで爽やかに入ってくる。Bメロで上り詰めてサビでさらっと下りて行くような具合のメロディはとても美しい。これも『青い車』とかに通じる開放感がある、と思ったらこの曲も移動は車だった。間奏で変な音が沢山入ってサイケデリックになっても、また爽やかに駆け出すので安心する。「愛と希望に満たされて 誰もかもすごく疲れた」なんて皮肉な出だしから、サビの乾いて寂しげな情景描写へ向かっていくのが、青年の童心のようなものを非常にくすぐる。ここから三曲が、個人的にはこのアルバムの一番好きなところ。
8. トンビ飛べなかった
元気のいいギターのドライブを聴かせる、ストレートなロックソング。縦ノリのダサさと草野の貧弱さが素晴らしく中和し、可愛らしくも力強い。間奏ではまたシューゲ的なぼんやりした音世界を見せ、そこからシャウト(だよな、あれ)と共にまたロックサウンドに戻っていくのが爽快感がある。気持ちよく突き抜けていくのに歌詞が「トンビ飛べなかった」なのも良い。後ろ向きな表現が沢山出てきて、孤独、虚しさがよく見られる(タイトルも諦観だし)が、元気な曲調のせいか歌詞の方も開き直りのような言葉があって、モリッシー的なパンクさを感じる。二番の歌詞が好き。「つぶされかかってわかった 優しい声もアザだらけ」「正義のしるし踏んづける もういらないや」。何気にABサビCメロありで三分半に纏め上げる草野のソングライティングも凄い。
9. 夏の魔物
寂しくも爽やかな雰囲気で疾走していく、初期の楽曲でもとりわけ人気の曲。見事な情景描写で疾走し(爽やかに風景が広がっていくこの感じ)、マイナーコードが臭くなり過ぎない程度にきらっと光るサビに、バンド全体がうねるように突入するのが良い。特に最後に繰り返すところなどは、そっと挿入される「僕の呪文も効かなかった」というフレーズもあって非常に切ない。アコギの響きも輪郭をなぞるようなエレキギターやベースの動きも素晴らしい。やはり『青い車』とかに繋がる系統だろう。この系統の曲全部名曲。具体的でセンチメンタルな情景描写に対し、肝心の会いたかった「夏の魔物」が何であるかというのは諸説(象徴的な意味合いから、具体的な「妊娠中絶説」まで)ある。この多様の解釈を生みながら言葉の響きも可愛くて切ない「夏の魔物」というタイトル自体が、凄く良い。
10. うめぼし
アコギ弾き語りと室内楽的なストリングス。穏やかに伸びる歌のフレーズが「うめぼしたべたい」なので、インパクトは十分。ブリッジ部のメロディの寂しさが良い。ストリングスの被さり方も古くなった部屋みたいな穏やかさ・優美さを持っている。「うめぼし」自体が「たべたい僕は今すぐ君に会いたい」と続き、性的な意味合いを匂わせる。そしてその他の歌詞の憂鬱そうな具合。「知らない間に僕も悪者になってた 優しい言葉だけじゃ物足りない」というのが、その内気ながら内的なドロドロを抑えきれないもどかしさが、悲しい。そのもどかしさの発露が「うめぼしたべたい」なんだから、やっぱりやるせない。奥田民生が歌ったら、全然悲壮感無かったんだけどなあ(笑)
11. ヒバリのこころ
元気にどっしりと、壮大に広がっていく曲で、インディー時代からの大切な曲で、デビューシングル。この曲に至るまでのやるせなさの蓄積を考えると、この曲のポジティブな開放感やら力強さやら突き抜けていく感じに「涙がこぼれそうさ」となる。歌自体は舞い上がるのを避けるように展開し、サビで溜めに溜めて、その後演奏で一気に広がっていくところにカタルシスがある。特に二度目のサビでしつこくタイトルを繰り返してからは、残り一分半ほどをその力強く羽ばたいていくような演奏にたっぷりと費やしている。雄弁なギターソロ。時折見せる陰りはユニコーンの『すばらしい日々』と似たところがあるが、あちらが終わっても続いていく虚しさに溢れているのに対し、こちらは色々な困難や憂鬱があっても、それでも頑張ろう、サビのフレーズ通り「僕らこれから強く生きていこう」という切ない力強さを感じさせる。フェードアウトは切ないけれど。
スピッツの記念すべきメジャー1stアルバム。
シュールなジャケットは、ヒトデの交尾を思わせる。片方が薄いのもまた、詩的ですね。クリエイションレーベルのジャケットみたいな洒落たものにしたかったらしいが、ヒトデの交尾はなかなかに毒があって、まさにこのアルバムの特徴を良く表している気がする。
全体的に弱めな音が幻想的なイメージを作り出している。それはシューゲイザーの「世界の果て感」と共通する、あるいはそれを目指して作られたものと思われる。ただ、本当に爽やかなRide(スピッツは早い時期からRideからの影響を公言している)と比べると、ずっと後と比べても異様にフニャフニャな草野の声もあってか、突き抜けた爽やかさよりももっとぼんやりして、気怠くて、どうしようもない感じもする。それは耽美系のシューゲイザーのそれとも異なる、むしろ80'sUKネオアコの内向き加減に近い感じか。そこに日本のバンドブーム的なパンク感や時代を感じさせるサウンドプロダクションやらで、何ともヘンテコな、次作以降ともまた異なる変な、居心地の悪い感じが、特にアルバム冒頭から四曲や『テレビ』などから感じられる。逆に言えば、この辺りの曲の雰囲気は後のアルバムには無いものがある(割とサウンドが近い次作『名前をつけてやる』にさえ、無い気がする)。歪で、シュールで、気持ち悪くて、ちょっと可愛くしようとしているのがかえって気味悪くて、それがこの辺の楽曲の個性になっていると思う。そういう意味でもやはり、『テレビ』がこのアルバムの象徴なのかな、とも思う。後半は意外と、聴き易い。スピッツの一貫した爽やかさが既に、多少の毒を孕みながらもすっと出てきている感じがする。
このアルバムを語るにおいて、歌詞に触れないわけにはいかない。全アルバム中文句無しで一番訳が分からない。これもアルバム後半は情景描写が多めなのに対し、前半はひたすら全く予想の出来ないフレーズがバンバン飛び出す。それぞれがシュールなだけならまだしも、強烈な冷気や(冷気の表現は初期スピッツの重要なモチーフのひとつ)圧倒的な孤独、そして可愛さを装う分かえって気味悪さの増したエロスとタナトスを放出し、フニャフニャな楽曲と共にこちらに働きかけてくる。歌詞をよく読みながら聴くと、どうしてデビューしていきなりこんな気持ち悪い世界観を、この人達は表現するんだろうと、薄ら寒い思いになる。破綻、圧倒的な破綻の予感を、草野の弱々しく気怠い声で歌う、これはハードコアなサウンドで露悪的な歌詞を歌うどんなバンドと比べても、次元の違うくらいにハードコアだと思う。変態と呼ぶのも憚られるくらいに強烈で、かつ悲惨。このアルバムの不健全っぷりを思うと、その後、特に『ロビンソン』以降の展開がまるで噓のように思える。まあ逆に、このように濃い「初期スピッツ」があったお陰て後の売れ線時代でも変わらぬ切なさや世界観を保っている、とも言えるかもしれないけど。
そりゃ後のスピッツに比べたらずっと聴き難いし、洗練もされてないけれど、でも表現のエッジの鋭さとしては、もしかしてこのアルバムが一番おぞましいのではないか、とも思う。演奏はそこそこだが、何気にベースはこの頃から非常に良く動く。流石スピッツのリーダー。
『ヒバリのこころ』PV。広大な風景を映すスクリーンの前、閉塞感のある場所で演奏しているのが初期スピッツらしい感じ。このころの草野さんを見ていると、フィッシュマンズとかと仲良かったのが何となく分かる感じがする。
『海とピンク』Live。これは流石に大分最近だろう。アルバム時の気味悪さが歌からもサウンドからもとれて、随分はっきりとロックしている。アルバムのとどちらが好きかは聴く人の好み。しかし上のPVと比べても、全然歳とってねえなマサムネ。すげえ。
スピッツトリビュートの小島麻由美による『夏の魔物』カバー。カバー業界でもここまでばっちりなのあるか?ってくらい好き。原曲の幼げながら切羽詰まった雰囲気とこの人の歌の性質が完全に一致している。原曲越えとか、そういう比較はしたくないけれども、でもこれはとても素晴らしい、儚い。筆者なんかは、これ聴いてこの人知ってベスト借りたクチ。
![]() | スピッツ (2002/10/16) スピッツ 商品詳細を見る |
1. ニノウデの世界
一音目からバンド全体で元気よく始まる割とどっしりした一曲目。繊細なアルペジオが歌の後ろで早速舞い上がっているがディストーションギターの出番も多い。この曲に限らずだが、籠った感じの音が幻想的に響く。バンドブーム時代的な音の古さが惜しまれる、特にドラムの音。不思議な符割りで上昇するサビが印象的。ミドルエイトの超高音ボーカルには正直ビビる。早速歌詞は難解で、シュールな言葉の中に二人だけの幼くも退廃的な世界が見えてくる。「冷たくて柔らかな 二人でカギかけた小さな世界」。性と死、あるいは虚無、そういったイメージが晴れやかなのに冴えないサウンドと共に浮かび上がる。デビューアルバムの一曲目で、なんかもういきなり小さな世界の果てでぐったりしている。
2. 海とピンク
ツーコードのシンプルなメロディがシュールで幻惑的な「チューチュチュー」のスキャットまで軽快に突っ走っていく割と元気な曲。リズムにスピッツが元々パンクバンドだった名残が見える、が、歌も合わせるととても気怠げ。ソロも弾くアコギの響きが目立つ。歌詞はもう、やるせなくなってくる。冒頭から「ほらピンクのまん○」、「繰り返し遊んだ」と性的なモチーフも、「言葉だけ無邪気になる ほらまただまされてた」とか、可愛く意地悪だけどなんか虚しいし、そして結局「ちょっときみを見て 海を見て あくびして」で締める。このどうしようもない気怠さ。
3. ビー玉
穏やかにふわっとした雰囲気で終始進む、まさに気怠さそのものな曲。間奏のハーモニカがカントリーっぽくもあるが、やっぱり薄らと目眩がしてくるようなまったり具合。草野の歌もメインのコーラスを中心に非常にフニャフニャで、頼り無いを通り越して不安にさえなる。いきなりの「おまえの最期を見てやる」とか、「みんな夢のように消え去って」とか「俺は狂っていたのかな」とか、どうしようもない表現の数々が、サビの「タマシイころがせ チィパ チィパ チィパチィパ」に集約される様はぼんやりとした寒気を感じる。
4. 五千光年の夢
またパンク的、もっと言えばバンドブーム的なハネたリズムで進行する軽快な曲。この曲までダルダルでぼんやりとした曲が続くので、少々ダレる。サビらしくないサビの変なコード感はUKネオアコ的な耽美さも。最後のコーラスとギターソロの並走でぼんやりと世界観が広がる。「うしろ向きのままで」「なんだか寂しいな」「ちょっと照れくさくて」といった具合で、タイトルの意味するところの意味不明な消極性・妄想性が連想される。
5. 月に帰る
ちょっとこれまでと変わって、割とはっきりと爽やかでロマンチックなメロディの、ギターの三輪徹也による曲。壮大な世界の広がりを思わせるコード感やギターサウンドは後の『青い車』やら『渚』やらの開放感に繋がっていきそうな、そういうスケール感をもった曲。この曲ではそれが妄想的に宇宙的な方向に向かう。サビのメロディの舞い上がり方とか、そういうイメージにうってつけ。そんな宇宙的な広がりを見せるSE的なギターが素敵。特に終盤の無数の流れ星みたいなギター、逆再生なども用いたそれはとても幻想的で、シューゲイザー的。歌の裏で鳴っているアルペジオのadd9な響きが、やっぱギターポップだよなあ、と思わせる。
6. テレビ
イントロからして難解。どこでAメロ始まってんだ?バンドブームっぽい高速ツービートかと思ったら急にしっとりして、サビで爽やかにドライブする。気怠げながらぐるぐる回るメロディがサビで抜けて行く具合は良い。ミドルエイトのブレイクからまた少し宇宙的・シューゲ的広がりをかいま見せるところにニヤリとする。しかしそんなことしている場合でないほどに歌詞が混迷を極めきっている。文句無くスピッツでも五本の指に入る難解さ。爽やかに舞うサビの「マントの怪人 叫ぶ夜」を筆頭に、どうすればそうなるのか分からない言葉の連なりがぞろぞろ。「カボチャとナスは仲良しか それもいいや だって」とか、もう、何!?しかも、そんな訳の分からない言葉の並びも、ギリギリのところでちゃんと意味が通るように配置されていることに、ファンなどのこの歌詞の解釈(解説ページでもやはりこの曲が一番議論となっている)をいくつかつまんで見て再度驚く。「おなかの大きなママ」のフレーズで衝撃を受ける。なんちゅう世界観だ……。もちろん正解は無いので、とりあえずスピッツに、いや、変なものに興味がある人は、とりあえず歌詞を読んでほしい。頭痛くなってくる。輪廻転生かあ、なら曲調のぐるぐるした変化もなんか分かるなあ。
7.タンポポ
ゆったりぼんやりとした三拍子の、長い曲。マイナー調ではないけれど、しかしかなり陰鬱。全体的にぼんやりした音やフラフラしたメロディがとても幻想的に頼り無く、間奏の長めのギターソロが虚しげに響く。サビの「ふんずけられて また起きて道ばたの花 ずっと見つめていたよ」というフレーズがもう、どうしようもなく重たい。最後は「どうかこのまま僕とここにいて欲しい」と情け無く言い出す始末。「太陽は黄ばんでいた」というフレーズがすべて表しているような、明るいが故に虚しいタイプの曲。
7. 死神の岬へ
鬱で内向的な前曲から一気に切り替わり、爽やかに風景が開けるような雰囲気。軽快なリズムでテンポよく可愛いメロディを歌うので安心する。また三輪作曲。このアルバムの三輪曲はほっとするタイミングで爽やかに入ってくる。Bメロで上り詰めてサビでさらっと下りて行くような具合のメロディはとても美しい。これも『青い車』とかに通じる開放感がある、と思ったらこの曲も移動は車だった。間奏で変な音が沢山入ってサイケデリックになっても、また爽やかに駆け出すので安心する。「愛と希望に満たされて 誰もかもすごく疲れた」なんて皮肉な出だしから、サビの乾いて寂しげな情景描写へ向かっていくのが、青年の童心のようなものを非常にくすぐる。ここから三曲が、個人的にはこのアルバムの一番好きなところ。
8. トンビ飛べなかった
元気のいいギターのドライブを聴かせる、ストレートなロックソング。縦ノリのダサさと草野の貧弱さが素晴らしく中和し、可愛らしくも力強い。間奏ではまたシューゲ的なぼんやりした音世界を見せ、そこからシャウト(だよな、あれ)と共にまたロックサウンドに戻っていくのが爽快感がある。気持ちよく突き抜けていくのに歌詞が「トンビ飛べなかった」なのも良い。後ろ向きな表現が沢山出てきて、孤独、虚しさがよく見られる(タイトルも諦観だし)が、元気な曲調のせいか歌詞の方も開き直りのような言葉があって、モリッシー的なパンクさを感じる。二番の歌詞が好き。「つぶされかかってわかった 優しい声もアザだらけ」「正義のしるし踏んづける もういらないや」。何気にABサビCメロありで三分半に纏め上げる草野のソングライティングも凄い。
9. 夏の魔物
寂しくも爽やかな雰囲気で疾走していく、初期の楽曲でもとりわけ人気の曲。見事な情景描写で疾走し(爽やかに風景が広がっていくこの感じ)、マイナーコードが臭くなり過ぎない程度にきらっと光るサビに、バンド全体がうねるように突入するのが良い。特に最後に繰り返すところなどは、そっと挿入される「僕の呪文も効かなかった」というフレーズもあって非常に切ない。アコギの響きも輪郭をなぞるようなエレキギターやベースの動きも素晴らしい。やはり『青い車』とかに繋がる系統だろう。この系統の曲全部名曲。具体的でセンチメンタルな情景描写に対し、肝心の会いたかった「夏の魔物」が何であるかというのは諸説(象徴的な意味合いから、具体的な「妊娠中絶説」まで)ある。この多様の解釈を生みながら言葉の響きも可愛くて切ない「夏の魔物」というタイトル自体が、凄く良い。
10. うめぼし
アコギ弾き語りと室内楽的なストリングス。穏やかに伸びる歌のフレーズが「うめぼしたべたい」なので、インパクトは十分。ブリッジ部のメロディの寂しさが良い。ストリングスの被さり方も古くなった部屋みたいな穏やかさ・優美さを持っている。「うめぼし」自体が「たべたい僕は今すぐ君に会いたい」と続き、性的な意味合いを匂わせる。そしてその他の歌詞の憂鬱そうな具合。「知らない間に僕も悪者になってた 優しい言葉だけじゃ物足りない」というのが、その内気ながら内的なドロドロを抑えきれないもどかしさが、悲しい。そのもどかしさの発露が「うめぼしたべたい」なんだから、やっぱりやるせない。奥田民生が歌ったら、全然悲壮感無かったんだけどなあ(笑)
11. ヒバリのこころ
元気にどっしりと、壮大に広がっていく曲で、インディー時代からの大切な曲で、デビューシングル。この曲に至るまでのやるせなさの蓄積を考えると、この曲のポジティブな開放感やら力強さやら突き抜けていく感じに「涙がこぼれそうさ」となる。歌自体は舞い上がるのを避けるように展開し、サビで溜めに溜めて、その後演奏で一気に広がっていくところにカタルシスがある。特に二度目のサビでしつこくタイトルを繰り返してからは、残り一分半ほどをその力強く羽ばたいていくような演奏にたっぷりと費やしている。雄弁なギターソロ。時折見せる陰りはユニコーンの『すばらしい日々』と似たところがあるが、あちらが終わっても続いていく虚しさに溢れているのに対し、こちらは色々な困難や憂鬱があっても、それでも頑張ろう、サビのフレーズ通り「僕らこれから強く生きていこう」という切ない力強さを感じさせる。フェードアウトは切ないけれど。
スピッツの記念すべきメジャー1stアルバム。
シュールなジャケットは、ヒトデの交尾を思わせる。片方が薄いのもまた、詩的ですね。クリエイションレーベルのジャケットみたいな洒落たものにしたかったらしいが、ヒトデの交尾はなかなかに毒があって、まさにこのアルバムの特徴を良く表している気がする。
全体的に弱めな音が幻想的なイメージを作り出している。それはシューゲイザーの「世界の果て感」と共通する、あるいはそれを目指して作られたものと思われる。ただ、本当に爽やかなRide(スピッツは早い時期からRideからの影響を公言している)と比べると、ずっと後と比べても異様にフニャフニャな草野の声もあってか、突き抜けた爽やかさよりももっとぼんやりして、気怠くて、どうしようもない感じもする。それは耽美系のシューゲイザーのそれとも異なる、むしろ80'sUKネオアコの内向き加減に近い感じか。そこに日本のバンドブーム的なパンク感や時代を感じさせるサウンドプロダクションやらで、何ともヘンテコな、次作以降ともまた異なる変な、居心地の悪い感じが、特にアルバム冒頭から四曲や『テレビ』などから感じられる。逆に言えば、この辺りの曲の雰囲気は後のアルバムには無いものがある(割とサウンドが近い次作『名前をつけてやる』にさえ、無い気がする)。歪で、シュールで、気持ち悪くて、ちょっと可愛くしようとしているのがかえって気味悪くて、それがこの辺の楽曲の個性になっていると思う。そういう意味でもやはり、『テレビ』がこのアルバムの象徴なのかな、とも思う。後半は意外と、聴き易い。スピッツの一貫した爽やかさが既に、多少の毒を孕みながらもすっと出てきている感じがする。
このアルバムを語るにおいて、歌詞に触れないわけにはいかない。全アルバム中文句無しで一番訳が分からない。これもアルバム後半は情景描写が多めなのに対し、前半はひたすら全く予想の出来ないフレーズがバンバン飛び出す。それぞれがシュールなだけならまだしも、強烈な冷気や(冷気の表現は初期スピッツの重要なモチーフのひとつ)圧倒的な孤独、そして可愛さを装う分かえって気味悪さの増したエロスとタナトスを放出し、フニャフニャな楽曲と共にこちらに働きかけてくる。歌詞をよく読みながら聴くと、どうしてデビューしていきなりこんな気持ち悪い世界観を、この人達は表現するんだろうと、薄ら寒い思いになる。破綻、圧倒的な破綻の予感を、草野の弱々しく気怠い声で歌う、これはハードコアなサウンドで露悪的な歌詞を歌うどんなバンドと比べても、次元の違うくらいにハードコアだと思う。変態と呼ぶのも憚られるくらいに強烈で、かつ悲惨。このアルバムの不健全っぷりを思うと、その後、特に『ロビンソン』以降の展開がまるで噓のように思える。まあ逆に、このように濃い「初期スピッツ」があったお陰て後の売れ線時代でも変わらぬ切なさや世界観を保っている、とも言えるかもしれないけど。
そりゃ後のスピッツに比べたらずっと聴き難いし、洗練もされてないけれど、でも表現のエッジの鋭さとしては、もしかしてこのアルバムが一番おぞましいのではないか、とも思う。演奏はそこそこだが、何気にベースはこの頃から非常に良く動く。流石スピッツのリーダー。
『ヒバリのこころ』PV。広大な風景を映すスクリーンの前、閉塞感のある場所で演奏しているのが初期スピッツらしい感じ。このころの草野さんを見ていると、フィッシュマンズとかと仲良かったのが何となく分かる感じがする。
『海とピンク』Live。これは流石に大分最近だろう。アルバム時の気味悪さが歌からもサウンドからもとれて、随分はっきりとロックしている。アルバムのとどちらが好きかは聴く人の好み。しかし上のPVと比べても、全然歳とってねえなマサムネ。すげえ。
スピッツトリビュートの小島麻由美による『夏の魔物』カバー。カバー業界でもここまでばっちりなのあるか?ってくらい好き。原曲の幼げながら切羽詰まった雰囲気とこの人の歌の性質が完全に一致している。原曲越えとか、そういう比較はしたくないけれども、でもこれはとても素晴らしい、儚い。筆者なんかは、これ聴いてこの人知ってベスト借りたクチ。
- コメントをする・見る
- Comments(3)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:日本
2010年02月04日 07:00
![]() | 14SOULS (2009/08/05) ART-SCHOOL 商品詳細を見る |
1. 14souls
スピッツライクな爽やかギターポップ路線の、それらの中でもとりわけ純度の高い曲。沸き上がってくるようなイントロから、落ち着いた瑞々しさを保ったまま心地良いテンポで疾走していく。幾分フックは弱いがその分流れるようなメロディとギターを味わえる。こういうタイプのポップな曲における木下ギターのアーミングはやっぱり爽やかで魅力的だなあ。展開の穏やかな曲な分、間奏のベタなリズムの鈍化が印象的にもなっている。途中から細かく瑞々しいリフを刻みながら上下する戸高のギターが、音数の割にとても優しげで曲にキュートさを与えている。木下の歌もとても爽やかに聴こえる。ちょっと声高め?アルバムの他の曲が毒々しいものが多い分、このアルバム冒頭の透き通るようなポップさが眩しい。
2. STAY BEAUTIFUL
ハードなギターから、Bloc Party風なシリアスさと攻撃性を持ったサウンドが展開する、ニヒルな狂騒具合の曲。毒々しさはこっちの方があるかもしれない。サビのメロディもシンプルに艶かしげ。しかしこの曲の特徴はやはり間奏からの展開。ビッグビート風、っていうかPrimal Scream『Swastika Eyes』をホーンなどでアレンジしたような、不思議な具合。毒々しさが爆発しないままにゆっくりと膨張していくようで、新しいドラムもその緊張感をうまく煽っている。そして最後のサビでダークに解放されると。
3. ローラーコースター
ポップに旋回するリフを主体にしたどっしり目のオルタナポップ。あっけらかんと突き抜けるような溌剌具合が『Seagull』なんかに通じるものがある。特にBメロの粘り着くようなキュート具合は初期スマパン的なものも感じさせる。タイトルやサビの歌詞的にはジザメリだが。そのBメロから解放感のあるサビに抜けて行く展開が良い。Bメロのコーラスの掛け合いも勢いがあって良い(でもライブでは木下がひとりでやってた気もする)。そして相変わらずブレイクで展開を作るのが上手。
4. マイブルーセバスチャン
マイナー調の耽美なアルペジオから、サザンオールスターズみたいなホーンが高らかに鳴り響く曲。リズムの拍の取り方なども含めて、ともすればダサくもなってしまいそうな毒々しさがあるが、シンプルなメロディでバランスを取っている。シンプルな演奏をバックに歌われるサビのメロディが、そのファルセット具合も含めてアートのマイナー調曲らしい耽美な舞い上がり方をしている。その後にホーンがぐっと入って来るので、なんか不思議。
5. HEAVEN’S SIGN
三連符で幻想的な曲。サビにちゃんと上昇感と勢いのあるメロディとシャウトを持って来る木下も良いが、この曲はともかく戸高。あらゆる手段を駆使して、まどろむようなバッキングから曲展開を激しく牽引するギターソロ、そしてその後のクールダウンの水中な雰囲気までを構築している。特に終盤のディレイ掛かったギターが光の泡みたいに舞うところが良い。木下の同じコードを弾き続けることで発生する不思議なシューゲ感を戸高が上手にコントロールしている感じ。
6. LOST CONTROL
今作で一番Bloc Partyしている曲か。冒頭から硬質なサウンドでダークに疾走。抑制の利いたリフの旋回などは「よくやるなあ」とか思ってしまう。サビ前にそれが更に加速する具合や、二度目のサビで一度急停止してから一気にサウンドが混濁し最後のサビに繋がっていくやや大げさな展開は、The Novembersなどの最近の若手からのフィードバックも感じる。最後のタイトルコールも勢いがあって、ブチッと途切れる無機的な終わりに向かってバンド全体で疾走していく感じが出ている。初期とは違う、NW的疾走感。
7. tonight is the night
キラキラしたシンセのフレーズに導かれた、ハウス・トランス色の明らかな楽曲。ハウスと言ってもサビでは四つ打ちではなく、奇妙につんのめったリズムで轟音に溶け込む。この辺のリズム的なワザは新しいドラムの個性・利点がよく現れている感じがする。細い音を奥行きをもって響かせる静とキラキラした轟音の動との対比はやはりアートスクール。終盤のサウンドのひねりもサビの入り方も、新しいサウンドにも関わらず手慣れた感じがある。ハウス風味の楽曲でも疾走感と切迫感があるのは、もはや業のようなもんか。
8. wish you were here
今作のファンク担当曲か。これまでのアートのファンク楽曲の中でもとりわけ内向的というか、マイナー調のアルペジオが曲の余分なエネルギーのようなものをすべて奪い去って、良い意味で徹底的に陰気な雰囲気を漂わせている。簡素な打ち込みの音もそのチープさが曲の陰気具合に合っている。サビで舞い上がるメロディも最後は間違いなく落ちていって、二回目のサビの後のリフレインで終わるという曲自体の小規模さ、終わり方のあっけなさもあって、ファンク曲なのにアルバム中一番冷めて虚しげで暗いセクションを形成している。ゆえに、『その指で』とは全然異なるベクトルにおいて、凄く耽美だと思う。ベースラインもいつもより色っぽく曲線的。
9. don’t i hold you
ダークに攻撃的に疾走する、このアルバムで頻出のタイプの楽曲。より直線的なフレーズの被せ方はBloc PartyよりもThe Novembersの方が近そう。メインリフもちょっと大げさ。突進するようなサビのメロディ。そして最後のサビ前の溜め方の大げさ具合。この曲だけはどうも好きになれん。『LOST CONTROL』と被っている気がする。
10. CATHOLIC BOY
ふわあっと舞うシンセの音が印象的な穏やかなイントロで始まる普通のギターロック。しかし所々のアレンジが流石に上手で聴かせる。どことなくthe pillowsを思わせるゆったり具合のAメロでも瑞々しい雰囲気を出して、それがサビのマイナー調のパワーコードでまったりと粉砕される具合はやはりアートスクール。シンプルな繰り返しを珍しくしつこく引っ張るサビだがその落ち着いた感じがまったりと聴かせる。二度目のサビ以降のCメロ→間奏で可愛らしく炸裂、な感じが、安心のアートスクールクオリティを感じさせてくれる。戸高のちょっと水っぽいギターが溜めて溜めて、伸び伸びと舞う、それだけで素敵。
11. KILLING ME SOFTLY
二重歌唱で別々の歌詞を同時進行するという、それなんて『バリで死す』と思っちゃうアイディアを、ダークでダンサブルなサウンドに乗せている。ダークにグダグダなAメロから急にサビでメロディが跳ね上がるのがキャッチー。そして二度目のサビが終わるとブレイクして、ドラムのフィルから急に全く別の曲みたいなのが始まる。つんのめり気味のリズムで疾走、そしてまたサビへ。個人的にはアート史上最も字の詰まった歌詞カードがなんか、笑える。三分半の曲なんだが、二人分の歌詞となると流石に凄い。変に圧倒される。
12. 君は天使だった
かえって前曲以上にびっくりな、軽快なツービートに乗った北国風ギターポップ。それこそthe pillowsの『レッサーハムスターの憂鬱』を思い起こさずにはいられない、幼げな内向性と敬虔さを感じさせる曲調に、こっそりとアートの新境地を垣間見たような気がする。木下の歌との相性も抜群に良い。「昔の映画のように」が「昔の演歌のように」と聴こえるのは笑った。サビのシンプルな高揚もとても切なくも可愛らしい。そしてこの曲も二度目のサビの後、また全然別の曲みたいにして演奏が再会、寂れた街の風景を切り取ったような哀愁の三拍子サウンドに驚くも、こういうのも凄くいい、と思った。それこそ本当に絵本みたいで、愛しくも切なくて、個人的には、堪らない。こういう路線の続編を激しく希望。
13. Grace note
前作に引き続き戸高曲で締め。前曲の幻想的な感じを受け継いで、儚げで冬な曲になっている。戸高曲の中でもアレンジの細かさ、展開の多さなどなど、最も作り込まれている印象を受ける。四拍子の拍子足らずに聴こえる三拍子のリズムや繊細なギターサウンドの配置など、どことなくデスキャブ的なものを感じる。やはり冬の寂しい景色が思い浮かぶ曲調は終盤、新たな展開を見せ、そしてドラムが複雑にロールし始めると戸高も新しいメロディを繰り出し、アルバム全体のコーダ部を美しくも寂しげに作り上げる。手数の多いドラムと淡々とした演奏の対比がとても寂しげな印象を作り上げる。最後の音など、さっきまでのダークな狂騒はどこ行ったん、めっちゃ寂しいやん、って気持ちになる。
ART-SCHOOLの五枚目のフルアルバム。バンド九年目にして五枚目というペースは不思議だけど、こいつらミニアルバムばっかり出すからその辺よく分からんと、ライナーノーツで宇野維正氏も述べている。
『ILLMATIC BABY』制作後櫻井氏の脱退が決まり、予定していた分のライブをやり遂げて惜別、でもその裏で既に次のドラム・鈴木浩之氏とレコーディングに向けてのセッションをしていたんだから、流石に木下、伊達に長年バンドはやってない。その新ドラムが全面的に参加して作られたこのアルバムも、ぎこちないところは特に見当たらない。
『ILLMATIC〜』で見せたNW志向は、この新しいドラムに支えられて、このアルバムでも多方向に現れている。引き締まった直線的なビートからハウスな曲調のリズムを不思議に解体するまで、様々に活躍。
器用らしい新ドラムの加入によって演奏出来る曲調の幅も広がったのか、木下も様々なタイプの楽曲に挑戦している。アルバム一枚を通しての曲調の幅は過去最大だろう。穏やかなギターポップで始まり、ダークに狂乱したりオルタナしたりシューゲしたり、そしてラスト二曲でギターポップ路線的にも新しい方向性を立ててみたりと、何気に手広くやっている。しかし、筆者が信者であることを差し引いても、それほど散漫な感じもしない。暖かみのある冒頭と寒々しい最後が好対照で、どっちもしっかりとアートスクールしているからか。
もうここまで来ると、本当に何でも出来るバンドになったんだなあと感心する。それでもアートっぽさ、木下っぽさが完全に損なわれる場面は見当たらず、「アートスクールの木下」としてのソングライティングの鉄壁っぷりが大いに感じられる。もうどんなことをしても、木下が曲書いて歌えば、それで戸高が色々手を尽くしてギター弾けば、アートっぽくなると。偉大なるマンネリズムに、完全に突入か。次作がどういう方向性でいくか気になってくるレベル。
個人的にはハードでダンスな楽曲よりも、ギターポップな楽曲の洗練が気になった。とりわけ最後二曲はバンドの80'sUKギターポップの咀嚼がまたひとつ前進した感じがある。
今年はバンド結成十周年だそうです。そういえばイギリスのバンドで、結成十年目で世界観抜群の最高のアルバムを出した、The Cureとかいうバンドがおりますね。いつか木下が冗談っぽく、「十周年なったら、物凄く暗いアルバムを作るのも面白そう」とか言ってたので、筆者は、アートスクールに『Disintegration』みたいな作品を求めたいです。期待、期待。
『ローラーコースター』PV。しかしまたえらく獣的な女優だなあ。
櫻井さんがいなくなったからネタに走れないのか、その辺がちょっと不満。
『14souls』。「この曲のPVを募集します」みたいな企画があったけれど、集まった作品が四つくらいだったらしい。そしてその受賞作がネット上に見つからん。どういうことだ?なかったことになったのか!?曲自体はこのように爽やかです。
- コメントをする・見る
- Comments(4)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:ART-SCHOOL
2010年02月01日 19:49
![]() | ILLMATIC BABY (2008/10/15) ART-SCHOOL 商品詳細を見る |
1. ILLMATIC BABY
ニューレイヴ!2008年にもなって、まさかのニューレイヴ。シンセとベースが暗躍し、いかがわしいリフが飛び交う。ドラムが割と落ち着いている分そういうニューレイブの「いかがわしさ」だけ抜き出して来たようなどこか冷めた感じもするが、単純に木下のソングライティングのシンプル具合のせいかも。サビのコーラスはちょっとサッカーみたい。間奏で無駄に三連符になるところとかもなんかおかしい。歌詞に関してはもう、おバカ、ここまで露骨にエロな比喩を連発すると、むしろ笑えるし、多分本人もそれを狙っているのでは。ドーパンのスタープロデュース。レコーディングに苦労したらしく、ニューレイヴの「ノリ」がなかなか出なかったとか。ダークさがギャグみたいで面白い。
2. 夜の子供たち
曲自体は割と馴染みの「疾走系木下曲」な感じがするが、これもまた大分アレンジがいつもと違う感じがする。ギターが凄くこう、張り切っている。沢山リフを用いて局所局所で使い分けているイメージ。そのフレーズも「引っ掻く」ようなものが多い。前作のBloc Party志向の発展系。全体的に音圧高めな感じもする。間奏の音の壁っぷりとか。木琴の音やらシンセやらが入っているからか。サビの叫ばずに繰り返す歌と畳み掛けるドラムフィルの対比が意外と新鮮な感じ。
3. 君はいま光の中に
本人曰く「合唱系」な、壮大なバラード。冷えたトーンのギターやシンセの音がいかにも冬っぽいが、音の質感はつるっとして水滴系。透明感のあるメロディが魅力。Bメロを受けて伸びていくサビのメロディはOasisの『Wonderwall』なんか思い浮かべたり。つまりある種の王道。一般的なJ-popにも参入出来そうなところがある。戸高のソロも珍しく泣きが入っている感じ。が、Cメロから間奏、特にブレイク以降のせつせつとした感じはアートスクール的。「絶望や希望を歌うほど若くない」というフレーズに今作の変化を思わせる。
4. BROKEN WHITE
いきなりスネアの連打から突入する音の隙間多めの直線的な疾走曲。っていうかこれ、かなりBloc Partyだよなあ。リズムギターとか。歌詞英語にしてオケレケが同じメロディ歌ったらもう完全に。ただ、サビの繰り返しでやはり叫びきらずに淡々と歌っている様は『夜の〜』と共に木下の新しいサビのやり方なのかも。こういうのはガレージ風NWとでも言うのか。2分半に間奏と三回目のサビまで纏める技量は流石。
5. エミール
軽快でポップでノスタルジックなミドルテンポ。ある意味今作では一番これまでのアートの楽曲、『Butterfly Kiss』や『1995』なんかの延長線上にあるような感じ。それゆえそのメロディの簡潔かつ流麗な仕上がりは良好、スピッツレベル。特に「TONIGHT」と言って高揚するリフレインは同系統のロマンチック。特に最後のそれはファルセットまで入って来て、まるでスマパンの同系統の楽曲のように美麗。アレンジに打ち込みが使われていて、ニューオーダー方式のエレポップ風味が不思議な軽快さとデジタルな浮遊感を生んでいる。それに呼応するエレクトロ風味なギターもとても綺麗で良い。『Flora』である程度極めたポップな手法を更にミニマル気味に利用している感じか。しかし歌詞はまた、ぼんやりと救いが無い方にシフトしてるな。凄くポップにやさぐれている。感傷と諦観と、エレポップ。
6. INSIDE OF YOU
ポストレディへ風味な陰鬱停滞なイントロで不穏さを振りまいた、と思ったら急に変拍子で攻撃的なNWに変質する。色々と展開に凝った曲で、二度目のサビの後にどこかまた深刻さを気取ったロマンチックさを見せて、またガリガリに変質して終わるが、それぞれの構成がシンプルなので、良くも悪くも、とてもプログレ的には聴こえない。メロディは相当簡略化されて、繰り返しの尖ったフレーズをギターと共に何度も叩き込むような構図。特に普通のリズムに戻ったサビのタイトルコールは発狂したポリスみたいで格好良い。拷問機械的なアートサウンドも悪くない。
ART-SCHOOL、実に八枚目のミニアルバム。本当に好きだよなあ。確か前作『左ききのキキ』から一年ぐらい間隔が空いたリリース。何故か他のミニアルバムよりちょっと高いよな。
前作で目立ったグランジ復権櫻井重戦車サウンドは何故かあれ一枚でまたすぐに封印、その代わり『real love / slow down』で露骨に現れたBloc Party的サウンドを、今作ではより露骨に、サウンドの軸に置いている。攻撃的なNWサウンドのひとつの21世紀的形態をBloc Partyに見出したのは、何気に「ああ、そうだよなあ」とか思ったりして、というのもそう思わせるくらいの楽曲にちゃんと仕上げている点がある。特に戸高のギターはかなり影響を受けながらも丸パクリにならないよう執心するような、ある意味でちょこざいな、しかし良く言えばバンドのサウンドとして消化吸収するための試行錯誤を行っているように思える。
そういうこともあって、サウンド的にはもう完全にNWバンドである。曲自体も簡略化が進み、特にメロディについては短いフレーズの鋭角的な繰り返しが頻繁に現れ、しかも昔のように叫ばず淡々と行う。こういった部分も感情抑制・捨象、というか抑制とシンプルな変化によって抑揚を付ける、NW的手法が垣間見える。
もうひとつ大きな変化として、サウンド自体のプロダクションがかなり変わった感じがする。全体的につるっとした質感が、洗練、またはオルタナ・グランジ的ジャリジャリな生々しさの捨象を導いている。大体、木下のボーカルからしてエフェクト処理が多用され、彼等の音源の中では最も歌の生々しさが削り取られている。それはNW的な抑制の中にあって、また声もひとつの楽器、といった具合に聴こえる。
NW的抑制とダークさ。「不器用にディストーション」なサウンド、芳醇な00年代USインディ的ハイファイサウンドと来て、また新しいフェイズに入った感じか。ただレコーディングは難航したらしく、そしてこの後ドラムの櫻井雄一が脱退。そういえばこの頃のアーティスト写真でも櫻井氏のポジションが微妙だったが、今思えばやっぱり伏線だったのか。その思い切りの良さ、そして第一期の時とは異なる後腐れのなさが、良くも悪くも、大人になったというか。しかし思い切ってサウンド変質させることが出来るのはまあ、よくやるよなあ、本当。ソングライティングの根本的安定による自信なのか。実際もうパンク以降の大概のサウンドはアートスクールで出来るよなあ。
インタビュー。ベスト盤とこのミニアルバムの同時発売、その心。そして衝撃の大山純音楽界復帰についてまで(笑)今思うと本当に凄いタイミングだ。
- コメントをする・見る
- Comments(2)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:ART-SCHOOL
2010年02月01日 01:37
![]() | 左ききのキキ (2007/09/19) ART-SCHOOL 商品詳細を見る |
1. SHEILA
イントロのアルペジオからして不穏さ全開、そこから叩き付けるような演奏が展開される。ナンバガの『I don't know』を彷彿とさせるそれ、重心が低く特にドラムは重戦車的サウンド。ブレイクの素っ気なさと全開時のシンバル音の洪水っぷりが凄い。ギターもNW的神経質さとガレージ風のガリガリを繰り返す。二度目のブレイク以降の間奏など、ある種のヤケクソ感すら漂う。木下も歌に間奏のワーミープレイにと吹っ切れ気味。
2. 左ききのキキ
不穏な煌めきからディストーションギターで疾走する、初期のアートの雰囲気が帰って来た。『MISS WORLD』あたりに近い静と動な雰囲気で、しかし第二期としての経験を経た演奏が展開される。静パートのブリッジミュートと繊細なフレーズの対比などは聴いてて懐かしくなった。シンプルなフレーズでしっかり奥行きを出している。ドラムの重くドシャドシャとしているのにそれでも力強く疾走するのは迫力がある。フィルインが不思議なタイミングで入ってくる。ヤケクソというよりはむしろ、バンドが一丸となって小さく重く纏まって突進していくような力強さがある。しかしミニアルバムのタイトル曲なのに二曲目なのね。歌詞に左利きは出て来ない!生まれ変わりを選択しない木下、この先の混濁と冷笑気味の方向性をそれとなく示唆している。
3. Ghost of a beautiful view
アート式のシューゲイザーが穏やかに展開される曲。音の重ね方は第二期以降といった感じだが、曲自体は初期の『1965』とか『LOVERS』とかに近いものがある。アコギの音も目立つクリアで柔らかい轟音が淡々とした曲を穏やかに包む。その轟音に心地良く埋もれる木下の歌もシンプルに枯れた美しいメロディラインを持っている。Bメロで少し轟音を解除する辺りがこの楽曲ならではの工夫と思われる。間奏以降のファルセットコーラスも美しい。様々なモチーフを繰り出す幻想的な歌詞も血の表現などの生々しさが現れ、この混濁具合が次のアルバムのスタンスに近い具合に、自然と歌われている。
4. Candles
この曲をして「戸高さんいい曲書きますね」と言うのは嫌がらせだろうと思うほどに、モロにNIRVANAのアレをやっちゃったなあ、って具合のグランジソング。ギターのコーラスだけでなく、サビ後の「イエー!」までやっちゃった。これは確信犯。しかしやはりドラムが水を得た魚のように重く低く転がり回るのは、単純にそういうものとして気持ちいい。戸高の声が細いとか、生々しさが今ひとつ足りない雰囲気だけっぽい歌詞とか、そういうことを言うのも野暮か。
5. real love/slow dawn
いわゆるBloc Party風のリフがアートの楽曲に初めて登場した、ファンキーでかつ鋭角的な楽曲。直線的に様々に変化していくドラムや削り取るようなギター、無愛想なコード感がサビでポップに持ち上がる具合などなど、とてもそれっぽい。間奏のボヤーッとなるところなんか特にそれっぽい。しかしドラムは櫻井氏的な重々しさも所々にはっきりと観られる。サビの重みやタム回し。裏打ちダンスリズムが殺伐とした具合に響くのは単純に心地良い。ダークな躁状態、的な。歌詞の方も荒みきった自身をゲラゲラ笑いながらもやっぱ苦しい、的な滑稽さで飛ばしている。木下自慢のフレーズ「ゴムくらい ちゃんとしろよ」。
6. 雨の日の為に
ミニアルバムの締めのためと思われる二分程度の小作品。スローなコーラスの掛かったアルペジオに乗って木下が朗々と歌う。大した曲じゃないし木下の歌も上手くはないが、間奏のアコギのフレーズは綺麗だし、サビの「どんな時にも此処にいるから 漂い浮かんで 消えてくものの為」というのは『左ききのキキ』の冒頭のフレーズと対応している。つまるところ『Flora』以上にポップにはならねえよ、と。
ART-SCHOOLが『Flora』のライブツアー中に録音したというミニアルバム。ツアーのDVDと同時に発売された。
『Flora』で光り輝く系統のポップや幻想風味を散々やった後の反動なのか、原点回帰と本人が言い出すほどに重めで乱暴な作りになっている。『Flora』的な楽曲は皆無で、タイトル曲を始めグランジ臭が立ちこめるというかモロパクリもあるし。過去の焼き直しとも取れるが、経験を積んだ演奏はやはり初期のそれとは微妙に異なる。特にドラムの重心の低さ・重々しさがこのミニアルバムでは前面に出ている感じがして、獣系のドラマー(失礼)櫻井雄一氏の野性味が、彼等の音源の中でもとりわけフューチャーされていると言える。
原点回帰ばかりでなく、第一期的楽曲と第二期的アレンジの融合(『Ghost of〜』)や、この先の重要な方向性になってくるBloc Partyサウンドの導入(『real love〜』)なども同時に行っている。どことなく、『Flora』までで「なんでもあり」になった自分たちの出来ることを一旦整理したような雰囲気か。
歌詞においては、『Flora』で見せた救いのような視線はほぼ消滅(笑)して、また焦燥と自嘲が全開になっている。いきなり「死んでんの」とは痛々しい。ただ、そういった要素が悪く言えば自己パロディ的、良く言えば自虐ギャグ的に繰り出されているような、そういう余裕も感じる。何よりもタイトル曲にある「それならば僕はここにいるよ」というフレーズが、そのクズな世界観に自分は留まり続ける、一生クソ野郎のままこっち側にいてやる、といった意思を示している。『Flora』以上にはポジティブにならないし、むしろまた落っこちてみる、という。実際この後はそんな感じ。そういうスタンスの表明に、荒々しいグランジサウンドは丁度良かったんだろう。
『左ききのキキ』PV。木下理樹監督作品。いやあ、ヒドい(笑)曲、関係無し。
映画『家族ゲーム』の最後の食事シーンのパロディ。何気にコピー度が高いのが笑える。
相変わらず櫻井氏の名演・怪演っぷりが光る。木下の頭にマヨネーズ(笑)
こういうことが出来るだけの余裕が、何だかんだであるんだなあと。
インタビュー。ジョジョ二部の猛烈プッシュぶりの適当さがなんか、凄い(笑)
シーザーのくだりを読めば言わんとすることは一目瞭然、って、なんてヒドいインタビューだ!
セレブ飲み会で「凄く薄い」とか、なんかすげえ。色んな意味でドキドキする。
最後「ジョジョを読め」って何だよ。戸高まで「石仮面被る」とか言い出すし。
いいスタンスだ。
- コメントをする・見る
- Comments(2)
- トラックバックをする・見る
- Trackbacks(0)
- カテゴリー
- 音楽:ART-SCHOOL

























最近のコメント